13. 事件勃発
エディのダンス待ちの最後のご令嬢が、例のバーバラ嬢だった。
ダンスが終わってその場を離れようとしたエディに、
「エドワード様、もう一曲踊っていただけませんか?」
と離そうとしたエディの手を両手で握り、そう言ってエディを見つめるが、
「シルフィ以外とは一曲しか踊らないことにしている。手を離してもらおうか」
そうエディが氷の眼差しで冷たく言うと、一瞬怯んだが、
「私とだってもう一曲踊ってくださってもいいじゃないですか」
とバーバラ嬢は、今度は怒ったようにエディを見上げて言う。
「私は踊らないと言ったはずだが。無様に振りほどかれたくなければ、その手をさっさと離すんだな」
さらに鋭い眼差しで、バーバラにそう告げた時、すぐ横でシルフィの声がしたのだった。
私は先ほど教えてもらったピーターを見ていたが、ダンスの曲が終わると同時にピーターが動きだした。
私は咄嗟にエディの方に歩き出す。突然歩き出した私にエミリーが、
「シルフィ、どうしたの?」
と驚いて声をかけてきたので、
「ピーター先輩が動きだしたの。エディのところに行ってくるわ」
そう言って足早に歩いて行くと、エミリーとリリアとウェイン様も一緒についてくる。
ピーターは確実にエディに向かって歩いていた。
私はピーターよりも少し早くエディのところに着いて、
「エディ、ピーター先輩がこちらに向かっています」
と、バーバラ嬢と話していたエディに告げたのだった。
幾らか遅れてエディのところに着いたピーターは、ギラギラとした目をエディに向けて、
「お前は誰だ。この悪魔め! 正体を現せ!」
そう、叫んだかと思うや否や、剣をエディに突きつける。
私は咄嗟に腰の剣を抜き、ピーターの剣を弾くように退け、真っ直ぐに剣を突きつけた。
「無礼者! 王子殿下に剣を向けるとは何事ですか!」
私はそう叫んでエディを背にピーターと向かい合う。
周りに護衛と警備の者達が集まってきた。
「お前はなんだ? お前も悪魔の仲間か? そこをどけ!」
とピーターが叫んで私に斬りかかろうとしたが、動く間もなく王宮警備隊の者に取り押さえられる。
「離せ! 離せ! あいつを殺さなければこの国は滅びるんだ!」
そう言いながら暴れると、普通ならそう簡単に振りほどけない、屈強な王宮警備隊の者の手を振りほどき、私に向かって剣を振り下ろす。
私はその剣を弾きながら、違和感を感じていた。
見た目はひょろりとして、さほど力もなさそうなピーターが、屈強な王宮警備隊の者の手を振りほどく。私が受けた彼の剣も、技術は無いが力はもの凄く強い。そのアンバランスさも違和感を感じるが、やはり彼の目と言動だ。目は見開かれ血走っていて、悪魔などと叫んでいるのは、何か現実ではないものを見ているようだ。
「キン! キィン!」
何度かピーターと剣を交え解った事は、ピーターは、剣術はあまり得意ではないのか、私が剣を弾いた後、次の手を出すまでにタイムラグがあることだ。
「はぁーっ!」
私はその隙を狙って、彼の側頭部に回し蹴りを決めた。
「ぐがっ!」
そう呻き声をあげ倒れたピーターから目を離さずに、彼に向かって剣を構える。
エディもバーバラ嬢の手を振りほどき、剣を抜いて私の隣に立った。
普通なら、あの回し蹴りで気を失うはずだが、彼は頭を振りながら起きあがろうと上半身を起こす。
さすがに王宮警備隊の者達も黙って見ているわけにはいかないので、5人がかりで取り押さえたのだった。
私はピーターが何か訳の分からないことを叫びながら、連行されて行くのを見送りながら、剣を鞘に収めエディの方に向き直った。
「エディ、大丈夫ですか?」
私がそう言うと、エディも剣を鞘に収め、
「ああ、大丈夫だ。君が来てくれなければ、ピーターに気づくのが遅れるところだった。ありがとう」
そう言って私を抱きしめる。私は、
「何事もなくてよかったです。でもピーター先輩の様子は尋常ではありませんでしたね。何かありそうな気がしますが……」
と私が言うと、
「ああ、何か裏がありそうだ。いろいろ調べる必要がありそうだな」
そうエディに抱きしめられながら話していると、隣にいたバーバラ嬢に、ジト目で睨まれたのだった。
招待客は皆、私達を取り囲むように呆然と見ていたが、その中にいたエミリーたちのお父様である、アンダーソン総師団長閣下が、
「本当にベアトリス妃の再来だな」
と、呟くのを聞いた周りの人達が、
「そうだ、ベアトリス妃の再来だ」
と、口々に言い始め、歓声をあげ始めたのだった。私は、
(うわー、なんだか恥ずかしいぞ。これ、どうしたらいいのー?)
と心の中で頭をかかえたが、なんとかこれを収めなければと、出来るだけ優雅に淑女の礼をすると、さらにワーッと拍手が沸き起こるのだった。
その拍手が少し収まったのを見計らってエディが、
「皆の者には驚かせてしまったな。まだ舞踏会は続いている、引き続きゆっくりと楽しんでいってくれ」
そう周囲の招待客たちに言うと、皆、三々五々に話し始めたり、ダンスを踊ったり、再び舞踏会を楽しみはじめたのだった。
この騒ぎがひと段落した後、ウェイン様が、
「エドワード殿下、お怪我はありませんか?」
と話しかけてきたので、エディが、
「ああ大丈夫だ、シルフィのおかげで大事に至らなかった」
と私の肩を抱いてそう告げると、
「シルフィアナ様は本当に剣をお使いになるのですね。驚きました」
とウェイン様が言う。私は、
「私が一番エドワード様のお傍にいることが多いですからね。私がエドワード様をお守り出来るのが一番ですから」
そう言うと、今のを見ていたリリアが、
「シルフィ様、カッコイイです!」
と目をハートにして私を見ている。エミリーも、
「シルフィ、凄いわね。あなたの剣技と体術は初めて見たわ」
とそれぞれに言われ、
「ありがとう、でもそれほど何もしていないわよ」
そう言いながらも、ピーターを確認するのが遅かったら、どうなっていたかと、背筋が冷たくなるのだった。
その後の舞踏会は何事もなく過ぎたが、何故かエディが私の腰を抱いて、ぴったりとくっついて離れないのと、そんなエディに話しかけようとして、ことごとく避けられるバーバラ嬢とのイタチごっこに終始したのだった。
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活動報告に小話を載せましたので、お時間がありましたら、読んでみてくださいね。




