0076話 シトラスとデート
誤字報告ありがとうございました!
昨日は忙しかったので、朝更新。
(どうやら祝日で曜日感覚にバグが発生したらしいw
火曜日の更新忘れてました! 明日の夕方か夜にも投稿します)
玄関で待っていると、着替え終わったシトラスがでてくる。さすがユーカリだ、素晴らしいコーディネートじゃないか。
「よく似合ってるな、シトラス。健康的でとても可愛いぞ」
「えっと、そうかな?」
上はタンクトップにオフショルダーのショートトップスを重ね、下はデニムのホットパンツにスポーツサンダル。露出している肩や素足が、とても眩しい。
「髪も少し切ってもらったのか?」
「うん。毛先をちょっとだけ整えてもらったんだ。でも、よくわかったね」
「毎日ブラッシングしてるんだ、それくらいすぐわかる」
前髪はほとんどいじってないのだろう。しかしもみあげと襟足がスッキリとしている。うーん、せっかくだから従人用のアクセサリでも贈ってやるか。シンプルなデザインのものなら似合いそうだ。
「こんなところに突っ立ってても仕方ない、とにかく出かけよう」
「うん!」
海岸通りからビーチを見ると、今日も大勢の上人たちで賑わっている。浮き輪で遊ぶ子どもたちや、フライングディスクを投げる大人たち。すっかりゴナンクの風景に、馴染んでしまった。
「あっ! ボクたちが運動会で使った水着と同じ人がいる」
「もしかして休日返上で作ったのか? ちょっと働きすぎだろ」
まだ数は少ないものの、ユーカリの着ていたクロスホルタービキニをまとった従人、それにフレアビキニで走り回る子供がいる。セイボリーさんのことだから、無理やり働かせたりはしないと思うが、ちょっと心配になってしまう。
「昨日は海岸にあれだけ色々なものを作ってたのに、もうきれいに片付いてるなんて凄いなぁ……」
「大きな商会ってのは、家を一軒まるごと運べる容量の、マジックバッグを持ってたりするんだ。それを使えば片付けや設置は、短時間でできたりするぞ」
「キミのはそんなに大きくないんだよね?」
「俺のは小さな部屋一つ分くらいの容量しかないな」
それでも簡単に手に入るようなものじゃないんだが……
母方の実家がどういう家庭だったのか、今となっては永遠の謎だ。
「それより、最初はどこに行くの?」
「お前の好きな場所でいいぞ」
「好きな場所って言われても、食べるものを売ってるお店以外、あんまり知らないんだけど」
四人で商業地区を何度か歩き回ったのに、覚えてるのはそこだけなのか!
まあシトラスらしいと言えるかもしれん。それならまずはウインドショッピングだな。あちこち覗きながら、気になった店に入ってみよう。
◇◆◇
こらシトラス、あんまりキョロキョロするんじゃない。余計に目立ってしまってるだろ。落ち着かない気持ちは、わからんでもないんだが。
「ミントみたいに耳が良くないから聞こえないけど、絶対に悪口言われてるよ」
「そんな訳あるか。今のゴナンクに、お前をバカにするやつなんて一人もいない。仮にそんな愚か者を見つけたら、俺が成敗してやる」
「ボクがこんなのつけてるから、似合ってないとか笑われてるんだって」
待て待てシトラス。お前のピンと立ったケモミミは、ただでさえ目を惹くんだ。そんなふうにいじると、却って注目されてしまうぞ。左耳につけた金色のイヤーカフが、陽の光を浴びてキラリと光ってるじゃないか。幅広で全面に模様の刻まれた物を選んだが、さり気ないオシャレで実によく似合ってる。
今のシトラスが日本の学校に通っていたら、憧れの生徒会長様みたいに見られるんじゃないだろうか。もちろん女子校のな。十代前半っぽい女性たちに、キラキラとした目で見られているのが、その根拠だ。自分たちが大人になったら、シトラスのような従人を侍らせたいとか思ってるのかもしれない。だからもっと自信を持て。
「服にしろ水着にしろ、俺の選んだものに間違いがあったか? コンテストの時にも言ったが、心技体と衣食住は常に意識してるから安心しろ」
「そんなこと言って、単に趣味を押し付けてるだけじゃん」
よくわかってるじゃないか。しかし一瞬とはいえ、シトラスはそのアクセサリーに目を奪われていた。そんな姿をこの俺が見逃すと思ったら大間違いだ。
第一こうでもしないと、お前はアクセサリーなんか身に着けてくれない。俺のやりたいことであると同時に、なんだかんだで喜んでいるのは、嘘がつけないしっぽを見ればわかる。そういう所が可愛すぎるんだよ。
「プライベート開催とはいえ、お前はコンテストの優勝者なんだぞ。ちゃんとした待遇で生活してるんだとアピールしなければ、俺の品位が疑われてしまう。それに優勝者をないがしろにするようでは、コンテストの存在意義も揺らいでしまうからな」
「ボクは上人に仕えて強くなりたいだけで、注目されたいわけじゃないんだけど」
「その点に関しては最優先事項だから心配しなくていい。しかし他人の感情までは制御できん。有名税だと割り切らなければならない部分は、どうしても出てくる。常軌を逸した目に合うようなら、俺も覚悟を決めて対処してやろう。だから今は我慢しておけ」
「ふーん。まあキミの覚悟に免じて我慢してあげるよ。そこまで言うからには、とんでもない事をしでかしそうだしね」
当たり前だ。お前たちと楽しく過ごしていくためなら、どんな犠牲でも払えるからな。国を捨てたり、世界を敵に回したって、絶対に後悔などしない。モフモフ愛というのは、それほど深いものなんだ。
そんなやり取りをしていたら、路地に向かって石を投げる、上人の子どもたちが目に入る。
「うわー、きったねー。野良従人だ」
「四等級じゃんか、あれ」
「ゴミ掃除してやろうぜ!」
「「賛成ー」」
無邪気に羽根をむしられるトンボや、踏み潰されるアリじゃないんだから、さすがにこれは看過できん。このまま放っておいたら、いずれ処分されるだろう。俺はシトラスと一緒に、路地の奥へ進んでいく。
そこに倒れていたのは、ミントと身長が変わらないくらいの、幼い従人だ。黒い髪としっぽを持った猫種だが、体はガリガリに痩せて骨が浮き出てる。かなり待遇の悪い場所で過ごしていたに違いない。小石をぶつけられても反応を示さないし、完全に意識がない状態か。これは一刻を争う事態だ。
首に浮き出た従印は赤く、契約主に捨てられたのが一目瞭然。俺がギフトを使うまでもなく、ひし形模様を見るだけで、四等級だとわかる。しかし論理演算師のギフトは、そこにない情報を映し出す。
「シトラス、あれは八ビット持ちだ。助け出して俺たちで保護するぞ」
「わかった!」
俺は子どもたちに近づき、声をかけた。
野良従人の状態は?
彼女を保護した主人公だが、やはり一筋縄ではいかない。
次回「0077話 野良従人」をお楽しみに!
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獣人種っぽくない表現を改修しました(2023/01/06)
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前髪はほとんどいじってないのだろう。しかし耳元と襟足がスッキリとしている。うーん、イヤーカフでも贈ってやるか。シンプルなデザインのものなら似合いそうだ。
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前髪はほとんどいじってないのだろう。しかしもみあげと襟足がスッキリとしている。うーん、せっかくだから従人用のアクセサリでも贈ってやるか。シンプルなデザインのものなら似合いそうだ。
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待て待て、シトラス。そんなふうに髪の毛をかきあげる姿、かなり色っぽいぞ。左耳につけた金色のイヤーカフが、陽の光を浴びてキラリと光ってるじゃないか。幅広で全面に模様の刻まれた物を選んだが、さり気ないオシャレで実によく似合ってる。
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待て待てシトラス。お前のピンと立ったケモミミは、ただでさえ目を惹くんだ。そんなふうにいじると、却って注目されてしまうぞ。左耳につけた金色のイヤーカフが、陽の光を浴びてキラリと光ってるじゃないか。幅広で全面に模様の刻まれた物を選んだが、さり気ないオシャレで実によく似合ってる。