2.疑惑の王子殿下
「痛たた…、あの大階段から落ちて、私よく助かったわよね」
そう呟くと、私付きのメイドのサラが、
「本当です。私も生きた心地がしませんでした」
と青い顔で答えてくれた。
サラはあの時、エドワード殿下に言われて別室で待っていたのだ。
「私が付いていれば、こんなことにはならなかったのに、申し訳ありません」
と頭を下げる。
「サラは悪くないわ」
そう言いながら、その時の事を考える。
あの日エドワード殿下によって人払いされ、私と二人きりでのお茶会となったが、もともと私はエドワード殿下の事を怖がっていたので、ろくに話も出来ずなんだか気まずいままお茶会を後にしたのだった。
昔はあんなに仲が良かったのに、私と距離を置くようになったのはいつからだったか……。
あれはエドワード殿下が10歳を過ぎた頃だったと思う。王子としていろいろやらなければならない事もあったのだと思うが、お兄様とオスカー様以外、私を含め他の者に距離を置くようになった。決して笑顔を見せなくなり、いつも無表情でどんな事にも動じない、人を寄せ付けない冷徹な王子殿下と周りは認識するようになっていった。
私を見る時もいつも睨むように鋭い目で見てくるので、私はそれが怖かったのだ。
そんな風にあまり話も出来ずにお茶会は終了したが、いつもならエドワード殿下が自らか、或いはエドワード殿下の側についているお兄様かオスカー様が馬車まで送ってくれるのだが、その日は人払いしておきながら、エドワード殿下も私を送ることはしなかった…。
(エドワード様が怪しい?)
でもエドワード殿下には私を殺す動機がない。それとも私が知らないだけで、エドワード殿下は私を殺したいほど憎んでいるのだろうか?
………。
(それとも犯人は別にいる?)
考えられるのは、エドワード殿下の婚約者の座を狙う他の貴族令嬢、というかその親。
(そんなの数えたらキリがないほどいるわ)
いろいろと頭の中で考えを巡らせるが、よく分からない。
まずは疑わしいのは第一発見者だ。私はエドワード殿下に話を聞くことにした。
読んでいただいてありがとうございます。