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3話
疲れた様子のむつが菜々と紅茶を飲みながら、のんびりと菓子をつまんでいると遠慮がちにノックされた。菓子を口に入れていたむつは、固まったまま菜々を見ている。菜々も同じように、動けないで居る。だが、むつがぽりぽりと菓子を噛んでいるのに気付くとすぐに、立ち上がった。
「バレたらヤバい」
菜々はカップを勉強机に置くと、椅子にかけてあったカーディガンを取るとベッドの上の菓子を隠した。
またノックの音がした。今度は、先程よりもしっかりと音が聞こえた。
「出るべき?」
「そうね…誰か分からないけど。友達?」
「友達なんか出来ないってば」
むつと菜々が小声で話していると、再びノックの音が聞こえていた。むつはカップを置いて、指をぺろっと舐めると面倒くさそうにドアに向かった。




