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11話
駐車場を出て、むつは走っていく。人通りの少ない道だから、見失う事はないが踵の高い靴を履いているとは思えないくらい早い。普段から身体を動かしているはずの冬四朗と西原でさえ、すぐに追い付けそうにはない。
「あっ‼」
声を上げたむつは、急に止まると道路の向こう側を見ている。そして、そちらを見ながら後戻りするようにまた走り出した。むつの視界には、冬四朗も西原も入っていない。ただ、見ているのは一点のみだ。それに気付いた冬四朗は、立ち止まりむつの視線を追った。
「あ…あいつら…」
むつが何を追っているのか分かった冬四朗は、目を見張った。顔は見た事ないが、以前に冬四朗も関わった事のある少年と男の組み合わせ。むつはその2人を追っているのだ。




