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初投稿です! みんなに楽しんでもらえるように頑張るぞぉ!


途中から2~3日に1回ぐらいの更新になるかもだけど、よろしくね!


「おれたち『ぼうけんしゃ』にならないか」

「「「へ?」」」


 孤児院の庭にある切り株の上に立ち、黒髪の男の子が同じくらいの歳の子どもたち3人に向けてそんなことを言った。

 男の子ふたりに女の子ふたり。

 彼らは年が同じこともあって、孤児院でもいつも仲良しの四人組だった。


「ぼうけんしゃってなに?」

「おいしいの?」

「おかねもらえる?」

「みんな知らねえのかよ。ギルドってところからいらいをうけて、けんとまほうでまものとたたかって、だれもいったことのない世界をあるくんだ」


 まだ何かしたわけでもないのに、誇らしげに手を当てて男の子は語る。

 どうしてそんなことを言い出したかというと、たまたま孤児院を訪れていた同施設の出身だという冒険者の剣士に旅先での話を聞かされたためだった。

 彼は今までの武勇伝を男の子にそれはもう誇らしげに話したため、男の子はすっかり冒険者に憧れてしまっていた。


「ただなるだけじゃだめだ。ぼうけんしゃにはくらすが9つあって、上から3つめの『しろがね』になれば一流のぼうけんしゃだっていってたぜ。だから、おれたちで『しろがね』になろう!」


 それを聞いた3人は皆嫌そうな顔をした。


「あぶなそう」

「まずそう」

「おかねにならなそう」


 なんでわざわざ旅をしなくちゃいけないのか、3人はさっぱりだった。

 そんなことよりお腹いっぱいご飯が食べたかったし、遊びたかったし、お風呂に入りたかった。


「いらいをたっせいすれば、おかねがもらえるぞ」

「やる!」


 まず心変わりしたのは赤髪の女の子だった。


「おかねが入れば、うまいもんいっぱい食えるぞ」

「やる!」


 次に心変わりしたのは金髪の女の子だった。


「あとは……ええと」


 大人しそうな茶髪の男の子にはどういったら言いかわからずとまどっていたが、やがて口を開いたのは相手のほうだった。


「みんながやるっていうならぼくも……」

「そうか! じゃあきまりだな。ここにいるみんなでちょうてんをめざそうぜ!」

「「「おー」」」


 男の子は、冒険者になるにはどうしたらいいのかを剣士から教えてもらっていた。

 まずはとにかく強くなること。そして、背中を預けられるくらい信頼できる仲間を集めること。

 できれば役割を分担して全員が得意の《(ジョブ)》に就いているのが理想的。

 特に必須なのは、前に出て戦う近接戦闘職と、後方から攻撃する火力職、それに傷ついた味方を癒す回復職だ。


「おれは前に出てたたかうせんしになる」

「じゃあ、アタシはまほうでてきをたおす!」

「わたしはたたかうのこわいから、みんなのきずをなおす」

「えっ? ……じゃあ、後ろでてきをたおす」


 みんなの希望がきれいに割れて男の子は満足げに頷いた。


「じゃあ今日からとっくんだ。おれたちはせんとうくんれん。おまえらはまほうくんれんだ」

「「「はーい」」」


 彼らは毎日、訓練と称して遊びながら過ごした。

 棒切れでチャンバラをしたり、難しい本を読んでみたり、傷薬で遊んで怒られたり。


 それから3年の月日が経った。

 10歳になった子どもたちは孤児院を出され、大人に混ざって町で働き始めた。


 運よく住み込みの仕事にありつけた4人は、時間を見つけては誰かの部屋に集まって互いに励ましあいながら、少しずつ冒険者になるためのお金を貯めた。


 13歳になった時、彼らはそれぞれ(ジョブ)を修得するために動き出した。


 1人は戦士ギルドへ。


 1人は魔術学校へ。


 1人は教会へ。


 1人はアーチャーの修練場へ。


 顔を合わせることはできなくなってしまったが、手紙でのやり取りは欠かさなかった。

 厳しい指導を受けながらも4人は努力を続け、それから更に3年が経った。


 彼らは始まりの町に再び集まった。

 あの日の夢を叶えるために。


 ただ1人だけ――予定とは違う職についているものがいたが、彼は誰にもそのことを話していなかった。



 ☆★☆★



「ううむ、本当に行ってしまうのか」


 門から踏み出そうとするわたしに惜しみの声を上げたのは、教会の司祭様だった。


「神聖魔法を極めたおぬしほどの才覚なら、王国でも屈指の《聖女》になれるというのに。王都で主教様に願い出れば、教会を預かることも夢ではないぞ?」

「申し訳ありません、身勝手をおゆるしください。友人との約束ですから」


 事情は既に説明してあるため、わたしはしっかりと断りを入れた。

 司祭様の申し出はうれしかったけど、こればかりは譲れない。


 みんなで冒険者になって、世界を旅する。


 その夢は今も誰ひとりとして変わっていない。

 そのために、わたし――アレッサは、みんなの傷を癒すための《聖女》になった。


 聖女なんて大層な名前だけど《回復術士(ヒーラー)》としては最上位であり、世界でも数十人しかいない格式ある職らしい。

 どうやらわたしは聖女としての才能があったらしく、司祭様を始めとして教会の誰もが一生懸命師事してくださった。

 お陰でわたしは傷の治療や味方の守護を得意とする神聖魔法を修得することができた。

 おまけに、魔力を増幅するための杖までいただけた。

 本当に、感謝しかない。


「残念じゃのう。もしものことがあればすぐに戻ってくるのじゃぞ? 教会はどんなことがあっても、おぬしの味方であることを忘れるでないぞ」

「はいっ! それでは、お世話になりました!」


 わたしは、今までお世話になった司祭様に大きく一礼すると町へ向かう馬車に乗る。

 のんびりと街道の景色を眺めながら、わたしはこれからに思いを馳せる。

 みんな、元気にしてるかな。

 この3年は誰とも顔を合わせることがなかった。


 ヴィクト君、強くなれたかな。


 カーナ、魔法のお勉強がんばれたかな。


 ラビ君、立派な《狩人(ハンター)》になれたかな。


 それからわたしは、1日がかりで始まりの町【ラクシャ】に着いた。

 待ち合わせの時刻には少し遅れてしまったが、3人は待ってくれていた。


「あっ! アレッサだ! やっほーい!」


 その中のひとり。

 さらさらした赤い髪に月を模す髪飾りを差した黒いローブ姿の女の子が愛らしい顔を向けてこちらに駆け出してきた。


 しばらく顔を見ていなかったけど、すぐにわかった。


 幼馴染のひとり、カーナだ。


 魔術師らしく黒と紫のローブを着て背中には魔印の刻まれた長杖を背負っている。

 彼女もすぐにわたしとわかったのだろう、再会の挨拶をする間もなく飛び付いてきた。

 少し顔立ちが大人びたけれど心の中は全然変わっていない。

 底抜けに明るくてみんなのムードメーカーだった、大切な友達のままだ。


「……って、どこ触ってるんですかっ。ひゃんっ!」

「どこって、ここよっ! ここっ! しばらく見ない間に成長しちゃってぇ! どんだけ食べればこんな立派なものが手に入るのよ、羨ましいったらありゃしないわ、この食いしん坊っ!」


 カーナは何故だかわからないけど、少し前から大げさな主張を始めたわたしの胸を服の上から強引に揉みしだき始めた。

 なんてことするの、その言い方だと栄養が全部胸にいったみたいじゃないの。


「ね、ラビもそう思うよね?」

「えっ、ぼく!? ……えっとその、アレッサちゃん、久しぶりだね」

「ラビ君も元気そうで良かったです! カーナの言うことは聞き流してくださいね」


 少し気弱そうに返事をしたのは狩人を目指すと言っていたラビ君。

 中性的な顔立ちであどけなさが残っているけど、わたしの方が高かった身長は、ほとんど変わらなくなっている。

 確か狩人になる修練をしていたはずだけど、少し変わった色合いの衣装に身を包んでいて、あまりそれらしくは見えない。

 普段着と分けているのだろうか。


「ごほん、これで全員そろったな。あらためて久しぶりだな、お前ら。また顔が見れて嬉しいぜ」


 咳払いして井戸に腰かけていた黒髪の少年が立ち上がる。

 こちらもすぐにわかった。

 わたし達のリーダー、ヴィクト君だ。

 一生懸命に鍛えたのだろう、体もがっしりして精悍な顔つきに変わっている。

 軽装備のプロテクターをつけ、そばには長剣が立てかけてあった。


「遅れてすみません、ヴィクト君」

「教会は一番遠いからしょうがねえよ。アレッサも元気そうだな」

「ヴィクト君もすっかり逞しくなりましたね!」

「そ、そうか……? お前もその、成長したな」

「あはは、2人は相変わらずお似合いだねー。ラビもそう思うよね?」

「ええ!? ぼくは、その……」

「?」

「と、とりあえず改めて確認だ。3人とも(ジョブ)は手に入れたか?」


 咳払いしたヴィクト君が皆に言う。

 職とはこの場合、それぞれの修練場でスキルを取得した練度において与えられる、資格の証明のようなものだ。

 これがあると、冒険者の審査を受けるのに有利に進む。


「ほーい! 《黒魔術士》試験受かったよー! 魔法も14個覚えちゃった!」


 カーナが誰よりも先に元気よく挙手をした。

 筆記もあると聞いたから勉強が苦手のカーナは苦戦するかと思ったけど、どうやら大丈夫だったみたいだ。

 まあ、やる時はやる子だって知ってるから心配してなかったけど。そんなには。


「わたしも何とか認可をもらえました。しかも《聖女》という回復職では最上位の職だそうで、司祭様にも褒められましたよ」

「せ……聖女ぉ? なんか凄いのはわかるけど、アレッサが?」

「何か含みがありますね……まあ、わたしも驚いてるんですけど」


 わたしだってまさか教会を預かって欲しいと言われるまで適正があるとは思わなかった。

 確かに神聖魔法は全て習得したし、回復魔法も1つを除いて上限まで()()してしまったけど、あまり実感が湧いてこないのが現状だった。


「なんだか、頼りになりそうだな。ラビはどうなんだ?」


 話を振られてずっと黙っていたラビ君がおずおずと口を開いた。


「あ、あのさ。みんなに言っておきたいことがあるんだ」



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