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11話
「宮前さん?むつ?」
少年と男が見えなくなっても、立ち上がらず動こうとしないむつと冬四朗を西原は、心配そうに見ていた。
「大丈夫だ。むつ、立てるか?」
冬四朗はガードレールに手をつき、むつを立たせながら一緒に立ち上がった。むつは返事をせずに、少年と男が曲がっていった角を見ている。無表情のまま、一点を見つめ続け今にも飛び出していきそうな、むつの手を冬四朗が取った。だが、むつはその手を乱暴に振りほどいた。
「…ごめん、もう追わないから。本当に」
「なら良い。大丈夫か?腕、かなり強く引っ張ったし…お前、肋骨が」
ひびが入ってたんじゃないかと冬四朗が続ける前に、むつがどんっとぶつかってきた。




