噂の道具屋
一夜明けてみると周りの様子がガラリと変わっていた。
周囲からヒソヒソ声が聞こえてくる。
「野郎、戻ってきましたね。」
「今まで独房から戻ってきた者はいない。」
「どんなトリックを使ったのか……」
刑務所内では噂になっていた。
独房から戻ってきた人間がいるという事……
これは最大の衝撃をもって受けとめられたようだ。
かつて刑務所内でこの様な人間は存在していない。
一体何をしたのか。
噂になるのも無理はない。
やれ裏取引で所長の弱みを握った。
所長に体を売った。
など本当に所内が暇な事がよく分かる。
しかし戻ってきたという事実は、相当に特殊な事であった。
食事中至る方向から、注目の視線を感じるのだ。
明らかに注目されている。
そんな中で近づいてくる人間がいた。
「おい、道具屋……」
「ちょっと面貸せよ。」
食事中のため
無視して水を飲み干す。
ん?誰だこいつ。
どうせ冷やかしかなんかだろ。
一応ちらりと横目で確認して見る。
ああ、四角顔に坊主頭のソーセージ君か。
生きていたんだな。
そんな様子をお構いなしにソーセージ君が話しかける。
「何が狙いなんだ。おまえ」
「俺は助けて欲しいなんて、一言も頼んじゃいないぜ。」
ソーセージ君は見つめている。
「さあな。」
「ただソーセージごときで処分される必要はないと思っただけさ。」
「ふん。何とかしたさ俺ならな。」
ソーセージ君は、言い張る。
「おまえも俺も二日後には処刑だ。
些細な事を気にしてもしょうがないだろう。」
ソーセージ君に答える。
「それもそうだな。」
「…………」
少し間が空く。
「で、何をすればいいんだ。」
ソーセージ君は、真剣な眼差しで見つめてくる。
中々頭のいいやつのようだな。
「……ふう」
食後のタバコが欲しいところだ。
一呼吸してから、昨日考えていた計画を話す事にした。