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無能として家から追放されると決めた転生者の俺は、モフモフたちと一緒に第三の人生をエンジョイする  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
0000 1110[第14章]コーサカハウスにようこそ

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0247話 未知のパワー

濁点と画面の汚れが区別できない、そんなお年頃です(ぇw

誤字報告ありがとうございました。


 なんとか雨が降り出す前に、戻ってこられた。遠くのほうで雷鳴が聞こえるし、今夜も土砂降りになりそうだ。それにしても……おそろいの服を着ると、やはり一体感があっていい。シトラスの言っていた〝一緒〟が嬉しいんだろう。みんな上機嫌で歩いている。


 そんな姿を眺めながら自宅を目指していたら、前方に見知った後ろ姿を発見。二人とも背筋がピンと伸びて、姿勢がいいよな。



「おーい、ニーム、ステビア」



 二人がその場に立ち止まってくれたので、少し速度を上げて歩く。



「もうアインパエの方は片が付いたんですか?」


「お帰りなさいませ、タクト様」


「その様子だと、何があったか知ってるんだな」


「学園長先生に教えてもらいましたので。ですが指揮官(ハンター)程度に遅れを取るようじゃ、兄さんもまだまだですね」


「すまんなニーム。お前にも心配をかけた」


「しっ、心配なんかしてませんってば。いつも自信満々な兄さんが、無様に転がっている姿を見られなくて残念です」


「昨夜はずっと不安そうにされていて、寝ている間も私を離してくれなかったのですよ。至福のひとときを過ごさせていただきました」


「ちょっ、ステビア!? 兄さんの安否は確認できていましたから、不安だったんじゃありません。あれはたまたまです。たまたまあなたに甘えたかっただけなんですからね!」



 頬を染めながらまくしたてる、ニームの頭に手を伸ばす。軽くナデナデしてやると、すぐに大人しくなった。



「まあこれは言い訳になるが、あいつらの軽率ぶりが度を超えていて、想像の斜め上を行かれてしまった」


「兄さんに危害を加えようとするなんて、愚劣(ぐれつ)極致(きょくち)じゃないですか。アインパエが消滅しなくてよかったですよ、本当に……」



 そんな事を言いながら、ニームが俺たちをじっと見る。怪我もしてないし、ピンピンしてるから大丈夫だぞ。心の負担を減らすためにも、あとで加護のことを話しておかねば。



「ところでシトラス。兄さんと何かありました?」


「えっ!? 急にどうしたのさ」


「スカートを履いていることもそうですけど、兄さんとの距離感がいつもと違いますよ」



 鋭いな、ニームのやつ!

 スイのときもだったが、女の勘ってやつか?



「なっ、なっ、なに言ってるのさ。せっかく作った服だから着ないともったいないし、すごく優しくしてもらったから少しだけ見直したくらいで、こいつとはそれ以上なにも無いったら。気のせいだよ、気のせい!」


「そうだぞ、ニーム。いつもと同じ、可愛いシトラスだ」



 ワタワタする姿が愛おしすぎたので、抱きしめて頭を撫で回す。しっぽをフリフリ揺らしやがって、うい奴め。



「何があったかわかったので、もういいです。スイはまだしも、シトラスに先を越されてしまうなんて、ちょっと悔しいですね。私も大人になったことですし、そろそろ経験してみても……」


「ニーム様、宜しければこれで」



 こらニーム、視線を下げるな。どこを見てやがる。

 ステビアも自分のしっぽを差し出すんじゃない。何をしたいんだ、お前は。



「ミントも早くオトナになりたいのです」


「……私も、シたい」


「お二人が成人したときには、全員で旦那様と……」



 おーいユーカリ、遠くを見ながらクネクネするのはやめろ。



「私は次のデートを楽しみにしてるわ」


主殿(ぬしどの)(われ)も忘れないでくれ」


「キューン」



 みんな、程々で頼むぞ。

 俺の体は一つしか無いんだからな。



「こらこら、往来でする話じゃないだろ。さっさと家へ戻ろう」


「それもそうですね。降り出す前に帰りましょう」



 ちゃっかり俺の隣をキープしたニームを連れ、屋敷へ続く道を進む。しかしニームがどこかの男と、そういう関係になる姿とか想像できん。まあ半端なやつと付き合うとか言い出しても、俺は断固として首を縦に振らないが!



「なんかボクたちにとって最大のライバルは、実の妹な気がしてきたよ」


「よくわかってるじゃないですか、シトラス。私が認めた相手じゃないと、兄さんと付き合うことなんて許しません」


「お前は俺の保護者か!」



 ……人のことは言えんけどな。



「ニーム様的には、どんな方ならお許しになれるのです?」


「そうですねぇ……。兄さんのことをしっかり支えられて、わがままを受け入れられる器量があり、変態モフリストにも寛容で、ちゃんと叱れる人でしょうか」


「……すごく、難しい?」


「そんな事はありませんよ、シナモンさん。ニーム様の条件に該当するのは、わたくしたちですから」


「あなた達は七人揃って一人前なこと、忘れてはいけませんよ」


妹君(いもうとぎみ)から更に認められるよう、もっと精進せねばならんな」


「キュキューイ!」


「なんだか将来は、八人になりそうな気がしてきたわ」



 待て待てジャスミン、もう一人は誰だ。ニームか、それともユズなのか?

 どちらも上人(じょうじん)なんだぞ。大穴でクミンだったら、間違いなくマツリカに斬られる。滅多なことは言わないでくれよ。


 どちらにせよ今の関係は、ニームの公認を得られているということ。身内に味方がいるのは、何より心強い。この子が妹で、しかも俺の籍に入ってくれて、本当に良かった。



◇◆◇



 雑談しながら歩いていると、あっという間に屋敷へ到着。玄関を開けたらサントリナと手を繋いだフェンネルが待っていた。すっかり孫と祖父みたいな関係になりやがって。俺は嬉しいぞ。



「お帰りなさいませ、タクト様。買い出し、ありがとうごいました」


「ついでだったから問題ない。あとでアルカネットとカルダモンに渡しておく」


「おかえりなさいませ、タクトおとーさん。ニームさま」



 駆け寄ってきたサントリナを抱き上げ、頬ずりをする。ピクピク動くうし耳が、顔に当たって気持ちいい。



「お疲れ様でした。ニーム様もご一緒だったのですね」


「帰り道で兄さんとばったり出会ったんです」



 少し遅れて入ってきたニームが、フェンネルと挨拶を交わす。その時ローリエとユズ、そしてリコリスを抱いたラベンダーが玄関ホールにやってくる。一気に人口密度が増したな。



「お帰りなさい、ニーム様!」


「あー、うー、あー」



 サントリナをユーカリに預け、こちらへ手を伸ばすリコリスを抱かせてもらう。あー、しっぽのモフモフ感が最高だ。乳幼児の毛というのは、細くてサラサラで究極無双! 向かうところ敵なし!!



「いつも申し訳ありません。タクト様の声を聞くと、この子がそちらへ行きたがるので」


「まったく問題ないぞ。むしろいつでも来てくれ。こうして慕ってもらえるのは、俺にとって一番の褒美だ。なー、リコリス」


「きゃっ、きゃっ、きゃっ」



 俺の顔をペタペタ触りながらリコリスが微笑む。無邪気な笑顔に癒やされながら視線を横へ。

 ニームに抱きつき、頭を撫でてもらっているローリエの方を見ていたら、いつの間にかユズが背後へ忍び寄ってきた。気配を消して近づくなよ、怖いだろ。



「可愛い、セーラー服、最高!」


「おっ、だいぶ話せるようになったな」


「リボン、幅広。袖、ワンポイントある。構造、ダブルボタン。タクトさん、ツボ、さすが、押さえまくり」


「……しまパン、どう?」


「ふおぉぉぉぉぉぉー。ネコ耳セーラー服っ娘のしまパン、キターーーーーっす!! 最高っす、ラブリーっす、目線こっちっす」



 おいおい、興奮したら流暢に喋れるとかなんだよ。スマホのカメラを起動したユズが、写真を撮りまくる。床に寝そべろうとするんじゃない。お前はローアングラーなのか!



「わー、シナモンちゃん。人前でパンツ見せたらダメだよ」


「……ユズ、家族。だから平気。ローリエも、見ていい」


「シナモンたんが(とうと)すぎて、生きるのが(つら)いっす」



 よくわからんが、ちゃんと話せるようになったぞ。言葉の壁を超える力が、しまパンにあったとは……



「撮影は程々にしておけよ。それとローアングルは禁止だ」


「了解っす!」


「それはそうとユズのこと、ほとんどローリエに任せっきりになってしまったな」


「ユズ様と話すの楽しかったから、全然構わないよ。()えとか()しとか、色々教えてもらったし」



 ユズの奴め、ローリエを沼にハメようとしてるんじゃないだろうな。あいつのスマホに刺さってたカード、テラバイト(TB)の表示が出てたし……


 一体なにを保存してるのやら。



「こんど俺から、個人的に礼をする。やってみたいこととか、欲しいものがあったら教えてくれ」


「なんでもいいの?」


「大抵のリクエストには答えてやるぞ」


「エッチなことは禁止ですよ!」



 未成年に手を出したりせんわ!

 もっと兄のことを信用しやがれ。



「じゃあ思いついたらタクト様に言うね」


「ああ、それでいい」



 そうと決まればリビングへ行こう。興奮するユズを引きずり、全員で玄関ホールをあとにする。胸に抱いていたリコリスは、いつの間にか眠っていた。


次回で第14章が終了。

「0248話 餅つき大会」をお楽しみに。

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