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転生アラサー警察官、王子殿下を守ります!  作者: 音威ジュン
第一章 暗殺編
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6.試行錯誤

 私は事故から目覚めた後、今の自分の生活に驚愕(きょうがく)してしまった。

 もともと身体が弱かった私を、両親や兄はとても大切にしてくれた。だか今思うとあまりにも大切にし過ぎだろうと思う。

 私自身もそうする事がいいことだと思い、あまり外に出ず部屋で本を読むことが多かった。

 あまり動かないのでお腹も空かない。

 当然のごとく食も細くなり、ますます弱くなっていった。

(なんて細い手足…)

 私は改めて自分の手足をみて(おどろ)いた。

(よくあの階段から落ちて捻挫(ねんざ)で済んだこと…)

 今更(いまさら)ながらに怖くなる。

 犯人を捕まえるのに、これではいけない。

 私は毎晩ベッドの上で、筋トレを始めたのだった。


 さらに筋肉をつけるためには、タンパク質を摂取(せっしゅ)しなければならない。

 だが食の細い私は、メインディッシュにたどり着くころにはお腹が一杯になって、一口食べるのがやっとだった。

(はぁ〜、前世の私ならこんな食事、三人前は食べれるのに)

 そう思いながら、なんとかメインディッシュのタンパク質であるチキンの香草焼きを口に運ぶ。

 なんとしても食べなければ筋肉が付かない。そう思って半分ほど食べたところでギブしてしまった。

 今まであまりに少食だったので、胃が小さくなっているのだ。

 私は、はちきれんばかりのお腹を押さえ、その場に倒れ()したのであった。


「どうしたんだい? なんだか無理をしているように見えるけど…」

 と倒れた私のベッドの横でお兄様が優しく微笑む。

 私はそんなお兄様に

「私は健康になりたいのです。今までのようにすぐに熱を出したり倒れたりしないように、強くなりたいのです」

 と(こぶし)を握り(うった)えた。

「そんなに無理をしなくても、今のままでいいのではないかい?またシルフィが倒れたりするのは見たくないよ」

 とお兄様は優しく私の頭を()でる。

(あ〜、わかってないな。そんなヤワじゃ犯人を逮捕(たいほ)出来ないじゃない)

(それに私はもっと動きたいのよ)

 と心の中で舌打ちするが、このまま引き下がるわけにはいかない。

「私はいずれエドワード様と結婚することになります。そうなったときに、こんなに身体が弱くてはお世継(よつ)ぎを産むことも出来ません。何も取り柄のない私ですが、だからこそ立派なお世継(よつ)ぎを産めるように強い健康な身体になりたいのです。お兄様も協力して下さいませ」

 お兄様を納得させる理由はこれしかない。そう思って私はお兄様の目を真っ直ぐに見て、そうお願いしたのだった。




 あの事故のあと、妹のシルフィは変わった。

 もともとは口数も少なく身体も弱く、いつも(うつむ)いている(はかな)げな少女だった。エディとの婚約も、幼い頃からエディがシルフィのことを好きなのは知っていたし、昔は二人とも仲が良かったから大丈夫だろうと思ったのだが、今はエディを怖がっているようで少し可哀(かわい)そうになるくらいだった。

 その彼女が、エディの世継(よつ)ぎを産みたいと言ったのだ‼︎

 これには(おどろ)いた。エディが聞いたら泣いて喜ぶだろう。

 どういう心境の変化かわからないが、シルフィが覚悟(かくご)を決めたのならば、全面的に協力しようではないか。

 レイモンドはそう決意したが、その協力が思っていた上を(はる)かに超えるものだとは、この時はまだ知る(よし)もなかった。

 

「お兄様、私に剣術を教えていただきたいのですが、よろしいですか」

 シルフィにそう言われ、レイモンドは怪訝(けげん)な顔を彼女に向けた。

「なぜ剣術を?」

「もちろん健康のためですわ」

 そう平然と答えたシルフィに、

「健康のためにする事なら他にあるのでは?」」

 と言ってはみたが、

「私は剣術がやりたいのです。お兄様は協力してくださると言ったではありませんか。約束を反故(ほご)になさるおつもりですか?」

 と詰め寄られ、ぷうと頬を膨らませる可愛い妹には逆えず、渋々承諾(しょうだく)してしまったのだった。


 まずは剣を(かま)えるところから始めなければならないが、模擬戦(もぎせん)で使う刃を(つぶ)した剣を持たせてみる。

「くぅ〜‼︎ 剣てこんなに重いものなの⁉︎」

 シルフィはそう言って剣を持ち上げるが、すぐに剣先が地面に着く。

「だから言っただろう? 剣術は無理じゃないのかい?」

 レイモンドがそう言うと、

「大丈夫よ。私は強くなってみせるわ‼︎」

 と肩で息をしながら言う妹の、目指す方向が間違っているのではないかと、ため息が出るレイモンドであった。


読んでいただいて、ありがとうございます。

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