3.エドワードのお茶会
2020.09.27. 冒頭の部分だけ一人称になっていると、ご指摘があり、修正しました。内容は変わっていませんので、よろしくお願いします。
エドワード・アルスメリアはこのアルスメリア王国の第一王子だ。
第一王子と言っても兄弟はいないので王子はエドワードしかいない。
側近で親友のレイモンドとオスカーは幼なじみだ。レイモンドの妹のシルフィとは、エドワードが15歳になってすぐに婚約した。
オスカーにはシルフィと同い年の双子の弟妹がいる。カールとエミリーで、エミリーはレイモンドの婚約者だ。
エドワードはある時から笑うのをやめた。何事にも心を動かされることなく、何事にも動じないように。まわりの者にも常に厳しく接するようになった。
昔から仲の良かったレイとオスカーにも同じように接したが、彼等はそれでもエドワードから離れることはなく、側でエドワードを支えてくれる。
エドワードの本心や本質をわかってくれているので、エドワードも二人には心を許している。
この二人以外はエドワードの厳しさや冷徹さに、恐れをなして距離を置いて接するようになった。
エドワードはシルフィにも、婚約する前から距離を置いて接していたので、笑わないエドワードのことを怖がっているようだった。
エドワードはシルフィが嫌いな訳ではない。いや、昔からシルフィのことは大好きで、とても大切に思っている。だが目つきの悪いエドワードとは目を合わせないし、自分から話しかけてくることもなかった。
そんな風にエドワードを怖がっているので、エドワードから話しかけたり近づいたりするのも躊躇われるのだった。
あの日、せっかくレイとオスカーが、婚約者同士たまには二人で過ごすといいと言って、気を利かせてくれたのに、怖がっているシルフィを見ると、何を話せばいいのかわからなくなる。
なのに、あまりにもシルフィが可愛くて目が離せない。
「君も来年は学園に入学だな、準備は進んでいるか?」
そう話すと、消え入りそうな声で
「はい」
とだけ答える。
この儚げな少女を守ってあげたい。エドワードは昔からそう思っていた。エドワードを怖がりながらも取り入ろうと媚を売る他の令嬢と違い、その後ろで控えめに佇んでいる、そんな姿がとても愛らしかった。
「体調はいいのか? 君は身体が弱いから気をつけないといけないからな」
エドワードの話す声や話し方が冷たく感じるのか、はたまたエドワードがシルフィを見つめるのが睨んでいるように見えるのか、彼女はビクっと体を震わせた。
「はい、大丈夫です」
とまた消え入りそうな声で俯いて答える。
結局ほとんど話もせずに、二人でお茶を飲んで過ごしただけになってしまったが、エドワードはシルフィと一緒に居るだけで満足だった。
お茶会が終了し、部屋の外で待機しているであろうレイかオスカーがシルフィを送るものと思い、エドワードは一人部屋に残りシルフィの事を考えていた。
そんな時に廊下から悲鳴が聞こえ、慌てて部屋から飛び出した。
シルフィの姿は廊下には見当たらない。階段の方に走ると、階下にシルフィが倒れている。
エドワードは自分の血の気が引いていくのを感じて息を飲んだ。
(いったい何が起こったのだ⁈)
「シルフィ‼︎」
そう叫んでエドワードは階段を飛び降りるようにして、シルフィの側に駆け寄る。
「おい、しっかりしろ! 何があった?」
そう呼びかけても返事はない。
シルフィの顔に頬を近づけ、息のあるのを確認してホッと胸をなでおろしたが、意識を失っているので王宮の医務室に運ぼうと、抱き上げ歩き出したところで、レイとオスカーが駆けつけてきた。
彼らはある人物から呼び出され、部屋の前を離れたのだと教えてくれた。
読んでいただいて、ありがとうございます。
更新が夜中から朝方になりつつあります。
朝起きれるかな…