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3話
冬四郎の優しげな言い方に、むつは口元が緩むのを分かっていたが、誰にも見られていないからと気にせずに、1人でにやにやしていた。
「うん…うん‼ありがと、頑張るよっ。うん、電話して良かったぁ何か声聞けたら、何でも大丈夫な気がしてきたもん」
『…そうか?けど、元気って余計に寝れなくなるんじゃないのか?』
「あ…かもしれない」
くすくすと笑う声が、耳のすぐ近くで聞こえるからか、何だかくすぐったい気がした。
「やっぱ、しろーちゃんが1番好きだ」
『誰と比べてんだ?』
「菜々とかこさめとか颯介さんとか祐斗とか?」
『お前は好きな人がいっぱい居るな』
「うん、みんな好きよ」
むつは欠伸をしながら、枕を抱き締めて横になった。冬四郎とは、あまり電話をする事がないが、寝れない時に声を聞くとこんなにも眠くなる効果があるのかと、むつは良い事を知ったと思っていた。




