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転生アラサー警察官、王子殿下を守ります!  作者: 音威ジュン
第一章 暗殺編
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16.バトル勃発?

 さてお昼を食べることになったが、ピクニックなので下に敷物を敷いて、皆で食べ物を囲んで座る形になり、敷物と軽食がいくつかに分かれてセットされた。私はエドワード殿下、お兄様、オスカー様と一緒に座ったが、そこにキャシー嬢が来て、

「私もご一緒してよろしいかしら」

 と殿下の隣に座るので、皆やれやれという顔になる。

 殿下もダメだとも言えないが、いいと言うのもイヤだったようで、何も言わず(だま)っていると、そんなことは気にもせずに、さっさと殿下の隣に陣取(じんど)ったのである。

 エドワード殿下を真ん中に、私とキャシー嬢が両側に座るかたちになった。

 他の生徒会の皆はギョッとしたが、基本的にゴシップ好きなので、修羅場(しゅらば)か?修羅場(しゅらば)になるのか?と、この後の展開をワクワクしながら見守っているのだった。


 私はどうしたものかと考えていたが、キャシー嬢に対抗するのも大人気ない気がして(一応、中身は28歳なので) 、殿下がどのように対応するのか様子を見ることにした。

 ちょっとだけ、バチバチと火花を散らしてキャシー嬢とバトルも盛り上がるかと思ったが、そんなことをすれば後々(のちのち)尾ヒレが付いて、あることないこと言われそうなのでやめておいた。

 皆の前では冷徹(れいてつ)な殿下だが、基本的には優しい人だ。キャシー嬢のアピール攻撃をどうかわすつもりなのだろうか。


 キャシー嬢が隣に来てからは、殿下は無表情だ。キャシー嬢がお茶を入れてくれたり、サンドイッチを取ってくれたりするが、自分でするから大丈夫だ、と断っている。

 さすが冷徹(れいてつ)ぶりも板についたものだ。

 ここで私がお茶を渡したらどうするのだろうかと、ちょっと試してみたくなった。みんなの手前、冷徹(れいてつ)ぶりを通して断るのだろうと私は予想を立てて、

「エドワード様、お茶をどうぞ」

 とコップを差し出した。すると、

「ああ、ありがとう」

 と、顔こそ無表情だが、お茶を受け取ったのでびっくりした。

 それを見ていたキャシー嬢が、もの(すご)形相(ぎょうそう)で私を(にら)んでくる。

 わー、こんな展開になるとは思ってなかったぞ。とちょっとびっくりして殿下を見ると、

「どうした?」

 と(にら)まれた。が、最近の私はこの目つきは別に(にら)んでいるわけではないとわかっているので、つい、

「何か召し上がりますか?」

 と聞いてしまった。聞いてしまってから、これは絶対キャシー嬢に対抗してるように見えるよな、とチラッと周りを見ると、皆固唾(かたず)()んでこちらを見ているではないか。

 すると殿下が、

「シルフィの前にあるハムサンドを取ってくれ」

 と無表情で答えたので、それを殿下に渡すが、

(あー、やってしまった。これはバトル勃発(ぼっぱつ)だよな。キャシー嬢を(あお)っちゃったよな)

 と心の中で頭を抱えるのだった。

 ひょっとしたら、取っ組み合いのバトルにでもなるかと思ったが、キャシー嬢はもっぱら殿下に(もう)アピールだ。殿下の膝に手を置いたり、ちょっとしなだれてみたりするものだから、殿下も鬱陶(うっとう)しくなったのか、

「ちょっと離れてくれないか」

 と冷たく言う。

 キャシー嬢は()ねた顔をしていたが、殿下が私の方に体をずらしたので、私と殿下が密着することになってしまった。

 なんだか恥ずかしいが、私がここで離れると、殿下のことを(いや)がっていると思われるのもイヤなので、そのままでいると、不意に、

「シルフィはいい匂いがするな」

 と耳元で(ささや)くから、心臓が大爆発した。顔が赤くなるのが自分でもわかる。

「と、突然何言ってるんですか」

 とエドワード殿下に言うと、

「あれ?ひょっとして照れてる?」

 と言われ、

「耳元で(ささや)かれると、ドギマギするのは俺だけじゃないんだな」

 とまた耳元で(ささや)くから、

「あ、当たり前じゃないですか」

 と顔を(そむ)けて言うと、

「あー、シルフィがギュッとしたくなるって言ってる気持ちが分かったよ」

 なんて言う。

「今はダメですよ」

 とクギを刺すと、

「なんだ、残念。じゃ二人きりの時ならいいんだな」

 などと口説き文句のようなことを(ささや)くから、余計に顔が熱くなるのだった。



 向かい側に座ったオスカー様が、お兄様に、

「エディがシルフィに迫っているが、ほっといていいのか?」

 と言ったが、お兄様は、

「兄としてはほっとけないが、人の恋路(こいじ)邪魔(じゃま)すると馬に()られるらしいからな。今は見ないふりをしておくよ」

 と言ったのだった。


 私もまさか、こんな生徒会のみんながいるような所で、こんな風に(ささや)いてくるとは思わなかったので、もうドギマギして、キャシー嬢のことなど頭からぶっ飛んでいた。

 そんな私を面白がって、さらに顔を近づけて(ささや)くように話しかけるから、もうどうしていいかわからない。

 そんな私を見て、エドワード殿下はニヤニヤ笑うものだから、ひょっとして殿下はワザとやっているのではないかと思ってしまった。

 少し冷静になると、キャシー嬢がもの(すご)い顔で(にら)んでいる。

 キャシー嬢を(あお)って、私に何か仕掛けてくるなら現行犯だ。そうなれば(きび)しく言うことも出来るし、ひょっとしたら、生徒会から退会させるとかするつもりでいるのかも知れない。

 キャシー嬢はますます私を(にら)んでくるが、(にら)まれるくらいなら私も全然平気だ。

 これは何か起こるかも知れないなと、私は気を引き締めるのだった。

読んでいただいてありがとうございます。

2話続けての投稿です。

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