薬草は観賞用では無い。使うためにあるのだ!
「なんか漬物臭くないか」
前の人間がとなりの人間にひそひそ声で話しかける。
「うむ、確かに臭いな」
「漬物を盗み食いしたやつでもいるんじゃないか。」
「ははっ!!馬鹿なヤツがいるもんだ!!」
「見つかったら、直ぐに処分されるだろうな。」
後ろ、後ろにいるんですけど!!!!
ちょび髭がギロリと睨みつける。
「おい!、そこ煩いぞ!」
「誰が馬鹿なヤツだ。言ってみろ!!!」
「やばい、所長に気づかれたぞ」
おいおい何やってんだよ……
しかし、あのちょび髭が所長か……
「気にくわんな、ちょっとお前見てこい!!」
「はい……」
髭所長が部下に指示をだし、下っ端所員(坊主)が駆け足で近づいて来る。
「貴様等、何かあるのか!!反抗的な態度は即処分の対象だぞ!!!!」
下っ端所員が近づいて来る。2メートル前付近で一度立ち止まった。
「むむ、漬物臭いな……」
そんなに臭うのか、漬物……
所員は、数秒思案をしてから、ニヤリと笑う。
「ははーん、そういう事か……」
踵を返し、直ぐに髭所長のところまで戻って行く。
髭所長に耳打ちをする。
髭所長は囚人達を睨みつけながら報告受けている。
次の瞬間には、満面の笑みでこちらに向かって話しかける。
「ふっはははは、残念ながら、他にも昨日の残党がいたようだな……」
ヤバいんですけど……! 即日処分されてしまう!!
静まり返る囚人達――――
「貴様ら、ばれないと思ったら大間違いだぞ……」
「おい、誰かチャーリーを連れてこい」
「はっ」
暫くすると、所員に抱えられチャーリーが登場する。
チャーリーは、黒と白のマーブル色のフレンチブルドッグだった。
「おおお、相変わらず可愛いな!チャーリーは……」
チャーリーの頭を撫でる。
チャーリーは、気持ち良さそうな顔をしている。
「チャーリーは漬物が大好物でな」
そんな犬いるの!?
「よしよし、さぁ、チャーリー、見つけてきておくれ」
チャーリーを放すと、勢いよくこちらに向かって走って来る。
小さな鼻をクンクンしながらその場を探索し始める。
チャーリーは右斜め1メートル前で止まった。
再度確認したかの様に、一度対象を見上げた後に、
鼻をクンクンしたかと思うと、突然吠えはじめる。
「ワウワウ!!ワウワウ!!ワウワウ!!ワウワウ!!ワウワウ!!ワウワウ!!」
「早速見つけたようだな……調べろ!」
髭所長がゆっくりノッシノッシと歩きながら、こちらに向かって来る。
「何も持っていませんよ!!!やめろ!!!!」
斜め前にいる若い普通の男が、抵抗虚しく屈強な所員2人がかりで調べられる。
暫くすると、ソーセージの束が出てきた……
「ありました!!!」
所員が大声で報告する。
「フハハハっ!馬鹿なヤツだな。」
「くっ」
「連れて行け!!!すぐに他に仲間がいないかも調べてやるからな!!
覚悟しておけ!」
所員は、2人がかりでソーセージ君を引きずりながら部屋から連れていく。
「本日の朝礼を終了する!!!!
各自今週の作業持ち場につけ!!
サボった場合は、許さんぞ!!!」
少しの沈黙後――――
囚人達が各自の作業場に向かって動きだそうとする。
ふー、危なかったな。
とりあえずやり過ごせたようだ。
ソーセージ君、すまないな俺のせいで……
心の中で、謝っていた。
気がつくと私の目の前で、チャーリーが尻尾を振っていた。
しゃがんで頭を撫でてやると、凄く喜んでいる。
「よしよし」
その様子を見て、こちらに誰かが向かってくる。
「懐いているな……犬を飼っていた事はあるのか?」
髭所長が聞いてくる。
「ええ、まあ、ですが凄く人に慣れていますね。チャーリーは……」
と答える。
「ふふっ そうか、そうか」
「チャーリーは、人によく懐く。そして賢いのだよ……」
「ええ、私もそう思います。」
どう思っているんだよ!!
「そうだろ、そうだろ」
「漬物が好きなんだよ、チャーリーは……」
「匂いが好きでよく舐めているのだよ……」
うん?
ん??
数秒の間があってから
再びチャーリーを見ると、
いつの間にか、めっちゃくちゃ
腹を舐めている事に気がついた。
――汗が引くのを感じる。
「こいつも取り押さろ!!!」
「はっ」
万事休すだ。
「まさか漬物を盗むやつがいるとはな……
貴様には後で、とっておきの熱いのをくれてやる!」
何だよ、それ怖えええ!!!!!!!!!!!!!
ソーセージ君と同様に引きずりながら部屋から連れていかれる。
囚人達の間では、恐らくあだ名は漬物とかになっているんだろうなと想像する。
もう終わってしまうのか……
いや、まだだ!!!最後迄諦めない!!!