3話
「就寝カードかけときなよ」
菜々に言われ、むつはまだ寝ないけどと言いながらもドアを開けるとドアノブにカードを下げた。
「何あれ?文化なの?呼び方に許可を貰いに来るっていう」
むつは冷めた紅茶を飲み、カーディガンをどかすと再びスナック菓子をつまみ始めた。
「文化よ、だいーじな文化なのよ」
「どんな文化なの?てか、妹って何?妹になんかなれるわけなくない?」
紅茶を入れ直しながら、むつが当たり前の事を言うと、菜々はくすくすと笑った。
「あの子の言ってた妹って言うのは…取り巻きみたいな物よ。そう、んー?使いっぱしりとかお世話する人みたいな感じよね」
「何それ?」
「だからさ、憧れの人の側でその人の為に何かをするっていうのが…美徳?って言うか…そんな感じなのよ」
ティーパックを上下に揺らして、濃いめに入れるとむつはよく分からないといった顔をした。そして、ふぅふぅしながら紅茶飲んだ。
「ふーん?よく分からない文化だね…ってか、あたしのさっきの答えは断った感じになったって事よね?」
「そうね。断ったって事よ。あんたもそのうちに名前がつけられて、妹志願者が増えてきそうね」
「名前をつけられる?名前?名前って何?名前はみんなにもあるけど」




