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猫に恐怖を抱いた時のお話

作者: きつねあるき

 このお話は、1995年(平成7年)の事で、自分は24才でした。


 その頃は、実家のマンションに住んでいたのですが、(こま)った事がありました。


 マンションの周辺で、野良猫(のらねこ)餌付(えづ)けしている人がいたせいで、短期間でどんどん増えていたのです。


 マンションの前の(せま)い路地は野良猫だらけになり、マンションの入り口に行くには野良猫を追っ払いながらでないと通れなくなりました。


 餌付けしている人を実際に見た事はなかったのですが、近所の人の話では早朝にどこからかやって来ては野良猫に餌付けしているようでした。


 野良猫対策として、マンションの管理人さんが水入りのペットボトルを約1mおきに置いていました。


 すると、マンションの入り口付近にいた野良猫が一時的に減るのですが、いつのまにか水入りのペットボトルが無くなっていました。


 どうやら、野良猫に餌付けしている人が勝手(かって)に回収しているようでした。


 (ひど)い時だと、ペットボトルの水だけ()ててあって、空のペットボトルが狭い路地に散乱(さんらん)している時もありました。


 それを受けて、マンションの管理人さんは、水入りのペットボトルを入り口付近に置いて欲しいと、各階の住人に協力を()びかけました。


 すると、3日後にはマンションの入り口に水入りのペットボトルが並びましたが、それも数日で水だけが捨てられて、空のペットボトルが路地に散乱していました。


 管理人さんはそのいたちごっこに困ってしまい、水入りのペットボトルを置くのをやむなく禁止にしました。


 すると、再び何匹もの野良猫がマンションの1F部分を闊歩(かっぽ)する事になり、1Fの住人はベランダの中に野良猫が頻繁(ひんぱん)侵入(しんにゅう)して来るので、多くの方がすぐに引っ越して行きました。


 この頃になると、野良猫がマンションの周りに何匹いたか分かりませんでしたが、とにかく糞害(ふんがい)が酷かったのです。


 管理人さんは、いつもバケツと小さいシャベルを2本持って歩いていました。


 マンションの周辺に野良猫の糞があると、すぐに銀蝿(ぎんばえ)(たか)ってしまうので、管理人さんは小さいシャベルを2本使ってすくい取り、バケツに何十個も回収していました。


 その後に管理人さんは、糞の(あと)入念(にゅうねん)にデッキブラシで水洗いしていました。


 それが毎日の事だったので、管理人さんには本当に頭が上がりませんでした。


 管理人さんとマンションの住人が次にとった対策は、超音波(ちょうおんぱ)で追い払う動物撃退器(げきたいき)を2台入り口付近に設置(せっち)した事でした。


 野良猫が寄ってくると、感知して超音波で撃退する製品なのですが、水入りのペットボトルよりは効果がありました。


 ただ、耳の悪い年寄りの猫には効果が(うす)く、防水とは書いてありましたが大雨が降ると動物撃退器に水が入ってしまい、それで1台目が(こわ)れてしまいました。


 2台目はそこそこ持ち(こた)えていましたが、動物撃退器は何ヶ月かおきに電池交換が必要になるので経費が掛かる事と、誰が電池交換をするのかが課題でした。


 猫除(ねこよ)けの薬を()いたりもしましたが、雨が降ってしまうと薬が流れてしまい、効果はいまひとつでした。


 自分は、水入りのペットボトルを置く時は協力していましたが、程なくして空のペットボトルが散乱していたので(むな)しさを感じていました。


 マンション周辺の野良猫問題があった頃、自分は転職先に勤めたばかりでした。


 異業種への転職だったので、上司は足元を見てろくに教えてくれませんでした。


 この当時の自分は、会社でのストレスを発散(はっさん)する為、お持ち帰りで買った食べ物を野外で食べる事に喜びを感じていました。


 会社勤めを終えて、実家のマンションに帰る時にお腹が減っていたので、駅前から近い範囲(はんい)でファーストフード、パン、おにぎり、和菓子のいずれかを持ち帰りにして途中で食べていました。


 公園で食べる事が多かったのですが、駅前で食べたり道を歩きながら食べたりと、とにかく野外ならどこでも良かったのです。


 ある日の事です。


 いつもの公園に行ってクリームパンを食べようと思ったら、そこで中学生位の4人組が警察官(けいさつかん)補導(ほどう)されていたのです。


 自分はその件とは全く関係なかったのですが、公園の横でパトカーの回転灯がちらついていたので、どうもそこで食べる気がしなくて、仕方なく実家のマンションに帰りました。


 その時、自分はこう思いました。


「帰ってから家族と夕飯なのに、食卓でこのパンを食べていたら気まずいな…」


 そこで、マンションの非常階段の1階~2階の間で、買ってきたパンを立ち食いで食べる事にしました。


 袋を(やぶ)ってパンを半分位食べたところで、野良猫が1匹こちらに寄ってきました。


 それを見て不快に思ったので、即刻(そっこく)野良猫を追っ払って押し込むようにしてパンを半分食べたのです。


 そして、残り半分のパンを食べようとした途端(とたん)に、さっきの野良猫を含めた何匹もの野良猫が、


「ミャー、ミャー」


 と鳴いて、こっちに向かってくるではありませんか!


 そして、自分の残りのパンに向かって、


「シャッ~」


 と、いった声を上げながら、飛び掛かってきたのです!


 自分は(おどろ)いて食べかけのパンを落としてしまいました…。


 すると、すぐ近くにいた野良猫がパンを持ち去っていきました。


「カチン!」


 ときたものの、野良猫がパンを(うば)っていったから、もうこれ以上の事はないだろうと思っていたら、パンにありつけなかった残りの10匹位の野良猫が、


「ギッー、ギッー!」


 という声を上げて、自分ににじり寄って来ました。


 自分は、恐怖(きょうふ)(おぼ)えて(もう)ダッシュで非常階段を()け上りました。


 2F、3Fと上るにつれて、野良猫の鳴き声が小さくなったので、4Fの(おど)り場で()り返りました。


 すると、4Fに向かってもの(すご)(いきお)いで駆け上がってくる野良猫が見えました。


 自分はもう無我夢中(むがむちゅう)で非常階段を駆け上がりました。


 7Fの実家の前に着くと、急いで解錠(かいじょう)して雪崩(なだれ)式に部屋に入りました。


 そして、速攻(そっこう)施錠(せじょう)しました。


 窓を少し開けると、野良猫の(うな)るような声が(しばら)(ひび)いていました。


 自分は食卓に着いた時に、マンションの1Fで野良猫にパンを奪われて、非常階段で追いかけられた事を話しました。


 すると、母親が次の理事会で、マンションの入り口付近は野良猫に襲われる危険性あるので、飲食禁止にすると言ってくれました。


 それからは、野良猫に追いかけられる事はなくなりましたが、この一件があってから自分はどうも猫が苦手なのです。


 今回のお話は以上になります。


 最後までお読み頂き誠にありがとうございました。

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