ついていってもいいですか?
初投稿です!
ファンタジー小説を書きたいと思ったものの、想像力が行方不明\(^^)/
どうぞよろしくお願いします!
「家から出てけ!もう帰ってこなくていい!」
それが実の母の口癖だ。
今日ももうすぐ日が暮れるというところで追い出された。
父も弟も私の存在は無視しているので、私を庇う人はいなかった。
母が仕事から帰ってすぐに竈の火が起こせなかったという理由。
私は魔力がないからすぐにできないのはわかっているはずなのに・・・。
「仕事に行く前は洗濯しとけって言ってたのになぁ・・・。」
魔力がない私は洗濯に必要な水魔法も使えないから、川と家を往復して洗濯を終え、乾いたものから取り込んで畳むのに一日かかった。
一息ついたところに母が帰ってきてさっきのセリフ。
「だいたい、本当だったらもう働きに出て稼いでるはずの年齢だっていうのに。魔力もなければ愛想もないせいで家事も仕事もできない!あんたはいらない子なんだから家から出て行って!もう帰ってこなくていい!」
そういって家の外に出され、扉の鍵が締まる音がした。
もうすぐ春とはいえ、まだ寒いのに上着を羽織る暇さえなく追い出された。
いつものことだし、母が言っていることはもっともだ。
私の魔力がないせいで家事も仕事もろくにできず、迷惑をかけているのは事実なのだから。
「そうはいっても行くところなんてないし、どうしよう。」
母の怒りがおさまれば家にいれてくれるだろう。
それまでどこで時間をつぶそうか考える。
森の入口付近できのこでもとって時間をつぶそうかな。
あそこなら木が風を遮ってくれるかもしれない。
それにきのこを持って帰れば母の機嫌も良くなって許してくれるかもしれない。
そう思って私は森に向かうことにした。
*********
森の入口できのこを採っていると、声をかけられた。
「もう日が暮れてるよ。お家に帰ったら?」
優しい声音に振り返ると綺麗な女の人がほほ笑みかけてくれた。
「あら、とっても可愛い子!あなたみたいな子が遅い時間に一人でいたら悪い魔獣さんに襲われちゃうよ?」
おひさまみたいな綺麗な髪。ゆるっとしたウェーブがとても似合う綺麗な人だった。
お花みたいな優しい色の瞳が私を覗き込む。
「遅くまでお仕事して偉いね。」
そういって私の頭を柔らかな手が撫でる。
「・・・偉い?私が?」
びっくりして聞き返すと、女の人は楽しそうに笑った。
もう12歳なのにろくに仕事もできなくていつも怒られてばかりの私が?
「うん、偉い偉い。」
そのまま何度も私の頭を撫でてくれる。
私はなんだかとても気持ちよくて、知らない人に触られているというのに思わず目をとじてしまう。
「・・・本当に可愛い。」
そういったあと、女の人は私をぎゅっと抱きしめてきた。
「私の名前はディオッサっていうの。22歳よ。あなたは?」
「・・・ランって言います。12歳です。」
「あら!敬語も使えるのね。すごい!」
ディオッサさんがにこにこ褒めてくれる。
「私なんて全然すごくないです・・・。」
私は褒めてもらえるような人間なんかじゃない。
何もできなくて親にさえ嫌われている存在だ。
「ううん、すごいよ!ランちゃんは可愛くてすごい!」
そういってまた抱きしめられる。
なんだか不思議な人だ。
実の親とでさえ、うまくコミュニケーションがとれないのに。
人と会話が続くなんてどれくらいぶりだろう。
「そんな可愛いランちゃんはここで何してるの?」
「えっと、追い出されて行くとこがなくて・・・。」
「まぁ!ひどい奉公先ね。こんな可愛い子を追い出すなんて信じられない!」
奉公先じゃなくて、実の母ですとはなんだか言いづらい。
仕事につけていない上に実の母にも大切にされないなんて恥ずかしい・・・。
「でも、こんな時間に女の子一人じゃ危ないよ。一人で帰るのが怖いなら一緒に謝りにいってあげようか?」
「・・・帰りたくない、です。」
だっていま帰っても怒られるだけだし。
きのこもまたほんのちょっとしか採れてないから、さらに怒られるだろう。
「うーん・・・行くところがないなら、とりあえず私のテントに来る?」
「・・・いいんですか?」
本当は暗いのは怖いし、嫌いだから一緒にいてくれる人がいたら嬉しい。
私がもっと小さいときは押入れに閉じ込められるのがお仕置きだったから。
暗いところで一人でいるのは苦手だった。
「送っていってもいいんだけど、奉公先は謝ったら許してくれるところじゃないんでしょ?」
「・・・なんでわかるんですか?」
「わかるよ」
こんな格好で外に出すなんて、そういってディオッサさんは自分の外套を私にかけてくれた。
「うぅ・・・っ」
私の目からポロポロと涙がこぼれるのを感じた。
ディオッサさんは黙って私の背中を撫でてくれる。
「わ、私のこと要らないって。もう帰ってくるなって・・・。もうずっと何年も言われてるの・・・。」
「そっか。」
「も、もう帰りたくない。あそこは私の家じゃないの・・・。」
ディオッサさんは何も言わずに私が泣き止むまでずっと背中を撫で続けてくれる。
そうか、私は帰りたくなかったのか。
あの家を自分の家だと思ってなかったのか。
自分の言葉にひどく納得したのだった。
******
ディオッサさんのテントに一緒にいった。
ディオッサさんの魔力でテントの中は快適な空間が作られている。
ディオッサさんはミルクを取り出すと火魔法を使って温めてくれた。
ミルクなんて珍しいものではないが、役に立たない私はもうずっと飲み物は井戸水だけだった。
「ランちゃんって、とても美味しそうに飲んでくれるから嬉しい~」
そういってディオッサさんはにこにこ笑う。
「・・・晩ご飯食べてなかったから。」
本当は昼ご飯も食べてない。私は役に立たない家族だから、朝と晩に余り物を食べる程度なのだ。それも余り物だから冷たくなったものばかり。
温かいものを口にいれるなんてどれくらいぶりだろう。
「え、そうだったの?そんな時間からあそこにいたんだ。寒かったでしょ。」
そういってまた頭を撫でてくれ、保温魔法をかけたブランケットをかけてくれた。
温かいパンとスープも出してくれた。
「私ね、一人でいろんなところを旅してるんだ~。帰るところがないならランちゃんも一緒に来る?」
「・・・私、魔力もないし何にも役に立たないですよ?」
「ランちゃんがいたら楽しいし、十分だよ!一人ぼっち同士だし、仲良くしよ!こんなに可愛いランちゃんと一緒に旅ができるなんて私ってばラッキー!」
「可愛くなんか・・・。ディオッサさんの方が可愛くて綺麗で優しいです!あの、ディオッサさんが良ければ、ついていってもいいですか・・・?」
「・・・可愛いー!!!!もちろんだよー!!よろしくね、ランラン!」
「ラ、ランラン?」
「ランラン!可愛いでしょ?私のことはディオって呼んでね。」
そういってぎゅーっと抱きしめてくれた。
たくさんの家族といてもいつも寂しくて孤独だった。
でも、ディオさんといたら全然寂しくない。
もう、あの家に帰らなくていいんだ・・・。
ディオさんの腕の中で私はひどく安心した。
「今日は私のベッドで一緒に寝よ!明日はランちゃんに必要なものを揃えようね!可愛いお洋服も用意しなきゃ!明日が楽しみだね~」
「・・・はい!」
明日が楽しみなんていつぶりだろう。
毎日つらくて、何もできない自分が情けなかった。
家族の役にたちたくて必死に頑張っても結果がでなくてつらかった。
でも、今日からは何もできない私と一緒にいるだけで嬉しそうにしてくれる人がいる。
私は生まれて初めてとても幸せな気持ちで眠りについたのだった。
もう少し続く予定があったり、なかったり・・・?
***
評価&ブックマークが嬉しくて連載することにしました!
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魔力もないし、役にたてませんけど、ついていってもいいですか?
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また、ディオさん視点の短期連載(完結済)も書きましたのでよかったらぜひ♪
だから女神じゃないってば!~修行の旅に出ることにして逃亡させていただきます~
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