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無能として家から追放されると決めた転生者の俺は、モフモフたちと一緒に第三の人生をエンジョイする  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
0000 1111[第15章]二度目の夏、妹無双の季節

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0263話 障害物ペア競争

 開会式も終わり、上人(じょうじん)たちはそれぞれの応援ブースへ引き上げる。こちらへ腕を伸ばすリコリスを抱き上げ、テラスに置かれた椅子へ腰を下ろす。



「リコリスも大きくなったら、運動会に参加してみるか?」


「きゃっ、きゃっ、きゃっ、あー!」


『最初の競技は障害物ペア競争! 参加者は十二歳以下のパートナーを決め、スタート地点に集合してください』


『競技に協力してくれるロブスター商会の子どもたちが、実況席の近くで待機してるにゃ。身近にパートナーがいにゃい選手は、その子たちを誘ってあげるといいにゃー』



 この競技に参加するのはユーカリとミント、そしてステビアだ。さすがに七十一人全員で競い合うと、ほとんどの種目でグダグダになってしまう。なので参加人数を絞りつつ、チーム分けによる競技も追加。更にメンバーは身体能力や得意分野ごとにグループ化し、流動的に割り振られる。つまり全員に得点のチャンスがあるということ。ユズも参加して競技内容を決めたので、日本の運動会にかなり近くなった。



「サントリナちゃん、わたくしと一緒に参加してくれますか?」


「うん、ユーカリおかーさん!」


「二人とも、頑張ってこい」


「あー、えー!」


「いってくるねー、タクトおとーさーん」



 ユーカリに誘われたサントリナが、手を振りなから駆けていく。ローゼルさんが使役している銀弧(アニス)は、俺と仲が良い犬種(いぬしゅ)の男の子を指名。体を動かすのが好きな子だから、いい人選だ。



「ミントはタイムちゃんと一緒に出たいです。構わないです?」


「もちろんいいよ、ミントちゃん」


「ミントの力になってあげなさい」


「見ていて下さい、フェンネル様」


「私とローリエの絆、みんなにお披露目しましょう」


「目指すは一等賞だね! ステビアお姉ちゃん」


「二人とも、怪我には気をつけなさい」


「はいっ! ニーム様」


「行ってまいります、ニーム様」



 ミントとタイム、そしてステビアとローリエのペアも、競技会場へ向かう。全員が揃ったところで、スタートの合図が鳴る。



『さあ選手たちが一斉にスタート! 最初の難関は網くぐりです。真っ先に飛び込んだのは、ステビア選手とローリエのペア!! その後にユーカリ選手とサントリナのペアが続くー』


「これは……思った以上に進みにくいですね」


「網を引っ張ってる人がいなかったら、もっと楽なのにー」


「サントリナちゃんは、わたくしのしっぽに隠れてください」


「わかった、ユーカリおかーさん」


『おーっと! ユーカリ選手が網を持ち上げ、大きなしっぽの影に隠れたサントリナがスイスイ進んでいくぅー。ここでトップが入れ替わるっ!!』


「あうー、お耳が引っかかって進めないのですぅ」


『やはり兎種(うさぎしゅ)には不利な競技かー。ミント選手のピンクで可愛らしい耳が、網の間から生えてしまったァー!!』


『アインパエの海に、あんな生き物がいるにゃ』



 ミントの耳はチンアナゴじゃないぞ。



「私が網を持ち上げるから、ミントちゃんは四つん這いで進んで」


「ありがとうなのです」


『お互い助け合ってこその障害物ペア競争。見事なコンビネーションです!』


『トップの選手が網くぐりを抜けたにゃ! 次の試練は平均台にゃー』



 平均台が平行に並べられ、手を繋いだユーカリとサントリナが、左右に分かれて登る。こういう競技はユーカリが強い。きっとあの大きなしっぽが、スタビライザーの役目を果たしているのだろう。時折サントリナがふらついても、全くブレることなく支えてるからな。



『ユーカリ選手のペアが速い! 危なげなく平均台を渡り切りましたっ!! そして二位のステビア選手ペアが台を半分まで進んだところで、三位に浮上したアニス選手のペアが平均台に挑むー』



 遅れて平均台に到着した、ステビアとローリエのペア。二人とも二等級の割にレベルが高いし、森で鍛えられた身体能力は、参加者たちの中でも上位の部類。ユーカリとの距離が縮んでいく。



「ステビア、ローリエ。そのまま抜き去りなさい!」


「甘いぞ、ニーム。ステータスに倍近く差がある俺のユーカリと、可愛いサントリナに勝てると思うなよ」


「兄さんこそ忘れてもらっては困りますね。最後の障害では、大逆転もあり得るんですから」



 ハードルや二人縄跳び、パートナーの子どもを持ち上げ、高い場所に吊り下げたクッキーを食べさせたところで、待ち構える最後の試練。



『トップのユーカリ選手が目隠しをして、パートナーのサントリナを背負う。ここからは二人のコンビネーションが試される最難関!』


『パートナーの指示が曖昧だと、コースアウトでペナルティーにゃ!』



 コースから外れると、係員の誘導を待たなくてはいけない。レース中にそんな事をしていたら、大きく遅れてしまう。方向感覚が優れているユーカリといえども、さすがにペースが落ちる。


 後ろの方を見るとミントとタイムのペアが、かなり追い上げてきていた。平均台では少し手こずったものの、ハードルや縄跳びは身体能力に物をいわせて、突破できるもんな。それだけタイムのレベルも、上がっているということ……



『おーっとミント選手が、軽々とタイムの体を持ち上げるー。小柄で非力な兎種とは思えない、脅威のパワーだァァァ!』


『特別訓練の最中に襲いかかってきた従人部隊(ハンター)たちを、ちぎっては投げ、ちぎっては投げしたそうにゃ。今では服従のポーズでお腹を見せるハンターたちも居るにゃ』


「あれは恥ずかしいから、やめてほしいのですぅー」


『今日もぴょんぴょんしているミント選手からは、そんな武勇伝は感じられないー。動きに合わせて揺れる二本の耳、そして去年より成長した胸も弾むぅーッ!!』


「お胸の話をしないで下さいですー」



 律儀に返事をするミントもだが、今年も楽しんでやがるな、実況のやつ。そんなやり取りをしているうち、ミントとタイムがアニスたちを抜き去る。これで三位浮上だ。



「ユーカリおかーさん、つぎはみぎ!」


「はい、サントリナちゃん」


「もうちょっと、みぎだよ」


「これくらいですか?」


「うん! そのまま、まっすぐすすんで」


『去年の橋渡りもそうでしたが、目隠しをしているとは思えないほど、ユーカリ選手の足取りはしっかりしている』


『もっと凄いのはステビアとローリエのペアにゃ』


『ホホォーゥ!!』


「二、右三十、一半、左十五」


『あれは距離と角度を指示しているのかぁー!? 先読みしながら的確に情報を伝えられるなんて凄い、凄すぎるぞー』



 まあローリエのことだから、見ただけで脳内に平面図を作ってしまったんだろう。指示通りに動けるステビアもさることながら、瞬間記憶って本当にチートすぎだろ……



『トップとの差がどんどん縮まっていくにゃー!!』


「そのまま振り切れ! ユーカリ、サントリナ!!」


「ゴールはすぐそこです! 行きなさいステビア、ローリエ!!」


『最後の直線を二組のペアが疾走するー』


『あー、惜しかったにゃー。勝負の分かれ目は、身体能力だったにゃ』


「ユーカリおかーさん、かったよっ!!」


「やりましたね、サントリナちゃん」



 嬉しそうに駆け寄ってきた二人を、抱きしめながら撫で回す。少し遅れてミントとタイムもゴール。戻ってきたタイムの頭を撫でると、ニコニコしながらフェンネルの方へ。



「見ていただけましたか? フェンネル様」


「ああ、しっかり見ていた。よく頑張ったね、タイム」



 褒めてオーラ全開のタイムを、フェンネルが抱き上げる。アルカネットたちにも次々褒められ、とても嬉しそうだ。抱きしめたミントの耳をモフりながら、仲睦まじい光景に俺の頬が緩む。



「ミントもよくやったな。最下位から三位浮上とか、凄いじゃないか」


「タイムちゃんのおかげなのです」


「ステビアとローリエもお疲れ様。兄さんの従人(じゅうじん)にあそこまで迫れるのは、自慢していいですよ」


「最初の網で手こずったのが、ちょっと痛かったね。ステビアお姉ちゃん」


「あれがなければ、もっといい勝負ができていたかもしれません」


「運動会はまだ始まったばかり、活躍する機会はいくらでもあります。気持ちを切り替えていきましょう」


「はい! ニーム様」



 変則的な障害物競走だったが、思いのほか盛り上がったな。さて、次はスイの出番だ。俺も参加することになっているし、二人で頑張るとしよう。


日本で行われる競技が数多く取り入れられた今回の運動会。

次はどうなるのか?

「0264話 チャレンジ! ご主人様と夫婦レース」をお楽しみに。

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― 新着の感想 ―
・・・その内、風雲たけし城始めたりしないか?これ あれ運が絡むモン有るから身体能力だけじゃ抜けられんし SASUKEは身体能力が高い高レベル連中の独壇場になりかねんから除外で
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