紅い筏葛
揺れる白いカーテン
今思い返す
愚かでしかない
彼との恋
彼だけへの乞い
終
憂鬱に溺れ
雨などどうでも良い
同じく哀れな人へ傘を差し出した
哀れな人、それは
差し出した途端
紅く染まり一時立ち止まっていた
奇妙なものだった
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憂鬱をはらす切っ掛けが出来た
憂鬱をはらす――。
彼と出会ったのだ
笑みを零しながら話しかける彼
咲いている筏葛
静寂した木々の間
途端に木霊する蝉の声
堕ちる音がした――。
其れを恋と知るのは間違いだった事
気づかずにいた
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彼との会話
花言葉から始まった
あの時偶然に咲いていた筏葛
深まった仲は砂糖をも溶かす甘さだった
しかし其の甘さは害でしか無かった
自分だけの甘さ――。
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偶然を期待
華を纏い
火の花が舞い落ちる空へ踏み出した
彼と遭遇した
してしまった
彼の声は癒すと同時
何か壊す様な音がした
無数の影に飲み込まれながらも彼しか見えなかった
私の事など目にもない彼しか――。
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色々な風が吹く中
積もった曖を伝えたかった――。
愛と引き換えに聴こえるもの
其れは身が割れる程辛い
聞く事を望んでいる筈の無いものだった
周りなど見えるはずが無い
彼が生きる価値だった世界
もう価値が無くなった
生きる意味など無い世界
何が何だか分からず
腹立つ程に清々しく見守る空を睨みながら
蒼空を飛んだ
最期にまだ想いを伝えながら
目が覚めた
白でしかない孤独な病室
考えたのは彼の事だった
始