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転生アラサー警察官、王子殿下を守ります!  作者: 音威ジュン
第一章 暗殺編
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10.密談

 私は舞踏会の会場からバルコニーに出て一休みしていた。

 あれからオスカー様とカールは、またご令嬢たちに(つか)まり、取り囲まれてしまったのだ。

(ふう、やっぱり舞踏会は疲れるわね)

 そう思いながら手すりに寄りかかると、下から話し声が聞こえる。

「……王子殿下を……拉致(らち)……暗殺(あんさつ)……」

 となにやら物騒(ぶっそう)な言葉がチラチラ聞こえて来る。

 もっとよく聞こえないかと手すりから少し身を乗り出すと、髪に留めていた髪飾りが落ちてしまった。

(しまった‼︎)

 どうしようかと思ったが、何も知らないふうを装うのが一番良さそうだと咄嗟(とっさ)に判断し、

「キャア、髪飾りを落としてしまったわ。どこにいったのかしら?下に落ちてしまったのかしら?」

 そうわざと大きい声で言いながら、庭に出る階段を下りて、手すりの下あたりを探す。

 バルコニーの下は、人がギリギリ立っていられるくらいの高さがあるが、その暗がりに誰かが(ひそ)んでいるのがわかる。だが何もわからないふりをして、

「あ、髪飾りあったわ。良かったー」

 と言って髪飾りを拾い、足早に舞踏会場に戻った。

(あ〜、よかった。向こうに気付かれなかった)

 内心ヒヤヒヤしていたが、私の演技も捨てたものではなさそうだ。

 詳しいことはわからないし、話していたのが誰かもわからないが、エドワード殿下が危険なのはわかったので、この事を殿下かお兄様にお知らせしないと、と足早に会場を歩いていると、不意に腕を(つか)まれ心臓が跳ね上がる。

「ー⁉︎ー」

 (おどろ)いて振り返ると、エドワード殿下が私の腕を(つか)んでいたのだった。

「そんなに急いでどうしたんだ?何かあったのか?」

 と聞かれたが、ここで先程の話をするわけにもいかない。

 丁度(ちょうど)ダンスの曲が始まるところだ。ダンスをしながらなら近くに誰も来ないし、殿下に近づいてもおかしくないので、

「エドワード様、私と踊っていただけますか?」

 と返事も聞かずに殿下をフロアへ引っ張って行く。

 訳がわからないという顔をしながらも、ダンスが始まると

「どうしたんだ?」

 と聞かれたので

「先ほどバルコニーで物騒(ぶっそう)な話を聞いてしまいました」

 と言うと、いつもより鋭い眼差しで、

「どんな話だ?ここで話しても大丈夫か?」

 そう言われ、

「ダンスの間は誰も近寄れないので、話を聞かれる心配はないかと思いますわ」

 と、より顔を寄せて先程の話をする。

「エドワード様が狙われているのは間違いありません。絶対に一人になりませんように。王宮の中にも敵が入り込んでいる可能性があります。お兄様とオスカー様の他に信頼出来る者はおりますか?護衛(ごえい)の数も増やして下さい」

 そう一気に話すと、エドワード殿下はちょっと考えて、

「バルコニーには一人で行ったのか?」

 と私に聞いてきた。

「君の方こそ一人で行動するのは危険なのに、なぜ一人でバルコニーに出たりしたんだ」

 とエドワード殿下に怒られた。

「えー…、あー……皆さんお忙しそうだったので……」

 とつい小声になってしまう。

 エドワード殿下は「はぁ〜」と大きなため息をついて、

「シルフィ、まったく君は。危なっかしいにも程がある。もし聞かれていることに気づかれたら、君は殺されていたかも知れないんだ」

「本当に何事(なにごと)もなくて良かった…」

 と私の身体を引き寄せるから、

「エドワード様、近づきすぎです。踊りづらいです」

 と、抗議(こうぎ)すると、

「シルフィの姿が見えなくて、俺がどれだけ心配したと思っているんだ。我慢(がまん)しなさい」

 と鋭く言われ、私の抗議(こうぎ)の声は聞き入れてもらえなかった。

 前世で28歳まで生きてきたけど、彼氏いない歴=年齢な私は、男の人とこんなに密着(みっちゃく)したことはない。

(うわ〜、めっちゃ心臓バクバクする〜。どうしよう。)

 そう思うと余計にドキドキするし、おまけに密着(みっちゃく)すると、エドワード殿下はすごくいい匂いがするし、頭がクラクラしそうだった。

(いやいや落ち着け、落ち着け私)

 28歳の大人のお姉さんが、17歳の青少年にドキドキしてどうする。

 私は殿下の顔を(にら)むように見上げ、

「エドワード様、さっきのお話、ちゃんと聞いていました?」

 とちょっと怒ったように聞いてみる。

「うっ、ああ、大丈夫だ」

 そう言いながら、顔を(そむ)ける。

「このことは、お兄様とオスカー様にもお伝えした方がいいと思うので、オスカー様には明日、私の家に来ていただこうと思っています。エドワード様も来れますか?」

 と(たず)ねると

「ああ、わかった。明日だな」

 と答える。

「お兄様とオスカー様の他に、エミリーとカールにも話しておきたいのですがよろしいですか?信頼出来る人に知っておいてもらったほうが、何かあった時に対処してもらえるかと思いまして」

 そう言うと、エドワード殿下は顔を(そむ)けたまま、

「わかった、そうしてくれ」

 と言ったのであった。




 エドワードはご令嬢たちとダンスをしながら周りを見ていたが、ちょっと目を離した(すき)に、シルフィの姿が見えなくなっていたので焦った。

 一緒にいたオスカーとカールはご令嬢たちに囲まれて身動きが取れなくなっている。

 レイモンドはエミリーとダンス中だ。

 まさか誰かに連れ去られた?

 エドワードはダンスを途中でやめてシルフィを探しに行きたかったが、さすがにそれは失礼なので、曲が終わるのを今か今かと待っていた。

 やっと曲が終わってシルフィを探して歩きだすと、バルコニーの方からシルフィがやって来た。

 シルフィを見つけて安心したが、何故(なぜ)か急ぎ足でフロアを歩いているので、何かあったのかと思い、咄嗟(とっさ)に腕を(つか)んで引き留めた。

 とても(おどろ)いたようだが、エドワードの顔を見てほっと息をついたのがわかった。

「何かあったのか?」

 と(たず)ねると、いきなり、

「私と踊っていただけますか?」

 と言ってホールに引っ張って行かれたのには(おどろ)いた。

 今までシルフィの方からダンスに誘ってきたことなどなかったからだが、それよりもシルフィの(けわ)しい顔が気になり、

「何かあったのか?」

 と聞くと、バルコニーでエドワードの暗殺(あんさつ)計画らしき話を聞いてしまったと言う。それをエドワードに知らせようとしていたらしいが、その事よりも、エドワードはシルフィが一人でバルコニーに出ていた事のほうが気になった。

 ただでさえ誰かに狙われているかも知れないというのに、危険すぎるだろう。ましてや暗殺(あんさつ)計画など物騒(ぶっそう)な話を聞きつけてきているのだ。エドワードは何事(なにごと)もなくシルフィが自分の元に戻ってきたことにとても安堵(あんど)し、ダンスをしながらシルフィを抱き寄せた。

 シルフィには近すぎると抗議(こうぎ)されたが、エドワードはシルフィが自分の腕の中にあるという安心感に、抱き寄せたままダンスを続けたが、

「ちゃんと話を聞いていました?」

とシルフィに怒った顔で見上げられ、その顔のあまりの可愛(かわい)さに顔がニヤケそうで、思わず顔を(そむ)けたのだった。

読んでいただいて、ありがとうございます。

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