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勇者学校の狂剣士  作者: ヒロ
第二章
11/31

『9』

 剣士科の学科長室にて、麗がある人物と通話をしていた。


『おう、麗か。久しぶりだな』

「そうでもないだろ。先日、お前が自分の娘をこちらに送ると言ってきたときにもこうして話しただろ。アベル」


 麗がそう言うと、通話の相手――アベル・ベルージは大きく笑った。


『たしかにそうだったな。それで我が娘であるカレンは元気にしているか?』

「あぁ。丁度、昨日私の弟子と模擬戦を行って負けたところだ」


 麗の言葉を耳に入れると、一瞬の間が生まれた。

 思わぬ報告にアベルが驚いてしまったのだろう。


『おいおい、それは本当か。うちのカレンは結構強いはずなんだがな』

「事実だぞ。なんせ私の弟子だ。誰にも負けるはずがない」


 麗が平然と言い放つと、アベルは再びゲラゲラと笑った。


『そうかい。まあお前の弟子じゃ、負けでもしょうがないのかもな。なんせお前はあの魔王をたった一人で倒しちまったんだからよ』


 アベルは麗が魔王を討伐したことを知る数少ない人物の一人だ。

 麗が魔王を倒した際、彼は偶然彼女と同じ部隊にいたため、その真実を知ることができたのだ。


『まあ今となっちゃ、お前の功績は全て伝説扱いされているがな』

「仕方がないことだろう。英国は私を認めなかったし、それに魔王を倒したところで、そいつの子供が再び魔王に君臨してしまったのだから」


 英国はたった一人で魔王を討伐した麗を認めようとしなかった。

 それは帰還した際にあまりにも無残な姿だったからであり、そんな狂気的な彼女の雰囲気が若者の勇者に伝染してしまうことを恐れたためだ。

 それに加え、麗が殺した魔王には息子がいて、今は彼が倒された魔王の代わりとなっている。

 よって、世界に君臨している魔王の数は今も昔も七体と変わっていない。


 故に、麗が魔王を討伐したことは今となってはもはや伝説と化していた。


『本当は国家殊勲賞モノなのによ。うちの国がゴミクズですまなかったな』

「おい、自国のことをそう悪く言うんじゃないぞ。貴様は何のために勇者になったのだ」


 麗の説教に、アベルは『はいよ』と軽く受け流す。


『でよ、話が変わるんだが、カレンの面倒はお前が見てくれているのか?』

「というと?」

『この前も話しただろ。あいつは十分に強いし、おそらくある程度の魔獣とも渡り合える。だが、致命的な欠陥があるんだよ』

「欠陥、ねぇ」


 勇者学校の入学式から数日前、麗はアベルから一本の電話を受け取った。

 その内容は娘であるカレン・ベルージのとある病気を治して欲しいとのことだった。

 アベル曰く、カレンは剣術も異能も戦闘能力も全てにおいてハイレベルらしい。

 しかし、幼い頃のある出来事で大きな欠点が彼女の中には存在していた。


「対魔獣恐怖症、だったか」


 対魔獣恐怖症。

 魔獣と対峙すると極度のストレス状態になり、身体が硬直してしまい動けなくなってしまう病気。

 他人(ひと)によって症状にバラつきがある。


『あぁ。以前も言ったが、カレンは幼少の頃に母親であるマリーが魔獣たちに食われていくところ見ちまってるからな。それがトラウマになっているんだ。

 今は魔獣に会うたびに症状が出るわけじゃないが、それでもごく稀に身動きが取れなくなっちまうんだよ』

「可能性が少ないとは言えども、突然魔獣と戦えなくなるんじゃ放ってはおけないな」


 戦場は命をやり取りする場所だ。

 たとえ百戦中一戦でも、魔獣に対し身体が動けなくなったら、そいつは間違いなく死ぬ。


『カレンが英国(イギリス)にいたときは、依頼(クエスト)をやっているところを俺がこっそり覗いていたから良かったんだけどよ』

「ほう。娘の依頼(クエスト)の覗き。随分と英国の勇者は暇なんだな」

『う、うるせぇ。アメリカに救援行った後だったから、少しだけ時間が空いたりしていたんだよ。断じて仕事はサボっていない』


 依頼(クエスト)は十五歳――中学の最高学年から受けることができる。

 カレンが父であるアベルと依頼(クエスト)をこなしていても全くおかしくはない。


『それに英国の戦況は、数年前からこっちが圧倒的に優勢なんだよ。だから他の国にも救援することができんだろ?』

「そうだったな。そういや日本(こっち)も何人か英国に救援してもらっているんだったな」


 日本は非常に勇者のレベルが低い。

 故に、トップクラスの勇者が集う英国には何度も助けられている。


『まあそんなことはどうでもいい。カレンの病状はもう改善されたのか?』

「そんなすぐに変わるわけがないだろう。しかし、糸口は既に見つけている」

『本当か?』


 それに麗は「あぁ」と答える。

 その後、話を続けた。


「貴様の娘と似たような境遇の奴がいてな。今回はそいつに任せることにする」

『なんだよ。麗が面倒を見てくれるわけじゃないのか』

「私だって多忙なのだ。これでも勇者学校の教師であり学科長だしな」


 今後の授業方針、生徒の指導、優秀な勇者候補の発掘。


『そうなのか?』

「そうだと言っているだろう。しつこいやつだな」


 麗のお叱りを受けると、アベルはビビって『す、すまねぇ』と即座に謝った。


『ま、まあなんとかしてくれるならありがてぇよ。さて、そろそろ仕事行く時間だな』

「そうか。では、また何かあったら電話して来い」


 そう告げると、麗は通話を切った。

 麗が魔王を討伐した際、英国は彼女を認めなかった。

 だが、それに最も反論したのが当時は勇者の群衆の一人であり、現英国最強の勇者アベル・ベルージだ。


「まあ借りは借りだ。ここで返しておくのが無難だろう」


 それに対魔獣恐怖症など、そこまで深刻な問題ではない。

 用は心の病気なのだから。

 彼女――カレン・ベルージに類似した人間の姿を見せれば容易に完治するだろう。

 まあもし治らなければ、その時は死ぬだけだが。


「だが、おかしな話だな」


 カレン・ベルージは母親が魔獣に殺されたことがショックで対魔獣恐怖症になってしまった。


 一方、麗が知る彼は両親を殺された直後、すぐに自らの手で復讐を果たした。

 両親を殺した魔獣を一匹残らず駆除したのだ。


「英人、私はやはり貴様のことが心配だよ」


 麗は英人と師弟関係になった時から、ほとんど毎日を共に過ごしきた。

 彼を勇者とさせるための訓練を行ったり、他愛もない話をしたり、時には気分転換にどこかへ出かけたり。

 そんな日々が続く中、いつからか麗は彼を自身の子供のように思うようになってきた。


 麗は不安なのだ。


 我が子が自分と同じように間違った道を選んでしまうのではないのかと。


「類似した人間……彼女が良い影響を与えてくれれば良いのだが」


 アベルの頼みを受け入れたのは、何も借りを返すためだけではない。

 自らの弟子の歪んだ思考を正すためでもあるのだ。

 まあ上手くいくとは限らないが。


「それでも私は英人のためなら何でも手を尽くそう」


 なにせ私は貴様を愛しているからな。





 東京第二エリアに位置する勇者学校に新入生が入学をして数日が過ぎた。

 既に彼らは授業にも慣れ、ぽつぽつと委員会に入ったり、簡単な依頼(クエスト)を受けたりする生徒も現れていた。


 そして、英人のその中の一人であった。


「さて、どれにするか」


 校舎の一階に設置されている掲示板を眺めながら一人考える。


「なるべく難しいそうなのがいいか。それとポイントが稼げるモノ」


 英人の師匠――麗の推薦により勇者学校に入学を果たした彼だが、残念なことに彼はランクポイントをあまり所持していない。


 先日、カレンとの模擬戦に勝利したため、そこそこのポイントは得られたが、それでも強さを示す記章の色は赤。

 推薦入学者としては全く満足のいく成績ではない。


「学年一位を破ったんだから一気に黒にしてくれてもいいと思うんだがな」


 記章の色――『カラー』が階級の高い色に変わることによって、様々な良いことがある。

 まず、寮内の食堂の品を半額で食べられたり、座学のテストが一部免除になったり等々。


「ペーパーテストはあまり受けたくないしな。さっさと黒にしてしまおう」

「なにそれ。舐めてるのかしら?」


 不意に後方から聞き覚えのある声が耳に届いた。

 振り向くと、つい先日倒したばかりのカレンが腕を組み堂々と佇んでいた。


「……なんだよ」

「そんな面倒くさそうな顔しないでくれるかしら。剣士科の学科長から聞いてるでしょ」


 剣士科の学科長――麗のことだ。

 確かに、英人は麗からあることを頼まれていた。

 それは模擬戦をしたばかりのカレンと共に依頼(クエスト)を受けて欲しいと。

 正直断りたかったが、もし拒否したら推薦を取り消し、学校を退学させると言われたので受けざるを得なかった。


「あぁ。お前ごときと依頼(クエスト)を受けろと言われている」

「アンタ、今すぐ殺してやりましょうか」


 ボキボキと拳を鳴らすカレン。

 それを見て不意に英人は彼女の手を握った。


「っ! な、なにするのよっ!」

「剣士が手を粗末にするんじゃねぇよ」


 一瞬、顔を真っ赤にして声を上げたカレンだが、手を鳴らしていたことを指摘されると何も言い返せなくなった。


「まあこれ、師匠の教えなんだがな」

「そういえば聞いたわよ。剣士科の学科長とアンタって師弟関係らしいわね」

「なんだ。知っていたのか」

「えぇ、あんたの師匠から聞いたわ」

「師匠……」


 英人は呆れるように嘆息をつくと、再び掲示板に視線を戻す。

 掲示板に貼られている依頼(クエスト)は数多くあり、難易度も様々だ。

 それゆえ、依頼(クエスト)の内容が書かれている紙の角には色の付いたシールが貼られている。

 その色の種類は記章の色『カラー』と全く同じであり、それが依頼(クエスト)の難易度を示している。

 例えば、依頼(クエスト)に貼られているシールの色が緑ならば、『カラー』が(グリーン)の生徒に適した依頼となる。


「要するに、俺はこれを選べばいいと」


 そう言って、英人が手に取った依頼(クエスト)の難易度は黒。


「ちょっと待ちなさいよ。なに(レッド)ごときが黒の依頼(クエスト)をやろうとしてんのよ」

「は? 俺はつい先日『カラー』が(ブラック)のお前を負かしたじゃないか。つまり、黒の依頼(クエスト)を受けてもなんら問題はない」

「何言ってんのよ。この前は少しアタシが油断しただけよ。今度は絶対アンタに吠え面をかかせてやるわ」


 なんて強気に振る舞うカレンだが、前回の戦いで直接対峙しても自信が英人には敵わないことは重々承知していた。

 だからこそ、英人と共に依頼(クエスト)を受け、彼と魔獣討伐数で勝負しようとしているのだ。

 まあ敵である英人は全く知りもしないことだが。


「まあいいわ。アタシも一緒に受けるから黒でも構わないわ」

「なんで上から目線なんだよ。それにお前の許可なんか元々いらねぇだろ」


 そう言ったのち、英人は依頼書を手に持って受付まで移動した。


 勇者学校では、生徒が依頼(クエスト)を受諾する際、必ず受付で学校側の承認を意味するハンコを押して貰わなければならない。


 そうでないと、いざ依頼(クエスト)を行っている最中に、現場で何かあっても対処することができないからだ。


 故に、学校側はどの生徒がどんな依頼(クエスト)を受けたのか、全て把握しておく必要がある。そのための受付であり、ハンコだ。


「歴然 英人様、カレン・ベルージ様ですね。依頼(クエスト)内容ご確認させていただきました」


 受付の女性のそう言われると、英人は彼女から印鑑済みの依頼書を受け取った。


 これで英人たちは依頼(クエスト)を正式に受注したことになったのだ。


「さて、俺はそろそろ部屋に帰るかな」

「なによ、アンタもう帰るの?」


 寮へと帰宅しようとする英人の腕を、カレンは掴んで引き止める。


「なんだよ、別にいいだろ。依頼(クエスト)は休日にやればいいんだし、今日は特にやることがないんだよ」

「まあそうね。今回の依頼(クエスト)は半日はかかりそうだしね。

 でも、学生たるものすぐに帰って部屋でゴロゴロするっていうのはどうなのよ」

「誰もそんなこと言ってないだろ」


 それに自室でゆっくり休みたくてもできないんだよ。

 なぜなら俺の部屋には依頼(クエスト)メンバーに過度に誘われて引きこもった留年生がいるんだからな。


「そこで、今からアンタはアタシと打ち合いをしなさい」

「却下」

「な、なんでよ!?」


 驚くカレンに英人は呆れるように溜息をついた。


「するわけないだろ。授業でもあるまいし」

「でも、本気で勇者を目指す者は皆が日々鍛錬を積むものよ」

「そうだな。じゃあ俺は一人で鍛錬をとやらに励むことにするよ。だからお前も一人で頑張れ。じゃあな」


 英人はそう告げると、寮へと足を進める

 すると、不意に彼の背後から剣が振り下ろされた。

 それを英人は鞘から自身の剣を抜いて難なく受け止める。


「さすがね。アタシをまぐれで倒したことはあるわ」

「お前はアホか。ここは校内なんだぞ」


 カレンの斬撃を受け止めながら、英人は周りを見渡す。

 数人の生徒がこちらを眺めていた。

 その中にはヒソヒソと話している人たちもいる。


(くそっ。なんで俺がこんな恥ずかしい目に遭わなくちゃならないんだ)


 そう思いながら、英人は空いていた手を額に当てた。


「なによ、その顔は。まるでアタシだけが熱くなってるみたいじゃない」

「実際そうなってんだよ。ってかお前、校舎内で無許可に武器を振り回すとどうなるか知ってるのか?」


 英人の問いに首を傾げるカレン。

 どうやら彼女は知らなかったようだ。

 彼女の反応見たのち、英人は大きく嘆息をついた。


「ちょっと、あなたたち。こんなところで一体何をしているんですか」


 唐突にカレンの後方から声を上げたのは彼女たちの担任でもある桜花 藍。

 藍は対峙している二人を見るなり、すぐに近づいてきた。


(あーあ、来ちまった)


 そう思った英人は、カレンと距離を取りすぐに剣を鞘に納めると、逃亡を試みる。

 しかし、そんな彼を藍は自身の異能――『念力(サイコキネシス)』で宙に浮かせると、そのまま元いた場所へと戻した。


「英人くん、こんなところで一体何をしているのかな?」


 今度は少し砕けた口調で質す藍。

 それに英人は諦めるように溜息を吐いたのち、答えた。


「藍さん、聞いてください。これは俺が悪いんじゃないんですよ。全てこいつのせいです」


 英人が指をさした先は、当然カレンだ。


「なによそれ。まるで全部アタシのせいみたいじゃない」

「だから実際そうなんだよ」


 そもそも攻撃を仕掛けてきたのは、こいつの方からなんだから俺は一切悪くない。正当防衛だ。


「そんなことはどうだっていいのです。英人くん、カレンさん。校舎内での武器の使用は禁じられていることはご存知ですよね?」


 藍の問いに、英人は「はい」と頷き、カレンは「たった今聞いたわ」と答えた。


「いいですか。あなた方はとても優秀な生徒たちです。ですが、だからといって校則を守らなくて理由にはなりません。

 よって、今回の校則違反により、あなたたち二人には今日の下校時間までに反省文を書いてもらいます」

「ちょっと待ってください!」


 藍からの宣告に、英人が待ったをかけた。


「なんですか?」

「いや、さっきも言いましたけど、俺は被害者ですよ。それなのに俺にも罰って、おかしくないですか?」

「どこがです? あなたも武器を使用したことは事実でしょう。それにもし罰が嫌だったら、彼女の攻撃を避ければ良かったではないですか」

「ぬっ……そ、それは……」


 たしかに、カレンの斬撃を避けよう思ったらできたのかもしれない。

 しかし、俺にとっては剣で受け止める方が、確実にカレンの攻撃を防げると感じたのだ。

 師匠からもどんな状況でも常に最善の選択をせよ、との教えを受けているし。


「ということで、あなたたちにはきっちりと反省文を書いてもらいます」


 藍の言葉に、英人は頭を抱える。

 その一方、カレンの方は「なーんだ、そんなこと」と一人呟いていた。


「では、四百字詰めの原稿用紙を十枚書いて、私の元へ来てください。私は職員室にいますので」


 そう言い残すと、藍は資料を片手にこの場から去った。


「英人、アンタなんでそんなにビビってるのよ。たかが反省文でしょ」


 カレンは不思議そうな表情を浮かべて、訊ねた。


「お前な、藍さんを知らないからそんなこと言えるんだぞ」

「藍さん? そういえば、アンタたちなんか知り合いっぽかったわね」


 カレンの言ったことは当たっている。

 俺と藍は知り合い、というよりは家族と言っても過言ではない。

 なんせ桜花 藍は俺の師匠――桜花 麗の妹なのだ。

 藍には剣士である師匠には教えられない戦い方をよく学んでいた。

 特に魔術師と部隊を組んだ際の戦闘中の動きなど。


 しかし、カレンは俺と師匠が師弟関係であることを知らない。

 これはどう説明するべきか。


「言っておくけど、アンタと剣士科の学科長が師弟関係ってことは、アタシ知ってるわよ。アンタの師匠とやらから直接聞いたからね」

「そうなのか? つーか、なんでいきなりそんなこと言ってくるんだよ」

「だって、アンタの師匠とさっきの先生、よくよく考えたら名字が一緒だから、なんか関係があるんじゃないの?」


 大当たりだ。

 さすが優等生。察しが良くて助かる。

 アホではあるが。


「そうだよ。藍さんは師匠の妹だ。だから、俺と彼女は顔馴染みなんだよ」

「ふーん。そうだったの。それで、英人の師匠の妹は一体どんな人なのかしら?」

「滅茶苦茶厳しい」


 英人が答えると、暫く沈黙が起きた。

 おそらくカレンが続きの言葉を待っていたのだろう。

 だが、それ以降英人は何も口にしなかった。


「えっ、もしかしてそれだけ?」

「そうだよ。だが、これだけがどれだけ恐ろしいことかお前は分かっていない」

「ビビりすぎよ。マグレでもアタシを敗北させたんだから、反省文くらいでビビらないでよ」

「恐いもんは恐いんだよ。あと、俺は実力でお前に勝ったんだ」


 余計な論争が始まりそうになったところで、英人はこれ以上やり取りが長引くことを防ぐべく、カレンに背を向けた。


「俺は自分の部屋で反省文書いてくるからよ。じゃあな」

「あっ、ちょっと待ちなさいよ」


 カレンの制止の言葉も聞かず、英人は寮へと歩き出してしまった。


「まったくもう」


 一人残ったカレンは、まだ視界に映っている英人の背中を軽く睨む。

 その後、反省文を書く用紙を買うために校内に設けられている売店へと向かったのだった。

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