3話
『どうした?メールじゃなくて電話なんて珍しいな…いつもなら、こんな時間に電話してくる事もないのに』
電話越し聞こえてくる冬四郎のいつもと変わらない穏やかな声に、むつはほっとしていた。
「うん…何もないけど」
『けど?…もしかしてホームシックか?』
「かもしれない…帰りたい」
くすくすと笑う声と、少しざわついた周りの音に、むつは冬四郎が外に居るんだなと思った。
「あ、ごめんね。出先だった?」
『気にしなくて良いぞ。山上さんと西原君と呑んでるだけだから…むつは?何してるんだ?』
今、何をしてるか聞かれたむつは、ぱっと起き上がった。そんな事を聞かれる事は今までに無かったせいか、少しドキッとした。
「さっきまで寝てたけど、先輩からの電話で起きて寝付けなくなっちゃって…しろーちゃんからのメール見たら、何かね」
『何か?俺、変な事でも書いてたか?』
「ううん。そうじゃなくて何かね」
『元気ないな。学園生活はそんなに合わないのか?まぁ合わないだろうけど』
「合わない…入らなくて正解だったって思うもん。もぅ帰りたい、お迎えに来て」
『迎えに行くよ。けど、まだダメだろ?菜々ちゃんの相談受けてるんだしな』
むつは枕をぎゅっと抱き締めて、顔を押し付けながらくぐもった声でうんと言った。
『家出を繰り返してたやつがホームシックか…むつ、いつでも電話しておいで。仕事で出れない時もあるけど、夜なら電話とか大丈夫なんだろ?掛け直すから、な?』




