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壱
グサッ
まるで肉を抉るような音。
「キャァァァァ!」
耳を劈く様な女性の悲鳴。
よろよろと覚束無い足取りで俺から離れていく黒いパーカーを着た男。
次の瞬間俺の身体に今まで感じた事のない痛みが駆け巡った、腹部を見て見れば黒い柄のジャックナイフが突き刺さっている。
俺は痛みに耐えかね後ろに倒れ込む、幸い壁があったので凭れる事が出来た。
痛すぎて声も出ねェ、こういう時ってナイフ抜いちゃいけないんだっけか…。
誰か俺の事呼んでる?ごめんなァまともに聞えねェ、なんとなく視界もぼやけて…。
俺死ぬのかなァ…まあいいか無理して続けたい程良い人生でもなかったし。
寒いな、だけど傷口のあたりは以上に熱い。
ヤッベとうとう何にも聞えなくなった…、目も殆ど見えねェなァ。
赤いのが見える救急車かな…でももう無駄だと思うぜ。
この状態じゃあもう俺病院着く前に死んじまうんだろう。
体が動いてるな、担架にでも乗せられたか。
でも悪ィ俺もう駄目みてェだ。
俺は静かに意識を手放した