捌
ど真ん中に五右衛門風呂
その周りをヒノキで固めている。
そうここは蒼牙宅のふろばである、見た感想といえば兎に角だだっ広い。
最早旅館だ。
「広い、広いよ広すぎる。」
わしゃわしゃと頭を洗いながら呟く椿さっきから口があきっぱなし、泡はいるぞ。
「にしても本当広いな何?旅館?」
それさっき言ったから言うなよ、それと思えさっきから同じ事しか言ってねぇ。
ザッパン
桶で湯船のお湯をくみ取り頭からかぶった椿、さっきまで泥塗れだった髪や頬は清潔さを取り戻している。
「さてと湯船に…熱っ。」
さてここで知らない人のためにちょっと説明。
蒼牙の家の風呂は五右衛門風呂。五右衛門風呂とは、大きな盥の下で火を焚いてお風呂にしているようなもの、だから下に置いてある簀子以外の所を触るとすっごく熱いのだ。
「俺五右衛門風呂入った事ないんだけど、どうやってハインの?」
まあ入り方は私にもわからんが。
「え?作者さんがわかんないんじゃ俺も入れないじゃん。」
適当ごまかして入れそれが無理だったら桶で身体かければじゃないか。
「てきとーだなァもう。」
ぐちぐち文句言っているが関係ない、さっさと進めねーと読者さんが飽きるでしょうが。
何やらまだぶつぶつ言っていたが湯船につかることは完全に諦めたようで、桶で四、五回お湯を身体にかけていた。
カラカラカラカラ
椿はずぶ濡れのまま脱衣所にでた、其処には綺麗にたたまれた赤い着物と大判の風呂敷があった。
パパっと体を拭くと椿は早速着物に腕を通した。
「ドンピシャ。」
そうドンピシャである、裾の丈も袖の長さも何もかも丁度いい。
それに赤いと言っても白から赤へのグラデーションで実に椿に似合う。
鏡を見たとき椿は満面の笑みで微笑んだ。