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3話
「あの、わたしを妹にして頂けませんか‼おっ、お…むつお姉様とお呼びさせてください」
「………えっ、と?」
むつは女子生徒が勇気を振り絞って言ってくれた意味が分からなく、悩んだ。菜々に聞こうかと、ちらっと部屋に目を向けると菜々は、首を横に振っている。聞くな、なのか断れなのか分からなかった。
「そう…?えーっとそうね…何で?普通に呼んでくれたら良いよ?お姉様とかじゃなくて」
呼び方にこだわりでもあるのかと、むつは不思議に思いそう言うと、女子生徒は少し悲しそうな顔をした。
「そうですか…あの、でしたら…あの、おくつろぎの所をお邪魔しました。ごめんなさいっ」
泣きそうな顔をして、頭を下げるとパタパタと去っていく女子生徒をむつは不思議な物をみるように見送った。廊下の端の階段を降りる際に、振り返った女子生徒は、むつが見送ってるのに気付くとはっとした様子で慌てて走っていってしまった。
何がなんなのかよく分からないまま、むつはドアを閉めた。




