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転生アラサー警察官、王子殿下を守ります!  作者: 音威ジュン
第二章 夢見草編
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5. もう1人の生徒会役員


「おはようございます」

 と私が教室に入ると、皆挨拶を返してくれる。

 教室に入った私を見てクラスメイトが、

「今日は三つ編みにしていらっしゃるのですね。とてもお似合いになりますわ」

 と()めてくれる。

 今日の髪型は二つに分けてゆるく三つ編みにした、いわゆるお()げだ。

 この学園は、制服は決まっているが、髪型は品位を損なわなければ自由なのだ。


 制服は、男子はダークグリーンのブレザーにベスト、白いワイシャツ、グレーのズボンで、女子はダークグリーンのワンピースにボレロで、(えり)(そで)の折り返しがグレーになっている。丈は(くるぶし)より少し上で、前世でいうところのロング丈だ。


 こちらの世界では、女性が脚を出すような短い丈の服装はなく、舞踏会などのドレスは(くるぶし)が隠れる長さから床スレスレの長さのマキシ丈で、普段着は少し動きやすさを考えて、(くるぶし)の上くらいのロング丈か、(ひざ)(くるぶし)の中間くらいのミモレ丈だ。平民などは動きやすいようにとミモレ丈が多い。

 制服はミモレ丈の方が動きやすいのだろうが、舞踏会などでドレスを着る機会も多いので、ドレスでの()居振(いふ)()いに慣れるようにとロング丈になっている。

 男子はネクタイ、女子はリボンを結ぶが、その色は学年ごとに色分けされていて、1年はえんじ色で、2年がダークグリーン、3年がグレーになっている。




 教室に入ってすぐに、私はリリア嬢に声をかけてみた。

「リリアさん、今日、生徒会の方々とお昼をご一緒するのですが、リリアさんも一緒にどうかしら」

 私がそう言うと、

「え、えーと、わ、私などシルフィアナ様とご一緒なんて、お、(おそ)れ多くてご一緒できません……」

 と、オドオドした様子で答える。

「あら、一緒に生徒会役員をする仲間ですもの、仲良くしましょう。リリアさんがお嫌ならば、無理にとはいいませんけど、どうかしら?」

 と私が言うと、

「べ、べつに嫌というわけでは……」

 とオロオロしている。

「嫌ではないのなら、一緒に食べましょう。約束よ」

 と言って私は自分の席に戻った。

 ルークは私が話している途中で入って来たのでわかっているだろう。

 ちょうどエミリーとカールが入って来たので、リリア嬢を誘った事を話しておいた。


 エミリーが私の髪型を見て、

「シルフィが三つ編みなんて珍しいわね」

 と言う。

「ずっと髪はおろしていたけど邪魔になるし、たまには三つ編みもいいかしらと思って。でも三つ編みって変かしら?」

 私がそう言うと、

「全然変じゃないわ。私も三つ編みにしようかしら」

 とエミリーが言うので、

「そう言うと思って、エミリーの分のリボンも持ってきたの。私が三つ編みにしてあげるわ」

 と言って、ささっと髪を二つに分けて三つ編みにする。

 私は(そば)にいたカールの方を見て、

「カールも三つ編みにしましょう。3人お(そろ)いで、三つ子みたいでいいでしょう」

 と言うと、

「それは勘弁(かんべん)してくれ!」

 と脱兎(だっと)のごとく逃げるのだった。

 カールはいつも長い髪を後ろで一つに束ねているのだから、三つ編みだってたいして変わらない。髪をおろせば顔はエミリーとそっくりなのだから、絶対三つ編みが似合うと思うのに、残念だ。

 そんなことをしていると、朝のHRの時間になってしまった。

 昨日、エディが言っていた通り、担任の先生から、生徒会役員は放課後、生徒会室に行くようにと言われたのだった。




 午前中の授業が終わると、またエディ達が教室まで迎えに来た。

 私はリリア嬢を連れて入り口に向かう。

 昨日お兄様に、エディとオスカー様に話しておいてもらうように頼んでおいたので、3人にリリア嬢を紹介する。

「こちらは一緒に生徒会役員をするリリア・バーグマン伯爵令嬢です。よろしくお願いいたしますわ」

 私がそう紹介すると、リリア嬢が慌てて、

「バーグマン伯爵家長女、リリア・バーグマンです。よろしくお願いします」

 と挨拶する。

 エディ達はそれぞれ、

『ああ、よろしく』

 と挨拶を返した。

 リリア嬢が、

「わ、私なんかが、王子殿下とご一緒して、よろしいのですか?」

 と狼狽(うろた)えている。

 アイスドールと言われる、冷徹な王子殿下だ。怖がるのも無理はない。

「リリアも生徒会役員だからな。これからよろしく頼む」

 と、いつもの無表情に鋭い視線で言うものだから、リリア嬢はカチコチに凍りついている。

 私はリリア嬢の隣で、

「エドワード様は、見た目ほど怖くないから大丈夫よ」

 と教えてあげたが、すぐには納得できないようだった。


 今にも逃げ出しそうなリリア嬢を、私とエミリーで両側から挟んで食堂まで連れて行き、席に着かせると(あきら)めたようで、周りにいる錚々(そうそう)たるメンバーを(なが)めてため息をつくのだった。




 リリアは、自分がとんでもない所にいるのではないかと、恐ろしくなった。

 普段なら自分のような田舎の伯爵令嬢など、話をすることなど一生ないであろう、雲の上のような人達だ。そんな人達に混ざって昼食を食べている。

 自分はマナー違反をしていないか、失礼はしていないかと、そればかり気になって、折角(せっかく)の美味しい昼食の味が全くしなかった。


 こんなことなら、入学試験をあんなに頑張らなければよかったと後悔した。

 実は昨日の放課後も、生徒会に入りたかった令嬢数人から、いろいろ嫌味を言われたのだ。

 リリアは、今年の春に学園を卒業した兄から、生徒会に入れば卒業後の進路が希望通りに通りやすいと聞いていた。

 兄は次男で、長男が家を継いでいるので、騎士団に入りたいと言っていた。兄はもともと剣術が得意だったし、生徒会に入っていたということもあって、割とすんなり騎士団に入隊出来たようだ。

 自分はあまり器量(きりょう)も良くないし、田舎の伯爵令嬢になど良い縁談もないだろうと言われていた。

 あまり変な人のところにはお嫁に行きたくないし、どこかの研究機関にでも入って、研究者になるつもりでいたので、生徒会に入れるように頑張ったわけだが……。

 こんなとんでもないことになろうとは、思ってもみなかったのである。

 周りで昼食を一緒に食べている人たちが、キラキラして(まぶ)しくて、自分は場違いな所に来てしまったと、1人落ち込んでしまうリリアだった。

読んで頂き、ありがとうございます。

ちょっとした小話を、活動報告に載せようと思っていますので、お時間がある時にでも読んでみてください。

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