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無能として家から追放されると決めた転生者の俺は、モフモフたちと一緒に第三の人生をエンジョイする  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
0000 1110[第14章]コーサカハウスにようこそ

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0244話 ひっつき虫

 気をつけていたつもりだったが失敗したな。迎えに来た三人組から、幹部連中の不審な動きを警告されていたというのに。嫌がらせ程度は当然だとしても、いきなり攻撃してくるとは。そこまでヘイトを集めた覚えはないのだが……


 まあアイツラにとって、よほど気に入らない存在だったのだろう。でなければこんな真似、出来るわけがない。皇帝の勅命(ちょくめい)反故(ほご)にしただけでも極刑だし、冒険者ギルドと全面抗争なんてことにもなりかねん。もみ消す自信があったのか、単になにも考えずやらかしたのか。現時点では不明だ。


 ひとまず体の調子を確認し、抱きつきながら泣いているミントの耳を、ふにふにとモフる。



「ふぇぇーん。よがったのでずぅぅぅ、ダグドざぁまぁー」


「心配かけてすまなかった。俺はどのくらい気を失ってた?」


「ほんの数分だったです。ミント、すごく心配したですよぉ」


「ここまで飛ばされた割に、服が破れたりしてないな。ミントが直してくれたのか?」


「ミントの治癒術では、服は直せないのです。タクト様は今の状態で、横たわってたですよ」


「とりあえず、考察は後にしておこう。コハクはどうだ?」


「キュキュキューイ!」



 どうやら俺が気を失ってる間、ずっと頬を舐めていてくれたらしい。とっさのことだったが、この子を守ることが出来て本当に良かった。周囲に響く爆音も気になるし、ひとまず人工林から出ることにしよう。



「なんというか……地獄絵図だな」


「いきなりタクト様を襲ったのです。この程度の(むく)いは、当然なのです!!」


「キュィッ!!」



 あー、ミントとコハクもそっち側か。変な罪悪感がないだけでマシだな。俺だって許すつもりはないし、どう考えてもこの結果は自業自得。俺たちを派遣した時点で、アンゼリカさんも最悪の事態を、想定しているはず。



「周囲の状況を教えてくれ。誰か怪我したり、捕まったりしてないか?」


「えーっと……皆さんすごく怖いお声を、出してらっしゃるですよ。中でもシトラスさんが、特に憤慨(ふんがい)してるです」


「シトラスのやつ、監視塔を素手で破壊したみたいだな。倒れている上人(じょうじん)に、敵意を向けまくってるぞ。ひとまずアイツのところへ行こう」


「ハイです!」



 ミントと手をつなぎ、焦土と化した駐屯地を足早に進む。しかしまあ、天変地異でも起きたのかって様相だな。広場だった場所は、すべて地割れになってるじゃないか。スイのやつ、あんなことまで出来るとは。


 特撮の舞台とよく似た岩山が消え去り、地面に大きなクレーターが出来ている。表面がマグマ化しているから、やったのはユーカリの後ろにいる火龍(かりゅう)に違いない。千度近くの熱を生み出せるとか、すごすぎるぞ。


 あっちに見える天使はジャスミンか?

 四対八枚の翼なんて、熾天使(セラフィム)より位が高そうだ。しかも空に浮かぶ多数の魔法陣が、厨二心(ちゅうにごころ)をくすぐりまくる!!



「みんなパワーアップしたっぽいな」


「ミントは[祝福術(しゅくふくじゅつ)]ってスキルが増えてたです」


「ステータスに補正がかかる、バフみたいなものかもしれない。俺もさっきから、やたら調子がいいんだよ」


「タクト様が元気になられて、ミントすごく嬉しいのです」



 嬉しそうにはにかむミントの頭を撫で、今にも足を踏み降ろさんとするシトラスに近づく。



「おーい、シトラス。それくらいで勘弁してやれ。三人とも気を失ってるぞ」



 ――ヒシッ!!



「平気なの? 怪我はない? どっか痛いところは?」


「この通り、かすり傷一つない。強いて言えば、お前に抱きつかれてちょっと苦しいくらいだな」


「うぅー、良かったよぉ」



 涙声になったシトラスを抱きしめ、頭をそっと撫でる。すると逆だっていたしっぽがヘニャリと垂れ、ユルユルと左右に揺れだす。俺の可愛いシトラスを悲しませやがって。やはりこのまま蹂躙してしまったほうが……


 なんて黒い感情が湧き上がってきたとき、シナモンが背中に飛びついてきた。



「……あるじ様、大丈夫?」


「魔法の影響もほとんど受けてないし、なぜか服とかも破れない程度で済んでいる。少し気を失っただけで、なんともないぞ。ミントのおかげで、後遺症とかも出ないだろうしな」


「ご無事で良かったです、旦那様」


「ねえタクト。服が破れてないってことは、怪我もしてないの?」


「真っ先に駆けつけてくれたミントによると、かすり傷一つなかったらしい。念のため治癒術をかけてもらったが、ちょっと不思議なくらいだ」


「その件なのだが、恐らく(われ)の影響だ」



 近づいてきたスイが俺の体に触れながら、少し困った表情を浮かべる。そういえばスイの本体も、触手(ヒゲ)やタテガミを除いて傷ついたりしないんだったな。人型の場合は髪や爪が例外部分になるんだっけ。



「もしかすると、アレが原因か?」


主殿(ぬしどの)から寵愛(ちょうあい)を受けたことで、龍の加護が働いているのだろう。我もあのような行為は初めてだったゆえ、その影響に考えが回らなかった。申し訳ないことをしたな」


「いやいや、謝らなくてもいい。むしろありがたいくらいだ。本当に助かったよ、ありがとう」



 頭を撫でながら見つめると、頬を赤らめながら恥ずかしそうに微笑む。恋する乙女モードのスイは可愛すぎるぞ。二人っきりの時にこの表情をされたら、自制心なんて吹き飛んでしまいそうだ。



「魔法の影響が軽減されたことは、我に少し心当たりがある。あとで確かめに行くとしよう」


「とりあえず俺はなんともないから、そろそろ離れてくれ」


「抱きしめてないと、どっか行っちゃいそうだから、ヤダ」


「……あるじ様、肩車して」



 シトラスは自分の体をさらに密着させ、シナモンは肩へよじ登ってきた。非常に歩きにくいが仕方ない。しばらく好きにさせてやろう。



「シトラスちゃんとシナモンちゃんは、タクトのことが好きすぎるわね」


「ところでジャスミンは、いつまでその姿でいられるんだ?」


「最近お供えを欠かさず置いてくれてるから、もうしばらくは大丈夫みたい。でも精霊たちの負担になるし、元の姿に戻るわ」



 ジャスミンの体から光の帯がほどけていき、有翼種(ゆうよくしゅ)の姿へと戻る。お供えの効果が、こんなところに現れるとは。これからも水飴を作りまくらねば!



「すごくかっこいいお姿だったのです!」


「あれは[降霊術]っていうスキルなのよ。精霊たちの服を着てるって、感じになるのかしら」


「感覚的には普通の体と変わらないのか?」


「大きくなって翼も増えたけど、自分の肉体そのものだったわ。だから、あの姿になった私も愛してね」


「もちろんだ。また二人でデートしよう」



 途中で変身してもらえば、ジャスミンの願いを叶えられそうだ。彼女が幸せになれるのなら、精霊たちも喜んで力を貸してくれるはず。今や精霊界のアイドルだもんな、ジャスミンは。



「ところで旦那様。この後どうすれば宜しいでしょうか」


「後始末は隠密に任せよう」



 マジックバッグから特殊な笛を取り出して吹くと、目の前に黒装束の男が現れた。いつも思うんだが、一体どこに潜んでいるのやら……



「呼ばれて飛び出てババババーンナリ」


「関係者には後で事情を説明するから、こっちの処理を任せてもいいか?」


合点承知の助がってんしょうちのすけナリ」



 よし、これで大丈夫だろう。一瞬で姿が消えた隠密に、心の中でエールを送っておく。またフリーズドライの携帯食を作って、差し入れておくか。むちゃくちゃ喜んでくれるんだよな。


 シナモンを肩に乗せ、引っ付いたままのシトラスを愛でながら、皇居を目指す。こういう事態も織り込み済みだったのかを、しっかり確かめておかねばならん。なにせ俺のために怒ってくれた、シトラスたちに責任は負わせられない。もし文句を言うやつがいれば、徹底的に潰してやる。どんな権利やコネを使ってもだ。


主人公に宿った加護の詳細、そして仲間たちの新しい力。

更にシトラスが……

次回「0245話 シトラスのお願い」をお楽しみに!

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