23. ロベルトとの接触
休み明け、レオンにはもう一度ロベルトに接触してもらう事になった。
葉巻が気に入ったので、少し融通してほしいとロベルトに頼んでもらい、何処かに隠れて現場を確認する予定だ。
隠れて確認する役を誰がするかでいろいろ揉めたが、何か所かそのベンチが見える場所があったので、分かれて確認することにした。
今度はどういう組み合わせで分かれるかで、またまた揉めたが、結局は私とエディ、お兄様とオスカー様、カールとエミリーとリリア、ルークとロッキー。この4組に分かれて張り込むことになったのだった。
レオンに葉巻を渡してからは、ロベルトが毎日あのベンチに居るのは確認済みだ。レオンが来るのを待っているのだろう。
皆それぞれ他の生徒におかしく思われないように、昼食をテイクアウトして配置に着いた。
私とエディは2人で、中庭のロベルトの居るベンチの、背中合わせのベンチに座ることになっている。
ベンチとベンチの間には垣根があって、お互いの姿は見えないようになっているが、そこは植物なので所々に隙間がある。よく見なければわからないような隙間なので、私とエディはそこから様子を窺うことにしたのだ。
テイクアウトした昼食を持って、2人で中庭に出ようとした時、後ろから声がかかった。
「ごきげんよう、シルフィアナさん。私も昼食をテイクアウトしたので、ご一緒してもよろしいかしら?」
そう声をかけてきたのはバーバラだ。
すかさず私が、
「エドワード様と込み入ったお話がありますので、ご遠慮していただけますかしら」
そう言うと、
「あら、私は気にしないので問題ありませんわ」
とバーバラは意に介さず平然と言うので、
「あなたが良くても、私達が良くないのですわ。もう少し空気を読んで下さらないかしら」
と、ちょっと強めの口調で言ってみたが、バーバラには伝わらなかったようだ。
「私が居ると貴方が引き立て役になるのでイヤなのね? 私が美しいのは仕方がないのですから、もう諦めた方がよろしくってよ」
などとのたまうので、
「どちらが美しいかは関係ありません!」
と言ってはみたが、バーバラは全然人の話を聞いていないのだった。
そんなこんなで、すったもんだしていると、私とエディが配置に着いてからロベルトのところに向かう予定だったレオンが、少し離れたところでどうしたらいいのか困った様子で私達を見ていた。
私はここで時間を食うのはマズイと思い、
「わかりましたわ、バーバラさん。一緒にお昼を食べましょう。そのかわり、大きな声は出さないようにして下さいね。よろしくって?」
そう言ってバーバラの手を引いてベンチに向かうが、道すがらエディが私に、
「おい、バーバラも連れて行って大丈夫なのか?」
と、小声で言う。
「あのままあそこで時間を取られると予定が狂いますわ。もともとベンチで昼食をとっているだけと思わせなければならないのですから、大声で話さなければなんとかなりますわ」
と、エディにだけ聞こえるように、なかばヤケクソでそう言う私に、
「わかった。君と話すときは耳元で話すようにしよう」
エディはニヤリと笑って私にそう言う。耳元で話されると私は平静でいられなくなるので、
「み、耳元で話すのはやめてください。顔を寄せるくらいで大丈夫ですから」
と、焦ってお願いするのだが、自分の顔が赤くなっているのがわかってしまうのだった。
ベンチに着いて3人で座ったが、結局エディを挟んで私とバーバラが両隣に座ることになり、去年のピクニックを思い起こさせる事になったのだった。
私は、どうしたものかと思いながらも、レオンが昼食を持って背中側のベンチに向かうのをしっかり確認し、エディに小声で伝えたのだった。
私が座った場所からは、垣根の隙間からロベルトが見える。
「エディ、レオンがホシと接触しました」
とエディに顔を寄せ、小声でそう言った私に、
「ホシ?」
と、エディの疑問の声。
(しまった、つい前世の職業柄、この言い方が出てしまった)
そう思ったが、
「バーバラさんが居るので名前を出すのはまずいでしょ? ホシと呼ぶことにしましょう」
と私はなんとか誤魔化したのだった。
結局、私とエディが顔を寄せてヒソヒソ話すことになり、そうなるとバーバラは面白くないわけで、
「私も混ぜてくださるかしら?」
と、私達の所に顔を突っ込んでくるのだった。
ここでもあーだこーだやっていると、ロベルトとレオンの様子が見られなくなるので、仕方なくバーバラも交えて3人で、顔を寄せ合ってお昼を食べながら、ヒソヒソと話をするわけだが、私はロベルトとレオンの様子を窺っているので、あまり喋らずにいると、なぜかバーバラが、
「シルフィアナさん、今日は大人しいのですわね? どこか具合でも悪いのかしら?」
と、私に言ってくる。私は話半分で、
「ええ、まあ……」
と、テキトーに相槌を打ったら、
「なんですって? それを早くいいなさい! さ、医務室に行くわよ!」
と、私の手をグイっと引っ張るので、私は慌てて、
「ああ、ごめんなさい。大丈夫よ、具合は悪くないわ。さっきは適当に返事をしてしまっただけよ」
そう言ったが、
「何を言ってるのよ。お昼だってほとんど食べていないじゃない。ほら、医務室に行くわよ!」
と、大きな声で言い放ち、私を立たせるものだから、多分ロベルトにも気付かれただろう。このままここに居るのは得策ではないなと判断した私は、
「わかったわ。医務室に行きましょう」
と、大きなため息をついたのだった。
エディも私の意図を察してくれたようでバーバラに、
「俺が連れて行くから大丈夫だ。バーバラは昼食を持ってついてきてくれ」
と、私を抱き上げるから、
(ひゃー! これめっちゃ恥ずかしいのですけどー!)
そう思い、エディに、
「あの……、私、自分で歩けますから、おろしてください……」
小声でそう言うと、
「具合が悪いのだろう? 遠慮するな」
と、笑いを堪えた顔で私を見てそう言うから、私が元気なのはわかっているのだろう。医務室に行くと言った手前、元気なのもおかしいので、エディのお姫様抱っこで医務室に行くことにしたが、真っ赤になった顔をエディにしがみついて隠すほかないのであった。
その様子をそれぞれの持ち場で見ていた皆が、何事が起こったのかと医務室に集まってきたのだった。
「シルフィ、どうしたんだ?」
「シルフィ、大丈夫?」
「シルフィ、大丈夫か?」
「シルフィ様、大丈夫ですか?」
皆それぞれに口走りながら医務室に入って来る。
バーバラが一緒なのは、皆持ち場から見ていたので知っていたが、バーバラに何かされたのかと思い、エミリーが、
「バーバラさん、シルフィに何をしたのかしら?」
と詰め寄ると、
「あら、失礼ね! 私は何もしていないわよ! シルフィアナさんが具合が悪いと言うので、医務室に連れて来てさしあげたのですわ。ねぇ、シルフィアナさん」
そう私に話を振るので、
「ええ、そうなの。たいしたことはなかったのだけど、医務室に行った方ががいいと、バーバラさんが言うものだから……」
と、みんなの方を向いてそう言うと、
「おわかりになったかしら? シルフィアナさんは私のライバルですから、元気でいてもらわないと張り合いがないでしょう?」
と訳の分からない事を言うが、以前から訳のわからない事ばかりしているので、皆、「あー、はいはい」と言う感じで聞いているのだった。
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