『16』
「お母様……お母様……」
木陰の下で依然カレンは戦意喪失状態に陥っていた。
それはもう普段の彼女からは考えられないほどひどい様子だ。
「ったく、あいつが対魔獣恐怖症だったなんて。知らされてねぇぞ」
英人はカレンを守るように彼女の前へ移動すると、Aランクの魔獣――ブラッドドラゴンと対峙する。
敵の数はおよそニ十体ほど。もしくはそれ以上だ。
一体だけでも勇者を三人は必要とする魔獣がニ十体。その上、暗闇で周りが見づらいし、カレンを守りながら戦わなければならない。
まさに最悪の状況だ。
「なんで俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだ」
そうぼやきながら、英人はカレンに目をやる。
「お母様……助けて……」
どうやらカレンは抜かれていない剣を眺めながら、母親を呼んでいるようだ。
(そういえば聞いたことがあるな。対魔獣恐怖症を抱えている者は、幻覚を見ることがあるって。これはそれなのか)
そんなことを考えていると、ブラッドドラゴンたちが一斉に雄たけびを上げた。
攻撃の合図だ。
「クソッ。おいカレン! しっかりしろ! お前がしっかりしねぇと二人とも死ぬぞ!」
英人が呼びかけるが、カレンは変わらずにぶつぶつと母親のことを呟いている。
「ダメか。……仕方ねぇ。こうなったらやるしかないか」
英人は鞘から剣を抜き出すと、刀身を魔獣たちへと向けた。
(だが、戦うにしてもカレンの傍から離れるわけにはいかない。もしそんなことをすれば、こいつが一瞬で食われちまうからな)
それゆえ、英人はカレンから距離を空けた場所で戦闘をするわけにはいかないのだ。
彼はカレンの目の前で、彼女を守りながら魔獣と相対さなければならない。
それもAランクの魔獣をニ十体も相手に。
「無理ゲーってやつだな。だが、やるしかねぇ」
そう呟いた刹那、魔獣たちが一斉に攻撃を仕掛けてきた。
ある個体は火を吹き、ある個体は突進をし、ある個体は噛みつこうとしてきた。
それらは常人では防ぐことは到底不可能。
だが、
「おうらっ!」
英人が剣を横凪に払った瞬間、火は霧散し、接近してきた数体のブラッドドラゴンは木をなぎ倒しながら、数十メートル先まで吹き飛ばされた。
「これで死なないのか。まあまあやるじゃねぇか」
『斬月』
あらゆる力、物体を切り裂くことができる能力。
ただし、クールタイムを三十秒要する。
これが模擬戦際、カレンの炎を一刀両断した異能である。
たったいま英人が繰り出したのは『斬月』と『身体強化』を組み合わせた攻撃。
斬月で火を消し去り、身体強化で身体能力を増幅させ、ブラッドドラゴンを体ごと吹き飛ばした。
本来なら身体を真っ二つに斬るつもりだったのだが、ブラッドドラゴンの鱗は非常に硬い。
ゆえに殺すまでには至らなかった。
「相変わらず硬い体だな。とっとと死ねばいいものを」
英人が一人呟くと、倒れていた数体のブラッドドラゴンが起き上がってきた。
ダメージは受けているみたいだが、致命傷までは食らっていない。
すると、不意に吹き飛ばされたブラッドドラゴンの一体が猛り立った。
相当怒っているみたいだ。
その後、魔獣たちは巨体を揺らしながら、一気に英人へと襲い掛かってくる。
「いいぜ、お前らまとめて俺が殺してやる」
そう言ったのち、英人は大きく剣を振り下ろした。
三十分後――。
(ったく、幾ら斬ってもキリがねぇなこりゃ)
制服に汗を滲ませながら、英人は前方を見据える。
彼の視線の先には数体の魔獣の死体と依然十五体以上はいるブラッドドラゴン。
「こいつらいつになったら死んでくれるんだ」
先ほどから何度も異能を駆使しダメージを与えているのだが、殺せたのはほんの一部。
他はまだ十分な攻撃を受けていない個体や同種の中でも生命力が強い個体が生き残っている。
「ったく、こっちは逃げ回ったり、殺したりでもうクタクタだっていうのによ」
英人の異能にはクールタイムがあり、常にブラッドドラゴンにダメージを与え続けることは不可能だ。
故に、戦意喪失をしているカレンを抱えながら、異能が使用可能になるまでブラッドドラゴンの攻撃を避けることもしていた。
もし彼が一人だけだったのなら、もっと自由に戦えるのだが。
「クソッ。また異能が使えねぇ」
敵から放たれた火を無効化したのち、英人はカレンを抱えて走り始める。
ここは森の中、蛇行して道を選べば足が速いブラッドドラゴン相手でも三十秒間くらいは時間を稼げる。
「おいカレン! そろそろしっかりしろ! いつもの偉そうなお前はどこにいったんだよ!」
英人はカレンに向かって叫ぶ。
しかし、彼女はまだ元には戻らない。
まるで一人だけ別の世界を見ているようだ。
「クソっ!」
おそらく、今回カレンが魔獣恐怖症を発症してしまった理由は、ブラッドドラゴンから多大なダメージを負ったこと。
(依頼を共に受けて気づいたが、カレンは魔獣から一度も攻撃を食らっていなかった。それどころか掠り傷もなかった
たぶん自身でも知っていたんだろう。魔獣からダメージを負うと、自分が正気じゃいられなくなることに)
「よし! 異能が使える!」
クールタイムを終えたところで、英人はカレンを地面に置いて、剣を構える。
「来たか!」
追ってきたブラッドドラゴンは前方に三体ほど、その後ろに残りがいる。
前にいる三体は咆哮を上げたのち、同時に真っ赤な炎を放ってきた。
それに英人は斬月を使用し、剣を振り下ろして対処する。
「おりゃっ!」
三つの炎が消え去った後、英人は身体強化によって身体能力を上げたのち、魔獣たちへと斬りかかった。
剣は魔獣の全身を切り裂き、身体からは大量の血が溢れ出した。
「っし! これで三体死んだな」
そう言う英人の視線の先では、魔獣たちが血を噴き出し悲鳴のような声を上げながら、次々と絶命した。
「さて、これでまた時間を稼がなきゃいけないわけだが……」
戦い続けてもうすぐ一時間が過ぎる。
弱い敵ならまだしも、Aランクの魔獣をこれだけ相手にしていると、さすがに英人の身体も限界を迎えていた。
(せめてもう一人戦えるやつがいればいいんだがな)
そう思い英人はカレンの方を見やる。
だが、彼女は依然呆然自失となっている。とても戦える状態ではない。
「チッ、もう来やがったか」
敵の後続が到着すると、英人はカレンを抱きかかえて逃げようとはせず、その場で剣を構えた。
(もう足が限界だ。今回は逃げてもあっという間に追いつかれそうだ)
英人が思っているように、カレンを持ち上げて移動を繰り返していた彼の足にはかなりの負担がかかっていた。
これ以上、異能使用可能になるまでの間、ブラッドドラゴンから逃げ回ることは不可能だろう。
「来いや! このクソトカゲ!」
英人がそう口にした刹那、魔獣の一体が尻尾を振り回し、彼へと直撃させた。
異能が使えない英人は数十メートル先まで吹き飛ばされる。
「ぐはっ!」
英人は背中を木に叩きつけられ、激しい痛みに襲われた。
額からは血が流れ、身体中に傷が付いている。
彼は朦朧とする意識の中、それでも立ち上がった。
「へへっ、なかなかやるじゃねぇか」
不意にブラッドドラゴンが森中に響き渡るほどの雄たけびを上げた。
それはまるで自分たちの勝利を確信しているかのようだった。
「なにギャーギャー騒いでんだよ。てめぇら、まだ俺を殺せてねぇじゃねぇか」
そう呟いたのち、英人は一瞬にして姿を消した。直後、彼は魔獣たちの前に現れると、瞬時に数体のブラッドドラゴンの身体を切り裂き、殺した。
「てめぇらが余裕こいてる間に三十秒経ってたんだよ。カスが」
死体に向け吐き捨てると、英人は周りを見回す。
依然、複数のブラッドドラゴンが英人を見据えていた。
「まだあと十体チョイはいるな」
英人の身体は既に限界を超えている。
それに対し、敵は軽傷の個体が六~七体と無傷同然がニ~三体。
英人の方が明らかに分が悪い。
「こりゃ絶対絶命だな」
そう言ったのち、英人はカレンへと視線を移す。
だが先ほどから彼女の様子は変わっていない。瞳はどこか遠くを見つめ、口をパクパクと動かして何かを呟いている。
(正直、これ以上俺一人で戦っても勝ち目はねぇ。このままだと二人とも死んで終わりだ。だが、もし彼女を戦える状態にまで変えられたら……)
そう思ったのち、英人は大きく溜息をつく。
「これはあんまり使いたくなかったんだけどな」
英人が制服のポケットから取り出したのは、翠色の半透明な球。大きさは半径三センチほど。
『防御球』
防御壁を創り出す特殊道具。
色によって壁の強度が決まり、赤、青、黄色、翠の順に上がっていく。
「師匠から貰った大事な道具なのに、こんなところで使うハメになるとは。だが、しょうがねぇか」
英人はカレンの傍まで移動すると、目の前に防御球を勢いよく投げつける。
すると球が割れた瞬間、英人たちを覆うように半透明な翠色の壁が作り出された。
「これで暫くはあいつらの攻撃は当たらねぇな」
英人が言った通り、魔獣たちは攻撃を繰り出してくるが、炎は壁に遮られ、突進してきても身体ごと壁にぶつかると同時に跳ね返される。
「さて、次はこいつか」
英人が見据える先にはうずくまって、死んだような目でぶつぶつと何かを言っているカレン。
「お母様……お母様……」
「母ちゃん母ちゃんって、お前はホームシックか」
カレンが繰り返す言葉に、英人はツッコむと唐突に彼女の胸倉を掴み、持ち上げた。
だが、そんな彼にカレンは抵抗一つしない。
(とりあえず、応急処置をしないとな)
そう考えると、英人は彼女の腹部に軽く拳を入れた。
「ぐふっ!」
殴られたカレンは英人の手から落ちると、そのまま地面に倒れ込んだ。
「どうだ? こっちに戻って来たか?」
「っ! い、いきなり……な、なにすんのよ」
カレンの様相が正常に戻ったよう。
対魔獣恐怖症の症状は身体に大きな刺激を与えることで、僅かだが回復する。
これは緊張して固くなっている体をほぐすときと同じ仕組みである。
しかし、カレンの身体は小刻みに震えており、このままだとまだ戦闘は不可能だ。
「お前、対魔獣恐怖症だったんだな」
「っ! ……ち、違うわよ」
「嘘つけ。今まで意識がないに等しかったじゃないか」
英人が訴えると、カレンは答える代わりに、口をつぐんでしまった。
「正直、依頼を受ける前になぜ言わなかったのか疑問に思っているが、まあいい。そのことについてはひとまず置いて置く。
だが、このままお前が戦えないと俺たちは二人とも死ぬ。それはわかるな?」
英人が示すのは、多くの魔獣たち。
「……そうかもしれないわね。でも、アタシはもう戦えないわ。少なくとも今日はね」
申し訳なさそうに言葉に出したカレンは顔を地面に向ける。
対魔獣恐怖症の症状が一度出てしまえば、最低限半日は魔獣とは戦闘ができない。
なぜなら、魔獣を目の前にすると身体が硬直し、指一本すら動かせなくなるからである。
「だからアタシを置いて、一人で帰りなさい。それが最善策よ」
「バカなのかお前は」
カレンの言葉を、英人は一蹴した。
それに驚いて、彼女は顔を上げると彼を見据える。
「あのな転移用紙で逃げるなんてこと、最初から考えてたっての。だが、そんなことしたら転移しようとしている間に一人だろうが、二人だろうが食われて終いだ。
一応、いまも転移するチャンスではあるが、防御壁の中では爆発系の特殊道具の事故防止のために特殊道具自体が一切使えなくなってるしな。
つまり、俺は一人で逃げようが、お前と一緒に逃げようが、結局死ぬんだよ。
だから助かる道は俺とお前であいつらを殺すしかねぇんだ」
英人に見つめられながら言われると、カレンは少し顔を赤らめながら目を背けた。
「そ、そう。でも、そんなこと言われても、アタシは戦えないわ」
「いや、そんなことはない」
対魔獣恐怖症――そのほとんどは何かしらのトラウマが原因で引き起こっている。
逆に言えば、そのトラウマさえ本人の中から取り除いてしまえば、対魔獣恐怖症は完治するのだ。
「カレン。お前、その使っていない方の剣を見て母親のことを呼んでいたが、何かあるのか?」
「えっ、そ、それは……」
「時間がない。早く答えろ。でないと、俺もお前も死ぬぞ」
それにカレンは「わかったわよ」と返すと、続けて話した。
「これはお母様の遺伝子が入った剣なの。お母様はアタシが小さい頃に、魔獣に食われて死んだのよ」
悲しげに語るカレン。
だが、英人は驚くことはなかった。
勇者学校に来る生徒には不遇なことに遭った者も少なからずいる。
親が死んだなんて、それほど珍しいことではないのだ。
「そりゃ大変だったな」
「大変? そんな言葉で済ませないで頂戴。アタシはお母様が大好きだったのよ。世界で一番大好きだった。それなのに、あんな化け物のせいでお母様は……」
当時のことを思い出したのか、カレンの声は震えていた。瞳からは涙が溢れ、頬をつたり地面へと落ちる。
「それでお前は勇者になったのか?」
「えぇ、そうよ。それにアタシは英国最強の勇者――アベル・ベルージの娘。勇者になってこの世から魔獣を滅ぼし復讐するのがアタシの使命なのよ」
「ほう、そうか」
今までのカレンの話を聞く限り、彼女が対魔獣恐怖症になった原因は母の死であることは間違いない。
まあそれとは別の箇所で問題がないこともないが、そちらはひとまず置いておこう。
「だが、復讐をするのに、敵から一撃もらったくらいでこのザマじゃ話にならないな」
「っ! そ、そんなことわかってるわよ。でも、しょうがないじゃない」
カレンは諦めるように言葉を零す。
「しょうがない? 何がしょうがないんだ? 身体が動かないから仕方がなく戦わないのか?」
英人の挑発するような問いかけに、カレンは少し苛立ちながらも答えた。
「そ、そうよ。逆に身体が動かないままでどうやって戦うのよ」
「たしかに戦闘はできないな。だが、魔獣を殺すことはできる」
そこで英人は話を止める。
その後、やや間を空けたのち、こう口にした。
「自分の体内に毒を含んだ状態で、その身体を魔獣に食わせる。それなら魔獣を殺せるだろ?」
英人が放った言葉にカレンは目を見開いた。
「な、なにバカなこと言ってるのよ! そんなことできるわけ――っ!」
その刹那、彼は彼女の衣服の首元を掴み、木に打ち付ける。
「っ! な、なにすんのよ! い、痛いじゃない!」
「お前、舐めてんのか」
英人と視線を交わせた瞬間、カレンはゾッとした。
今にも何かを殺しそうな、殺戮にまみれた瞳だった。
「カレン、お前は母親の命を奪ったあいつらを憎んでるんだろ? 殺してやりたいんだろ? この世から抹殺したいんだろ?
それなのに自分の命を失うのが嫌だ? ふざけるな。己の命を賭してでも敵を殺す。復讐をすると決めたなら、それくらいの覚悟を持て。それができないなら、お前には母親の仇を討つ資格なんてない。とっとと英国にでも帰ってティータイムでも楽しんでいろ」
激しく睨みつける英人。
その姿はまるで何かにとりつかれているようだった。
しかし、彼が放った言葉にはどこか説得力があって、カレンは何も言い返すことができなかった。
そんな彼女の様子を見て、英人は彼女を手から離す。
「いいか。今から特別にお前が戦えるようになる方法を教えてやる。それはお前の左腰に備えてある剣を使うことだ」
その言葉にカレンは驚いて英人に視線を向ける。
「お前、昨日の依頼で言っていたな。その剣は使えないと。それはつまり母親の命を使って作った武器は魔獣と戦わせられないってことだろ」
カレンが対魔獣恐怖症を発症したときから、英人は勘付いていた。
彼女がどうしたら己の病を克服できるかを。
「だが、その考えがお前をここまで弱い存在にしているんだ。
カレン。お前はその剣をどういう気持ちで受け取ったんだ。剣を母親代わりにするためか? それとも、死にそうになったときに母親のことを思い出すためか?
まあどちらにせよ、そういった思考はもう捨てろ。母親のために復讐をしたいと思っているんならな」
英人がそう語るが、カレンからは返事はこない。
どうやら彼女は彼の考えを肯定することはできないらしい。
すると、不意にパリッと何かが割れるような音が聞こえた。
「っ! もう限界が来たか!」
英人が後方を向くと、彼らを守っていた防御壁にヒビが入っていた。
幾度となくブラッドドラゴンたちの攻撃を受けて、耐久力がなくなってきたのだろう。
「仕方がない。いくしかねぇか」
英人は鞘から剣を抜くと、魔獣たちと戦うために、防御壁を出ようとする。
そのあまりにも無謀な行動にカレンは声を上げて引き止めた。
「ちょっと待ちなさいよ! アンタ、正気なの? そんなボロボロの身体のまま戦ったら絶対に死ぬわよ!」
「それがどうした? どうせこのままじっとしていても死ぬんだ。それなら死ぬまでに、あいつらを一匹でもぶっ殺せた方がいいだろ?」
振り返って答えた英人は少し笑っていた。
その表情には恐怖心は一切ないように思える。
このまま魔獣たちと戦闘を行えば、確実に死ぬというのに。
「そういや忘れていたが、カレン、これ持っとけ」
そう言って、英人がカレンに渡したものは手のひらに乗る程度の正方形の紙。
帰還用の転移用紙だ。
「俺が時間を稼ぐから隙を見て逃げたら、それ使って帰れ」
その言葉にカレンは驚いた。
先ほどまで自分を戦わせようとしていたのに、これは一体どういうことなのか。
「アンタ……なんで……」
「なんで? そりゃお前が戦闘できないんじゃ、俺が囮になるしかないだろ」
平然と口にする英人。
「そ、そうじゃなくて、なんでアタシを助けるようなマネするのよ。アタシを戦わせるようにするんじゃなかったの?」
「そうできればよかったんだが、もう時間切れなんだよ。防御壁がもう壊れる。
それなら一人でも助かる方法を選ぶしかないだろうが」
それを英人は当然のように言葉に出したのち、再び防御壁にヒビが入る音が聞こえた。
先ほどとは別の箇所だ。
「じゃあ俺はあいつらを殺してくるからよ。お前は学校に帰るんだぞ。じゃあな」
カレンに告げると、英人は防御壁を抜け魔獣たちへと走っていった。
「……なんなのよ、アイツ」
そんな彼の行動に悔しさを滲ませたカレンを置いていったまま。