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0148話 車やスニーカーもそう呼ばれる

本文途中の二重ルビ、ちょっと読みにくいかもです。

投稿システムの裏技みたいなものなので、ご勘弁を!

WindowsとAndroidのChromeだと大丈夫です。同じエンジンを使ってるEdgeも。

Apple系のOSやSafariは知りません。確認する環境がないので。

 恐らく身長は変わっていないだろう。しかし全身に生えた毛のせいで、かなり丸っこくなっている。腕から肩まわり、そして足の毛は黒。しっぽや胴の大部分は白だ。そして顔は丸い耳と目の周りだけ黒く、その他は白い。


 あー、パンダ、超かわいいなー。



「近づいてもいいか?」


〔かまわん……のじゃ〕



 俺たちが近づくと、ベッドにうずくまるベルガモットは、若干怯えるような仕草を見せる。そんな姿も可愛すぎだろ。そりゃ連日ニュースになるのも納得だ。



「こんな動物、見たことないんだけど?」


「探せばいるかもしれないが、これは熊の仲間だ」


〔白と黒の……(カヒュッ)……まだら模様で、醜い……じゃろ?〕


「なにを言ってるんだ! ベルガモットにしてみれば、忌まわしい体質かもしれん。しかし俺が受ける感情は、そうしたものとは全く違う。なにせ、その姿は愛らしすぎる。このまま俺のものにしてしまいたいくらいだぞ」


〔この姿の時に……(ヒュッ)……プロポーズされても、……困るのじゃ〕



 こらシトラス、俺をかわいそうな目で見るんじゃない。パンダってのは、眠ったり餌を食べるだけでもニュースになる、別格の動物なんだからな。その姿を拝もうとすれば、数時間の入場待ちに耐えねばならない、動物界のアイドルと呼べる存在! 白黒のツートンカラーは、車だろうがスニーカーだろうが、なんでもパンダと呼ばれる程なのじゃ。


 おっと、ベルガモットの口調が感染(うつ)ってしまった。



「なあ、触ってもいいか?」


「貴様! 今のベルガモット様はな――」


〔――(わらわ)の……ことが、気持ち悪くなければ……(ヒュー)……構わんのじゃ〕



 気持ち悪いだと? 俺のモフり欲を最高まで高めてくれるこの姿に、そんな気持ちを(いだ)くなどありえん。とにかく許可は出た。俺はさらに近づき、ベルガモットの頭にそっと触れる。そして首筋から胴体まで、ゆっくりと撫でていく。



「なるほど、体が丸っこくなって見えるのは、やはりこの毛があるからだな」



 うおー、フワフワでさわり心地がいいぞ。以前、俺のギフトで全身が毛だらけになったコンフリーは、純粋にキモいだけだった。しかしベルガモットは、触るだけで愛しさが溢れてくる。一晩中撫でさせてくれないだろうか。というか、むしろ抱いて眠りたい。



「あのさー、苦しそうにしてるんだから、なんとかしてあげなよ。キミはそのつもりで、ここに入ったんでしょ?」


「わかってる。いま準備中だ」


「お前、ベルガモット様に何をするつもりだ」


「決して悪いようにはせん。集中したいから、少し黙っていてくれ」



 軽く魔力を流してみるが、やはり抵抗を受けずに浸透していく。下位四ビット(4bit)が魔法に影響するだろうという、俺の推測は正しかったわけだ。ベルガモットは魔力を持っていない上人だ。



〔体の……奥が、ゾワッと……(ケフッ)……するのじゃ〕


「一時的にだが、俺の力でその状態を抑えてみる。苦しくなったら、すぐ逃げてくれ」



 俺はレベル七十二で覚えた(VARIA(バリア))(BLE(ブル))を使い、ビット操作の範囲を四ビット(4bit)に限定。そしてレベル八十で覚えた(INVE(インバ))(RSE(ース))をギフトにセット。少しづつ反転にかけていく魔力を高める。



「平気か?」


〔体の奥……が、ポカポカするのじゃ〕



 シトラスたちにかけているビット操作と違い、これは相手の体に負担をかけないみたいだ。恐らく無理やりなかった事にするマスキングとは異なり、ビットをひっくり返すだけだからだろう。やはりこの力は使えるな。



「最後の仕上げだ。いくぞ!」



 俺はギフトにかけていた魔力を一気に増やす。俺のギフトで見えている()の文字が薄くなり、逆にゼロ()の文字が濃くなってくる。そして数字が完全に入れ替わると、全身を覆っていた毛がサラサラと消えていく。うーん、ちょっと残念だぞ……



「ベッ、ベルガモット様! そのお姿は」


「息が楽になったのじゃ。それに妾の手が人の形に……」


「えーっと、感動する前に服を着たほうがいいよ。コイツの目は塞いどいてあげるからさ」


「……ふえっ!? みっ、見ないで欲しいのじゃ」



 顔を赤くしたベルガモットが俺から離れた瞬間、再び()の文字がうっすら見えはじめた。しかしそこで視界を塞がれてしまう。



「目の前が真っ暗で何も見えん。俺から離れるとギフトの効果が切れると思うから、さっさと服を着てくれ」



 シトラスのやつ、後ろから俺をガッチリ抱きしめやがって。ほんのりまろやかなものが当たってるんだが、気づいてないのか?


 それにしても契約した当初と比べ、腕や足も柔らかくなったな。しっかり手加減もしてくれているし、このまま黙って目隠しされていよう。



「ふっ、服を着終わったのじゃ」


「よし、すぐ手をつなぐぞ。またあの姿になったら、俺が嬉しいだけだからな」



 やはりビット反転の力は、魔力パスで維持できないらしい。俺と接触した途端、薄く浮き出ていた四つの文字(1111)が消える。相手の負担が少ないぶん、そんな制約があるわけか。論理演算師のギフトも、なかなかユニークな特性を持っているものだ。レベル八十八で発現するはずの力がどうなるか、楽しみにしておこう。



「妾が長年苦しめられてきた体質を改善できるとは、タクトはいったい何者なのじゃ」


「それはちゃんと説明してやる。だがリビングに行ってからだ。まだブラッシングの途中だからな」


「わかったのじゃ」


「姫殿下の素肌を……クッ」



 俺はベルガモットと手をつなぎながら部屋を出る。そんな顔するなよマツリカ、あれは不可抗力だろ。主人が苦しんでいるより、ずっとマシだと思うんだが……



◇◆◇



 リビングに戻ると、心配顔のミントとユーカリが、走り寄ってきた。そして俺の横にいるベルガモットを見て、大きく息を吐く。待たせて悪かったな、二人とも。すぐブラッシングしてやるぞ。



「お元気になられて、よかったのです」


「どうして妾の不調に気づけたのじゃ?」


「ミントの耳が、とても優秀だからだ。集中している時は、かなり遠くの音でも識別できる」



 ドアの前までいかないと気づかなかった喘鳴(ぜんめい)を、ミントは廊下の端から聞き取っている。レベルの上昇で精度も上がり、今では数や大きさまでわかるほど。そのうち自分の発した小さな音がどう反響するかで、周囲の状況を把握できるようになるかもしれん。そこまでいくと音波レーダーだな。



「さすが流星ランクが使役する従人は優秀なのじゃ」


「さっきは中途半端になってしまったが、全員の持つ力はこれから教えてやろう」


「ところで、ベルガモット様の体調不良は、旦那様が治療なされたのですか?」


「まあ、そうだな」


「そうやって手を繋いでるってことは、タクトのギフトなの?」



 肩の上へ戻ってきたジャスミンが、下を覗き込みながら興味深げに尋ねてきた。ビット操作をしてしまった以上、ベルガモットにはちゃんと説明してやらねばならん。皇族ということもあり、口の堅さは問題ないだろうし、色々とぶっちゃけても良いだろう。


 なにより俺はベルガモットのことを、かなり気に入ってしまったのだから……



「実はな、ベルガモット。ここにいるコハクを除いた全員、お前と同じ数字を持っている」


「そっ、それはまことなのか!?」


「俺が使役している従人は、品質二百五十五(1111 1111)だ。もし等級を付けるなら、八等級になる。と言っても、元々十六(1111)だった数値を、俺の力で拡張したのだが」


「数字が同じでも(わらわ)のようには、ならんのじゃな」



「それは出生が違うからだろう。いまのところ上人(じょうじん)特定の( xxxx)支配値(1111 )になった場合のみ、姿形に影響が出るとわかっている」


「……あるじ様が悪者やっつけてくれた、あれのこと?」


「あの時は無理やりだったがな」


「教えて欲しいのじゃ。タクトの持つ力は、いったい何なのじゃ」


「俺が授かったギフトは〝論理演算師〟だ」



 全員で暖炉の前に座り、腹を割って話すことにした。


次回、ベルガモットの口から……

「0149話 爆弾発言」をお楽しみに!

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