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無能として家から追放されると決めた転生者の俺は、モフモフたちと一緒に第三の人生をエンジョイする  作者: トミ井ミト(旧PN:十味飯 八甘)
0000 1101[第13章]アガ塔よいとこ、一度はおいで

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0225話 アンゼリカとお出かけ

 眠ってしまったニームはステビアとローリエに任せ、俺とアンゼリカさんは部屋を出る。しかし本当にいいタイミングで来てくれた。誘導してくれたカイザーには感謝せねば。



「タッくん、すごくいいお兄ちゃんしてたにゃ」


「あいつは数少ない俺の理解者だからな。大切に思うのは当たり前だ」


「あんなに可愛い妹だったなんて、ずるいにゃ。お母さんも、ニームちゃんみたいな娘がほしいにゃ!」


「ニームは俺の妹だ、簡単に渡したりしないぞ。そもそも娘が三人もいて、まだ欲しいとか贅沢じゃないか?」


「娘は何人いても良いにゃ。息子は……タッくんみたいな子がほしいにゃ!」



 こら、瞳をウルウルさせながら見上げるんじゃない!

 ちょっと心が揺れてしまいそうになるだろ。



「そんな目で見ても、養子縁組なんてしないからな」


「あっ! お母さんとタッくんが結婚したら、ニームちゃんが妹になるにゃ。これってすごく名案にゃぁぁぁぁぁぁー、痛い、痛いにゃーーー」



 おっといかん。反射的にアホ毛を引っ張ってしまった。



「すまない、つい手が出た」


「つい……じゃないにゃ! タッくんは私の扱いが雑すぎるにゃ」


「後でプレゼントをやるから、機嫌を直してくれ」


「それは楽しみにゃ!」



 プンスカしていたアンゼリカさんが、一瞬で笑顔になる。表情がコロコロ変わって、本当に面白い人だな。ぶっちゃけ、萌え要素がてんこ盛りすぎて、ずるい。どれだけ俺の創作意欲を刺激すれば気が済むんだ、この人は……



「あっ! タクト様。ニーム様のご様子はどうですか?」


「アンゼリカさんに来てもらって落ち着いた。薬も飲んだし、症状は緩和されると思う」


「それは良かったのれふー」



 真っ先にリビングから飛び出してきたミントを抱き寄せ、耳をモフりながらみんなに報告する。とりあえずアルカネットたちも休憩に入らせよう。


 ユーカリが()れてくれる茶を待っている間にプレゼントを渡したが……

 うむ。俺の見立てどおり、似合いまくってるな。


 上機嫌で隣に座るアンゼリカさんを見ていたら、アルカネットたちも集まってきた。そして俺とアンゼリカさんから、注意点や配慮すべき事柄を伝えておく。どうだ、親しみやすい皇帝だろ。


 なにせかぶっているのは、ねこみみ型の黒い帽子。しかも中央には白い糸で、猫の顔(=・ω・=)を刺繍してある。ボジョレー衣料品店は、実にいい仕事をしてくれた!



「あっ、そうにゃ! これが皇居に届いてたにゃ」



 アンゼリカさんがマジックバッグを次々取り出す。さすが一流の職人が育てた孫だ。素晴らしい出来上がりじゃないか。ここまで俺のスケッチ通りに仕上がるとは……



「やったー! これボクのマジックバッグだ」


「ミントのすごく可愛いのです!」


「これがあれば楽にお買い物ができます」


「……あるじ様とお揃い、嬉しい」


「どう。似合ってる?」


「ああ、想像以上に似合ってる」



 首からマジックバッグをぶら下げたジャスミンが、部屋の中を嬉しそうに飛び回る。他のみんなも腰につけたり、肩から下げたり楽しそうだ。とりあえず、俺が預かってる荷物を引き渡しておこう。あとは着替えの一部や装備品を入れておけば、なにがあっても困らない。



「スイの分は、もう少し待ってくれ。ちょうど基幹部品の在庫がないらしくてな。夏くらいにはできると思う」


(われ)の分はいつでも構わんよ。主殿(ぬしどの)がいてくれたら、困ることはないからな」



 当たり前だが、龍族である彼女にも所有権がある。それだったら作ってやるしかないだろ。一人だけ仲間はずれは論外だしな。



「とりあえず買い物に行くときは、俺の従人(じゅうじん)を連れて行ってくれ。ワカイネトコなら大抵の店に入れてもらえるし、計算や支払いも任せておけば大丈夫だ」



 唖然と見つめるアルカネットたちに説明し、受け取ったニームのマジックバッグをしまっておく。ちょうどいいプレゼントができた。祝いの夕食と一緒に渡してやろう。



◇◆◇



 コハクを肩にのせ、通りに面した門を出る。隣を歩いているのは、ねこみみ型帽子をかぶったアンゼリカさん。かなり気に入ってくれたようで、一向に脱ごうとしない。


 帽子が似合いすぎてるせいで、更に若く見えるんだよな。このまま学園へ行ったら、新入生に間違われるかも……



「メドーセージ先生に会えるの、楽しみにゃ」


「霊木どうしを繋ぐために来てもらったときは、ちょうど学会に出席中だったからな」


「こうして四人でお出かけできるなんて、ワカイネトコは平和でいいところにゃ」


「そういえば、公務の方はいいのか?」


「声を出せるようになったラムちゃんが、すごく頑張ってくれてるにゃ。それにナーちゃんとベルちゃんも、いっぱいお手伝いしてくれるから、半日くらい空けても大丈夫にゃ」



 つまり通貨の切り替えで、大きな混乱は起きてないってことか。新紙幣のデザインを、カイザーの姿絵入りにしたのが、良かったのかもしれないな。


 なにせ祝賀パレードの一件は、国中に号外が配られたほどだ。あの騒ぎで死傷者が出なかったのは、霊獣の加護ってことになっている。カイザーのおかげで、様々なことがうまく回り始めた。この子こそがアインパエの救世主だ。そのまま俺より目立ち続けてくれ!



「ホゥー?」


「どうだ、ワカイネトコの街は面白いか?」


「ホォーウ!」



 (よこしま)な波動でも出てしまったんだろうか、帽子の上に立って周囲を観察していたカイザーが、首をグルリと回して俺の方を向く。さすが左右どちらも二百七十度の可動域を誇る頚椎(けいつい)。体をまったく動かさずに俺を見てきた。



「大きな建物が見えてきたにゃ」


「丸いほうが大図書館で、背の高いほうがマノイワート学園だ」


「皇居が小屋に見えちゃうくらい立派な建物にゃ」


「大聖堂はもっと大きかったりするんだけどな」


「そっちも見てみたいにゃ」


「ラズベリーに頼めば、こっそり見学くらいさせてくれると思うぞ」


「聖女様に個人的なお願いができるとか、タッくんはやっぱり恐ろしい子にゃぁー」



 夕暮れ時に登ったアガ塔のこととか話していたら、学園の正門に到着。さすがに皇帝の身分を隠したまま入ると、バレたとき面倒なことになる。自分の職員証と皇籍証を取り出し、アンゼリカさんの青いカードと一緒に警備員へ差し出す。これなら身内を連れてきただけだと、スルーしてもらえるはず。



「あっさり入ることができて驚いたにゃ」


「警備員はものすごい顔をしてたけどな。俺が連れてきたってことで、無理やり納得してくれたんじゃないか?」


「つまり普段からタッくんは、色々やらかしてるってことにゃ?」


「やらかしとは失礼な。ベルガモットの守護者(ガーディアン)だから、信頼されているだけだ」


「ホントかにゃぁ~」



 そんな顔で覗き込むんじゃない。思わずキョドりそうになるじゃないか。非正規の方法で街へ入ったことには目を(つぶ)るとして、なにもやましいことはしていない……はず!



「あーっ! コーサカ室長が、また見たことない従人を連れてるー」


「よく見てみろ。帽子をかぶってるから、あれは上人(じょうじん)だぞ」


「くそっ。ニームさんだけでなく、あんな美少女を……」



 ちょうど授業が終わったのか、教室から生徒がぞろぞろと出てきた。そして俺たちは、あっという間に囲まれてしまう。こら、逃げるように離れていくな。生徒たちの暴走を止めるのも教師の仕事だろ。



「ねえねえ、歳はいくつ?」

「もしかして新入生?」

「コーサカ室長と手と繋いでたりしてて、すごく仲がいいよね。ひょっとして妹だったり?」

「その白い鳥は、室長が飼ってる霊獣と同じなのか?」

「名前を教えてくれ!」

「こんど一緒にお茶でもどうだ?」


「いっぺんに質問されたら、お母さん困っちゃうにゃー」



「「「「「えぇーーーーーーーーーーッ!?」」」」」



「コーサカ室長の母親って、こんなに若いのかよ」

「いや、どう見ても犯罪だろ、これ」

「こんな美少女から、あんな目つきの悪い男が生まれるなんて、信じられん」



 うるさいぞ、お前。目つきの悪さは後天的要因だ。俺の母さんだって、すごい美人なんだからな!



「この人はアンゼリカさんといって、俺の親戚だ。昨日発行されたばかりの学会誌、誰か読んだやつはいるか?」


「今朝とどいてたから、授業中に読んだぞ」



 真面目に授業を受けろよ。



「俺も家を出る前に読んだけど、ギフトの学会誌だよな。そういえば室長と学園長の連名で、なにか発表してたっけ」


「あー、私も見た。未解明のギフトに関する論文だよね」


「もしかして、またコーサカ室長がやらかしたのか」



 やらかしと違うわ!

 発見や考察と呼べ。



「そこで発表されていた〝塩基(ヌクレオベース)〟の持ち主が、この人だ」


「「「「「つまり……合法!!」」」」」」



 お前ら、ノリノリだな。

 さすがエリートたちが集まる学園だけあり、発表されたばかりの論文に目を通している生徒が多い。



「じゃあ、この人は本当にお子さんがいるのか?」


「聞いて驚くなよ。子供が五人もいるぞ」


「うわー、それでこの姿とかうらやましー。私もそのギフト欲しかったなぁ」


「本当に可愛いよね! だって新入生かと思ったもん」


「ねえねえ、そのキュートな帽子、どこで買ったの?」


「これはタッくんにもらったプレゼントにゃ」


「「「「「キャー! 喋り方もかわいいー」」」」」


「これはボジョレー衣料品店が、販売の準備をしている帽子でな。宣伝のためにかぶってもらってる」


「私、絶対に買いに行く!」


「私も!!」


「一般販売の時には、カラーバリエーションが増えてる。この週末に売り出す予定だから、足を運んでみてくれ」



 ワイワイ盛り上がる生徒たちの間を抜け、学園長室を目指して階段を上がる。そういえば、つい自然に手を繋いでいた。保護者の立場が逆転してる気もするが、考えたら負けってことで、思考をシャットダウン。



「気味悪がられなくてビックリしたにゃ」


「ここの生徒は新しい技術や知見に対して、偏見が少ないからな。大抵のことは柔軟に受け入れてくれる」



 そんな資質を持っていても、従人に対する態度はあまり変わらない。長い時間をかけて、種族間の距離を縮めようと頑張ってるラズベリーが、苦労するわけだ。



「ベルちゃんがここの事を、楽しそうに話してたのがよく分かるにゃ。お母さんも通ってみたいにゃ」


「そんなことしたら、娘たち全員が通うとか言い出すぞ」


「それは大いにあり得るにゃ!」



 教室で授業を受けている四人の姿が頭に浮かぶ。次女のラムズイヤーは、大人びた雰囲気を持っているので、若干浮いてしまいそうだ。三女のベルガモットと長女のナスタチウムは、ここの生徒たちに比べて容姿が幼い。最も違和感なく溶け込むのがアンゼリカさんというこの事実、どう受け止めれば良いのだろうか……


 くだらないことを考えていたら、学園長室が見えてくる。さっきの教室は早めに授業が終わっていたようだな。誰にも出会うことなく、ここまで来ることができた。生徒たちに見つかると面倒なので、とっとと中へ入ろう。


アンゼリカの用事とは?

そして主人公が作るアレ。

次回「0226話 帽子のポテンシャル」をお楽しみに。

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― 新着の感想 ―
タクトに研究室持たせたコストとか色々とっくにペイ出来てそうだよなあ 研究成果や色々な知識とその応用が研究機関にとって有益過ぎる 下手すりゃ繋がり持つために他の研究室や研究所からハニトラ仕掛けられるレベ…
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