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転生アラサー警察官、王子殿下を守ります!  作者: 音威ジュン
第一章 暗殺編
21/85

21.舞踏会、再び

2020.10.03. 誤字脱字を修正しました。内容は変わっていないので、よろしくお願いします。


 エミリーとカールの三人で恋バナ?をしていたら、お兄様が帰って来た。また、オスカー様とエディも一緒だ。

 私は今朝も言ったが、もう一度エディにお礼を言った。

「エディ、王宮で療養(りょうよう)させていただいて、本当にありがとうございました」

 そう言って頭を下げると、

「いや、気にすることはない。俺が心配でそばに置いておきたかっただけだから」

 そう言いつつ顔が赤い。エディと呼ばれて照れているようだ。

「それより体調はどうだ?もう具合は悪くないのか?」

 そう言われ、

「ありがとうございます。もう大丈夫ですわ」

 私はそう答えた。

「では、来週の舞踏会は出られそうか?無理をしてまた倒れるといけないから、欠席にしてもかまわないが」

 そうエディに言われたが、

「私はもう大丈夫ですわ。もし途中で体調が悪くなるようなら、早めに帰りますから」

 そう言うと、

「その時はちゃんと俺に言うように。屋敷まで俺が送って行くからな」

 そう言われ、やっぱりエディは優しいなと思うのだった。

 ただ、この優しさはシルフィに対してだけだとは、シルフィは知らずにいるのだった。


 今度の舞踏会はウィンスター家の親戚(しんせき)(すじ)のジョンソン侯爵家だ。お父様の妹の嫁ぎ先である。

 当然、従兄弟(いとこ)たちがいる。

 長男ナッシュは19歳で、今年学園を卒業し、父親の仕事を手伝っている。

 次男ルークは14歳で、私と同い年。

 二人とも、私達兄妹と同じ黄色がかった茶色い髪と瞳をしている。髪は伸ばして後ろで束ねている。

 この二人の従兄弟(いとこ)は、私をからかっているのか本気なのかわからないが、いつも私を口説(くど)いてくるのだ。

 以前の私はあしらい方もわからず、ただ(だま)って(うつむ)くしかなかったので、この従兄弟(いとこ)達が苦手だった。




   〜〜〜〜〜〜〜〜




 舞踏会当日、今回もエディが迎えに来てくれた。

 私はオレンジの生地のドレスの上に、白いシフォンの透ける生地が重ねてあるドレスで、白いシフォンのおかげでオレンジの派手さが和らいで、清楚(せいそ)可愛(かわい)らしい雰囲気(ふんいき)(かも)し出している。

 アクセサリーはエディの瞳の色のような、紫のアメジストのネックレスとイヤリング。

 髪もドレスと同じリボンでハーフアップに結って、花を飾っている。

 エディは白が基調のタキシードで、ネクタイのタイピンとカフスは、私のアクセサリーと同じアメジスト。ポケットチーフは私のドレスと共布(ともぬの)でお(そろ)いにした。タキシードの(えり)()した花は私の髪に飾られた花と同じである。花はエディが用意してくれたものだ。



 エディのエスコートで入り口に入ると、ジョンソン侯爵夫妻が出迎えてくれた。

「エドワード殿下、よくお越し下さいました。シルフィもよく来てくれたね」

 と挨拶され、

「お招きいただきありがとうございます」

 と二人で挨拶を返すと、

「シルフィが舞踏会に顔を出すなんて珍しいな。身体は大丈夫なのかい?」

 と聞かれた。

 今まで王宮の舞踏会にしか出ていなかったのだから、叔父(おじ)様が(おどろ)くのも無理はない。私は、

「はい、身体も以前よりは丈夫になりました。来春は学園に入学ですので少しは社交に()れておかなければと思いまして、今頃(あわ)てて舞踏会に参加させていただいている次第(しだい)ですわ」

 と言うと、

「そうか、では殿下共々ゆっくり楽しんでいってくれ」

 そう挨拶を交わしホールに入ると、(またた)く間にエディに挨拶をしようとする人たちに囲まれてしまった。



 次々と挨拶を交わしていくと、王弟の長男ジェームズ様が挨拶に来た。

 エディの従兄(いとこ)であるジェームズ様は、エディより二つ年上だ。エディと同じ金髪だが、瞳の色は青で髪は短い。いつも笑顔を絶やさない人だが、私はこの笑顔を見ると、いつも背筋がゾワリとするのだった。


「お久しぶりです。エドワード殿下、シルフィアナ嬢。シルフィアナ嬢がご一緒なんて珍しいですね」

 とジェームズ様に言われ、先程(さきほど)から何度も同じ説明をしていたので、少々うんざりしていたが、私が話そうと口を開くより早くエディが、

「ああ、来春は学園に入学だから、そろそろ社交にも()れてもらおうと、私のお供をしてもらっているのですよ」

 と言って私の腰を抱いた。

「そうですか。いつまでも身体が弱いなどと言っていては、王子妃の務めも果たせないでしょうからね」

 と、ちょっと嫌味(いやみ)ともとれる物言(ものい)いだ。

 なんだか二人の間に冷たい風が吹いているような気がしたが、私は、

「ご心配ありがとうございます。私も弱いままではいけないと、日々身体を(きた)えております。まだまだですが少しずつでも健康になれるように頑張りますわ」

 と言って、ジェームズ様に笑顔を向けると、

「そうですか。では期待していましょう」  

 と言って、私達の前から立ち去った。

 王宮の舞踏会で挨拶をする時は、()たり(さわ)りのない挨拶しかしたことがないが、今日のように嫌味(いやみ)を言われるなんて、私はジェームズ様に何か(きら)われるようなことをしたかしら?と考えていると、

「あいつのことは気にしなくていいからな」

 とエディが私をさらに引き寄せ、顔を近づけて話すから、びっくりして顔が赤くなる。

 そんな時に、ジョンソン家のナッシュとルークの兄弟が挨拶にやって来た。

 いつもの挨拶を交わし、ナッシュが私の顔を見て、

「シルフィ、顔が赤いようだが大丈夫か?熱でもあるんじゃないのか?」

 と言って私のおでこに()れようとするから、エディがその手を払いのけ、

「大丈夫、熱はないよ。私が付いているから心配ない」

 と凍るような声で言うものだから、辺りにブリザードが吹き荒れる。

 ナッシュは何故(なぜ)かエディと(にら)み合っているように見えるが、以前に私を口説(くど)いていたのは本気だったということか? それにしても、私はもう正式にエディの婚約者だ。その婚約者に横恋慕(よこれんぼ)などあり得ないだろう。いったいどういうつもりなのか。

 そう思っていると今度はルークが、

「そんな顔をされるとシルフィが(こわ)がりますよ」

 とエディに言ってくる。私は、

(これはどういう状況?なんでこんなことになってるの?王子殿下にその言いようはないでしょう?これは不敬(ふけい)(ざい)に問われても文句は言えない状況だわ)

 そう考え(あわ)てて、

「ナッシュもルークもどうしたの?何を言っているの?私は大丈夫よ!」

 と言うと、ルークが、

「本当に? 今度は青い顔をしているよ。シルフィは身体が弱いから、無理をしているんじゃないか?」

 と言ってくる。

(顔が青いのは、あなた達のせいでしょー‼︎)

 と大きな声で叫びたい気持ちだ。

 エディが怒っていたらどうしようと、それこそ蒼白(そうはく)になってエディの顔を見ると、

「そんなに俺のことが(こわ)いかい?」

 と悲しそうな顔で私を見るから、私は息をついて、ゆっくりと言葉を(つむ)いだ。

「私はエディのことは(こわ)くないですよ。ナッシュとルークがとんでもない事を言うから、不敬(ふけい)(ざい)に問われたらどうしようと、青い顔になっただけです。私はエディがとても優しい人だということを、ちゃんと知っていますから」

 と笑って見せると、

「本当に?」

 とエディの顔がパァーっと明るくなる。

(あー、やっぱりエディは可愛(かわい)いな)

 そう思うと思わず頭をなでなでしてしまっていた。

(はっ!ヤバい!公衆(こうしゅう)の面前でこれは私も不敬(ふけい)(ざい)に問われるのでは?)

 そう思って(あわ)てて手を引っ込めると、その手を(つか)み自分の(ほお)に当てて、

「ありがとう、シルフィ。君にわかってもらえれば、俺は十分だよ」

 そう言って私にとろけるような笑顔を見せるから、思わず心臓が跳ね上がる。

「と言うわけで、ナッシュ、ルーク。シルフィは私のことは(こわ)くないと言っているから、心配ご無用だ」

 と凍りつくような目で二人に言い放つ。

 これで引き下がるかと思いきやナッシュが、

「シルフィは身体が弱いんだ。王子妃なんて責務(せきむ)()えられるのかい? その…お世継(よつ)ぎのことだってあるだろうし…」

 と言われ、

(えー、それナッシュが心配すること? いや、この国の未来を考えるなら心配するか……)

 私はそう考えて、

「ナッシュ様、心配していただいてありがとうございます。私も弱いままではいけないと、ちゃんと立派なお世継(よつ)ぎが産めるように、今は身体を(きた)えているから大丈夫ですわ」

 そう言って胸を張ると、ナッシュとルークはびっくりした顔をして、私を見るのだった。

 隣のエディを見ると、エディまでびっくりした顔で私を見ている。私と目が合うと、今度は顔を赤くして、

「そんなことを言われると、君を王宮に連れて帰りたくなる……」

 と私を抱きしめながら耳元で(ささや)くから、

「ダメです!」

 と(あわ)てて言うが、私も顔が熱くなってしまうのだった。






 ナッシュとルークは小さい頃からシルフィのことが大好きだった。

 小さくて、可愛(かわい)くて、弱くて、(はかな)げで、大切に大切に守ってあげなければいけない従妹(いとこ)

 それが二人にとってのシルフィだった。

 エドワード殿下と仲がいいのは聞いていたが、あの身体の弱いシルフィが王子妃なんて無理だろう。このまま王子殿下と仲良くさせておいては、いずれそうなりそうだ。なんとかしなければと、二人はエドワード殿下に会うたびに、シルフィは身体が弱いから王子妃なんて出来ないし、ましてや王妃なんて無理に決まってますと言い続けていた。

 エドワード殿下がシルフィと距離を置くようになったと聞いて、ナッシュとルークはチャンスとばかりにシルフィを口説(くど)くが、シルフィは困った顔で(うつむ)くばかりだ。

 それでもシルフィがエドワード殿下のことを(こわ)がっているのは知っていたから、殿下との結婚はないだろうと思い、悠長(ゆうちょう)(かま)えていたら、エドワード殿下が成人したらすぐにシルフィに求婚したのには(おどろ)いた。

 もうシルフィのことは眼中(がんちゅう)にないと思っていたのに。

 たしかに身分的には最適だとは思うが、そんな政略結婚でシルフィが幸せになれるはずがない。婚約してからも二人の仲はあまり良くないと聞いていた。

 これはエドワード殿下がシルフィに愛情がないなら、殿下から婚約を破棄(はき)してもらうのが一番だ。

 そう思っていたのに、今日の二人を見ると、聞いていた話とは違うように見える。

 シルフィはエドワード殿下を(こわ)がっている様子はなくて、頭を()でたりしている。エドワード殿下もシルフィのことを、愛おしくて仕方ないといった顔で見ているし、ましてやシルフィはエドワード殿下の子を産むために、身体を(きた)えていると言っていた。

 ナッシュとルークはびっくりして、ただ口を開けて(おどろ)くことしか出来なかった。




 ひと通り挨拶も終わってダンスが始まった。

 私とエディは、お互いを見つめ合いながらダンスを踊る。踊りながら私は、

「ナッシュとルークのこと、本当にすみません。怒ってますよね?」

 と聞くと、

「いや、あいつらは昔からああだったからな。シルフィから俺を引き離そうと、いつもあれこれ言われてたんだ」

 と言う。

「そうだったのですか…。全然知りませんでしたわ。私、彼らのことがちょっと苦手で、あまり会わないようにしていましたから」

「へぇ、苦手だったとは知らなかったな。何故(なぜ)苦手だったんだ?」

「…えーと、私のことをからかっているのか、いつも私を口説(くど)くようなことを言うのです。私はそういうの()れていなくて、どうしていいかわからなくなって、結局(だま)って(うつむ)くしかなくて……」

「あいつら、俺だって口説(くど)くのは控えていたのに、シルフィを口説(くど)きまくっていたのか。許せん‼︎」

「好きでもない人に口説(くど)かれても、(うれ)しくもありませんよ。ホント困るだけです」

 とため息をつくと、

「じゃ、俺は口説(くど)いてもいいんだな」

 なんて言い出すから、私はまた顔に熱が上がって、

「う、(うれ)しいですけど、やっぱりどうしていいかわかりません‼︎」

 そう言って、エディの胸に顔を(うず)めるのだった。

 エディはそんな私を抱き寄せて、かなり密着したままダンスを続けることになるのだった。




 二曲目のダンスも終わり、二人で飲み物を飲みながら、招待客を(なが)めていたが、私は、

「今日はキャシーさんは来ていないようですね。リード子爵も見かけませんが、来ていないのでしょうか?」

 そう言うと、

「この前のボートの件でガッツリ言っておいたから、しばらくは俺たちの前に顔は出せないだろう」

 と言う。私は、

「そうですか。今日はハーヴェスト侯爵が来ていますわね。エディ、何かあるといけませんから、私から離れないで下さいね」

「君だってまだ狙われているかも知れないから、ちゃんと俺の側にいるように」

 そうお互いに言って、顔を見合わせクスクスと笑い出す。

 この時はそう言いながらも、私達は何か起こるとは微塵(みじん)も思ってはいなかったのだった。

読んでいただいて、ありがとうございます。 ブックマークもありがとうございます。励みになります。 お話し的には、長くはならないと思いますので、もう少しお付き合いいただけると、嬉しいです。

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