表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生アラサー警察官、王子殿下を守ります!  作者: 音威ジュン
第三章 留学生編
84/85

28. 急襲


 屋敷の前でイーストン隊長に声をかけられた私は、

「何故、近衛隊がここにいるのですか?」

 そう問いかけた。

 ウィンスター家の舞踏会には、勿論(もちろん)エディの護衛も何名か来ていた。だが、それよりも人数が多いし、この人数で動けば流石(さすが)に目立つだろう。

「上司からの命令で、我々はこの屋敷の周りに待機していたのです。これからエドワード様の救出に向かいます。シルフィアナ様は安全な場所に避難していて下さい」

 イーストン隊長は私にそう言うが、このまま引き下がる訳にはいかない。

「私も一緒にエドワード様の救出に向かいます」

 そう言うと、

「やはり貴方はそう(おっしゃ)るのですね……。わかりました。では我々と共に来て下さい。ただし決して無理はしないように」

 そう言って私に剣を渡してくれたのだった。

「この剣は?」

「ウェインがエドワード様からお預かりした剣です。シルフィアナ様にお渡しするのがよろしいかと。もし乱闘になった場合、シルフィアナ様も剣が無いと困るでしょう?」

 そう言うという事は、私が参戦するだろうと確信していたのだろう。

「ありがとうございます。では、早速エドワード様を助けに行きましょう。救出計画はどうなっているのですか?」

「二手に分かれて、正面から突入する者と殿下の居る部屋を外から急襲(きゅうしゅう)する者とで救出する予定です。明かりのついている部屋が一つだけありますので、多分その部屋に殿下が連れて行かれたと思われます」

「わかりました。私は外から急襲(きゅうしゅう)する班に加えて頂いてよろしいですか? エディを救出して、私達をこんな目に合わせた者を必ず捕らえてみせますわ!」

 私が力強くそう言うと、

「はは、本当にシルフィアナ様は勇ましいのですね」

 そうイーストン隊長に言われ、

「ええ、私はエドワード様をお守りすると陛下に誓ったのです。その為に剣術や体術の鍛練(たんれん)もしているのですよ。必ず無事に助け出して見せますわ!」

「それは頼もしい。では早速救出に参りましょう」

 そう言ってイーストン隊長は他の隊員に指示を出す。

 イーストン隊長と私とウェイン様、他2名が急襲(きゅうしゅう)班として、外からその部屋に回り込む。

 部屋の中には、エディとストーン侯爵、スコット伯爵、その他4名の見張りがいるが、この人数ならなんとかなるだろう。

 そっと庭から、大きなベランダの窓ガラス越しに中を(うかが)う。

「シルフィアナ様。貴方ならどうやって突入しますか?」

 イーストン隊長はそんな事を私に聞いてきた。

「そうですね。モタモタしていてエディを人質に取られても困りますから、手っ取り早く窓を蹴破(けやぶ)って突入します」

 そう話した私に目を(みは)り、

「シルフィアナ様は、見た目と中身が大いに違うようですね。以前も敵と剣で戦ったとはお聞きしておりましたが、普段お見かけしている時は、もっと大人しくて荒事(あらごと)には無縁のようにお見受けしていました。だが大層(たいそう)男前でいらっしゃるようだ」

 と、とても驚かれた。

「あら、ありがとうございます。褒め言葉と受けとっておきますわ」

 私はそう言ってにっこりと微笑んでおいたのだった。


(にわか)に表側が騒がしくなったのを見計らって、

「さあ、我々も突入といきますよ」

 そうイーストン隊長に言われ、私は力強く(うなず)いたのだった。




 * * *




 エドワード達が居る部屋の外が、何やら騒がしくなった。

「何だ? 何かあったのか?」

 そうストーン侯爵が(いぶか)しんでいると、

「ガシャーン!!」

 と、もの凄い音がしてベランダの大きな窓が勢いよく開いた。

 部屋にいた者はみな驚いてベランダの方を見ると、勢いよく見慣れた騎士服の者達が突入して来る。

 エドワードは、最後に入って来た、この場に似つかわしくない服装の者に目を(みは)る。

「シルフィ!!」

 そう叫んで立ち上がると、

「エディ、ご無事ですか!?」

 そう私も叫んだのだった。



 (またた)く間に、部屋の中で乱闘(らんとう)が始まった。

 隣の部屋に控えていたらしい、敵のお仲間達も出て来ての大乱闘(だいらんとう)だ。

 そんな者達と騎士達が剣を交える。

 私もエディが人質(ひとじち)に取られないように、早くエディの(そば)に行きたいのに、わらわらと敵が私の行く手を(はば)むのだ。

 私はそんな者達にイライラして、容赦なく斬りつけていく。

 私に向かって来る者を、袈裟懸(けさが)けに斬り倒し、(ある)いは剣を持つ()き腕を斬りつけ戦闘不能にする。

「な、何故、近衛がここに居るのだ!」

 そう、ストーン侯爵が叫んだ。

 スコット伯爵は既に騎士の一人と交戦中だ。

「クソ、こうなったら殿下を亡き者に……」

 そう言って立ち上がり、ストーン侯爵は剣を抜いてエドワードに突きつけた。


「ガキーン!」

 金属と金属がぶつかる音が響き、ストーン侯爵の剣が()()けられる。

「ダン!!」

 と、テーブルを踏み締める音と共にテーブルの上に仁王立(におうだ)ちになった私は、ストーン侯爵を上から見下ろし剣を突きつけた。

「エディには指一本触れさせませんわ!」

 そう、いつもより低い声で言い放ったのだった。


 舞踏会用のドレスでテーブルの上に仁王立(におうだ)ちになり、自分に剣を突きつける私を、ストーン侯爵は、まるで亡霊でも見るような目で見上げ、呆然(ぼうぜん)としていた。

「な、何故お前が此処(ここ)にいるのだ……」

 そう(つぶや)いて、わなわな震えているのだった。

 周りで戦っていた騎士達も敵の制圧を終え、ストーン侯爵を取り囲む。

 正面から入った騎士達も、敵を制圧し終え部屋に入るなり、テーブルの上に仁王立ちで剣を突きつけている私を見て、呆気(あっけ)に取られるのだった。




 この屋敷に居た者達は皆捕らえられ、騎士達や屋敷の周りに控えていた警備隊に連行されて行く。

 テーブルの上に立って仁王立ちしていた私も、ストーン侯爵が連行されたので、剣を(さや)に収めると、後ろから声がかかった。

「シルフィ!」

 そう呼ばれ、ドレスの(すそ)をフワリと(ひるがえ)して振り返ると、エディは私を見つめ、

「無事で良かった……」

 そう言って私を抱きしめる。

 テーブルの上に乗った私は、エディよりも少し背が高くなる。そんな私の腰をギュッと抱きしめたエディは、私の肩に顔を(うず)めた。

 エディの吐息が肌に触れ、何だかこそばゆくなる。

 そうしてエディは私の腰を抱いたまま、私を抱き上げてテーブルから下ろしたのだった。

「ひゃあ!?」

 と驚いて、思わずエディにしがみついてしまったが、そっと私を床に下ろすと、エディはあらためて私を抱きしめ、耳元でやさしく、切なげに、

「本当に無事でよかった……」

 と、(ささや)くのだった。

 私もエディの無事を確認し、ホッと気が緩んだところに耳元で(ささや)かれ、思わず力が抜けそうになり、膝がガクッとなってしまった。

 そんな私をエディが抱きとめ、

「おっと、大丈夫か?」

 そう言って、私をサッとお姫様抱っこする。

「だ、大丈夫ですからおろしてください……」

 怪我をしているわけでもないので、さすがに恥ずかしくてそう言うと、

「俺がこうしていたいのだ。しっかり掴まっていてくれ」

 私に顔を寄せてそう言うと、フワリと口づけを落とす。

 周りに近衛隊の騎士達が居るは分かっているので、私はとてつもなく恥ずかしくなって、結局はエディの肩に顔を(うず)めて、真っ赤になった顔を隠すしかなくなってしまったのだった。

 そんな私達を見て、

「こうして見ると、とても大人しくて、(しと)やかにお見えになるのに、先程の、テーブルの上からストーン侯爵に剣を突きつける(さま)は、まるで戦いの女神が舞い降りたようで、思わず見惚(みと)れてしまいましたよ」

 そうイーストン隊長に言われ、余計に恥ずかしくて顔を上げられない。

「ああ、シルフィは俺の女神だからな。シルフィと共にいれば、俺は何者にも負けはしないさ」

 そうエディが破顔する。

 イーストン隊長は、そんな風にとても屈託なく笑うエドワードに驚いて、

(ああ、シルフィアナ様はエドワード様にとって、本当にかけがえのない女神なのだ)

 と、そう思うのだった。




 

いつもお読みいただきありがとうございます。

あと1話で完結です。皆様、最後までお付き合い頂ければ嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ