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転生アラサー警察官、王子殿下を守ります!  作者: 音威ジュン
第一章 暗殺編
5/85

5.捜査と昼食会

2020.10.03. 誤字を修正しました。内容は変わっていないので、よろしくお願いします。

 今更(いまさら)ではあるが、捜査を開始することにした。ただひと月も経ってしまったら、証拠集めも難しいかなとは思ったが、捜査の鉄則は現場100回というではないか、私はとりあえず王宮の階段を一度見て、エドワード殿下と使用人に話を聞くことにした。

 だが何ぶん王宮は勝手に入ることは出来ない。私は婚約者であるエドワード殿下に、お見舞いのお礼に行くという名目で王宮を訪ねることにした。   


 エドワード殿下は学生なので土曜日か日曜日しか空いていないので都合を聞くと、土曜日のお昼に来るように言われ、昼食を一緒に食べようと誘われた。


「エドワード様と昼食かー、今度は二人きりと言うことはないだろうけど、少し憂鬱(ゆううつ)だわ」

 とこぼすとサラが

「もうどんな事があってもお側を離れませんから、安心して下さい」

 と力強く言うので、

「ありがとう、頼りにしているわ」

 と、にっこりと微笑んだ。




 約束の日、エドワード殿下を待たせてはいけないと思い、サラと共に少し早めに王宮に向かった。

 案内をしてくれるメイドの後について、私が落ちた階段を上りながら、何かないかと周囲に目をやるが、さすがに日にちも経っているし、王宮の優秀な使用人によっていつも綺麗(きれい)に保たれているので、何か落ちている様子もなかった。

(やっぱり現場で証拠を見つけるのは難しいか……)

 そうこうしているうちに、いつもの応接室に着いたのだった。

 食事の後にもう一度軽く現場検証をし、使用人に話を聞こうと思っているが、エドワード殿下にも私がどのように発見されたのか、詳しく聞かなければならない。

 せっかくエドワード殿下と食事をするのだ、この際だからいろいろと聞いてみようと思い、考えを巡らせるのだった。


 エドワード殿下には動機がない。と思うが実は何かあるのだろうか?

 私は殺したいと思われるほど(ひど)いことをした覚えもないが、私が殿下を怖がっているのはわかっていると思うので、そんな私と結婚するのがイヤになった?

 あるいは他に好きな人が出来たがすでに私と婚約をしていて、私の家は筆頭公爵家であるためおいそれと婚約解消が出来ない。なので私を亡き者にして、自分の想い人を私の後釜(あとがま)に据えようというつもりでもあるのか?

 だが殿下からなら私との婚約解消も無理な話ではないし、自分の親友の妹を手にかけるというのも考えにくい。

 エドワード殿下が私を殺すメリットが浮かばない。

 そんなとりとめもない事を考えていたら、エドワード殿下がやってきた。

「いらっしゃい。よく来てくれた」

 そう言って私の方を一瞬(にら)むように見て席に着いた。以前はこの鋭い眼差(まなざ)しが怖かったのだが、前世の仕事で、ヤンキー兄ちゃんやら街のチンピラやらと、日々(にら)み合い渡り合ってきた私にすれば、17歳のお坊ちゃまの(にら)みなどチョロイものだ。

「お招きありがとうございます」

 私は淑女(しゅくじょ)の礼をして、余裕でランチの席に着いた。


 今日のランチはお兄様とオスカー様も一緒だ。こんな事なら私の親友で、お兄様の婚約者でもあるエミリーを誘えばよかったと思いながら、いやいや今日はランチが目的ではない。事情聴取と現場検証が目的なのだから、私1人の方がいい。そう思いなおすのだった。

 さて、ランチを食べながら、どのように話を持っていこうかと考えていると、視線を感じた。

 いつもの事だが、エドワード殿下とオスカー様が何故か私をジッと観察してくるのだ。

(ひょっとしたらオスカー様はエドワード殿下と共犯か?)

 と思いながら、以前なら視線を感じても絶対目をあわせなかった私は、斜め向かいに座るオスカー様に視線を合わせた。

「ー ‼︎ ー」

 私がこちらを見ないと思っていたのか、私が視線を合わせると(おどろ)いたように目を()らした。

(あら、すぐ目を()らすなんて軟弱なこと)

 そう思いながら、今度はやはり私をガン見するエドワード殿下に目を向ける。

 真正面からエドワード殿下と目を合わせるが、流石(さすが)は殿下、少し(おどろ)いたようだがまだ視線を()らさず私を(にら)んでいる。

 私は(絶対負けませんわよ)という気持ちを込めてニッと口の端を上げて笑ってみせた。

 その私の笑みに(おどろ)いた顔をしたエドワード殿下は、おもむろに下を向いて食事を始めた。

(ふっ、他愛(たあい)もない。私の挑戦的な笑みに恐れをなしたか)

 私は心の中でガッツポーズで(勝ったね)とほくそ笑んでいた。

 しかしよく見ると、何故かエドワード殿下の顔が赤い。(にら)み合いで負けたのがそんなに恥ずかしいのか?

(やはり17歳のお坊ちゃまだな。私に勝とうなど10年早いわ)

 そう思いながら見つめていると、赤くなって恥ずかしそうにしているエドワード殿下の姿に、不覚(ふかく)にも少しだけ可愛いだなどと思ってしまったのだった。


 さあ、私が優位に立ったところで事情聴取の開始だ。

「あの、エドワード様。先日はお見舞いに来ていただきありがとうございました。私が階段から落ちた時も、最初に見つけて下さったのがエドワード様と聞いております。本当にありがとうございました。」

 まずは、お見舞いと助けていただいたお礼を言う。

「私がどのように倒れていたか、その時の様子をお聞かせ頂けますか?」

 私はエドワード殿下を見つめたまま、そう聞いてみた。

 すると、さっきよりさらに(おどろ)いた顔をして、

「君から話しかけてくるなんて珍しいな」

 と私の方を見た。

 何故かエドワード殿下だけでなく、斜め向かいのオスカー様、隣に座っているお兄様まで(おどろ)いている。

(そんなに(おどろ)くこと⁈)

 と思いながら、

「そうですわね。以前の私なら、自分からエドワード様に話しかけることはしませんでしたわね……。私はこの前の事故の時、自分はこのまま死ぬのかもしれないと思いました。その時に思ったのです。人間なんて本当にいつ死ぬかわからない。ならばせっかく生きて目を覚ますことが出来たのだから、今までのように何もせず誰にも関わらずに生きているのは勿体(もったい)ないと。なのでこれからは、人や物事にもっと関わって行こうと思いましたの」

 とにっこりと笑って見せた。

 性格が変わって見えるのは、まあ実のところは前世の記憶を思い出したからなのだが、そんな事を言っても誰も信じないだろう。

 なので、私の性格が変わったのは事故のせいにすることにした。

 実際ウィンスター家では、みなそのような認識だ。

 (しばら)く固まっていたエドワード殿下が、はっと我に返り

「ああ、そうだったのか」

 と言って、それから事故の時の事を話してくれた。



 現場検証と事情聴取を兼ねたエドワード殿下とのランチでは、なんら有益な情報は得られなかった。

 私は殿下たちと一緒に私が落ちた階段を見に行き、使用人たちに少し話を聞いてみたが、私が落ちた瞬間を目撃した者はいなかった。

(まあそういう話が出てなかったので、目撃者はいないのだろうと思ってはいたが、どうしたものかな…)

 防犯カメラでも付いていれば話は早いのだが、この世界にはそんな物はない。

(うーん、私を狙ったのは間違いないはずだから、また私が一人でいれば狙ってくるかな?)

 そうは思ったが、私が一人でいることはなかなかない。

 王宮で一人になるために、もう一度エドワード殿下と二人きりでお茶会でもしてみようか。

 落ちた階段の所でそんなことを考えていたら、鋭い視線を感じハッとした。

 視線の方を見ると、エドワード殿下がまた私を(にら)むように見ていたが、私がさっき感じた視線はもっと遠くからのものだったような気がした。



 エドワードはシルフィに敵意を向ける視線を感じていた。

 ちょうど自分の背中側からだったが、振り向けば敵は気づかれたと思うだろう。

 ちょうどエドワードと向かい合わせで立っていたレイとオスカーも視線を感じたようで、気づかれぬようにそちらを窺っていた。

 シルフィは貧血で倒れて落ちたと言っていたが、レイとオスカーがある人物によって扉から離された時に事故は起きている。

 エドワード、レイモンド、オスカーの三人の見解は、何者かに狙われたのではないかというものだった。

 シルフィにはレイとオスカーが扉を離れた経緯(けいい)は話していないが、こうしていろいろ調べようとしているのは、他者が関わっているとみているからだろう。

 シルフィが狙われるとすれば、エドワードの婚約者の座を狙う者。というか自分の娘をエドワードの婚約者にしたいどこぞの貴族だろう。

 だがそんな貴族は腐るほどいる。

 しかしシルフィの家は王家に次ぐ力を持つ公爵家だ。害をなそうとすれば自身を滅ぼすリスクがある。

 ウィンスター公爵家に対抗できるほどの力のある貴族。それならばある程度は絞れるが、そこまでしてエドワードの婚約者になることにメリットはあるのだろうか?

 だがたとえどんな相手だろうと、俺のシルフィに手を出す者は許さない。

 必ずシルフィを守ってみせよう。エドワードはそう心に誓うのだった。

読んでいただいて、ありがとうございます。

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