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11話
ようやく目を覚ましたむつは、がちゃがちゃと玄関の方から鍵穴をいじるような音に続いて、ドアが開く音に飛び起きた。だが、誰が来たのか分からずにベッドの上で動けずに居た。みしっとフローリングの軋む音がして、ゆっくり寝室のドアが開いた。むつは咄嗟に身構えたが、のっそりと顔を出したのが冬四朗だと分かると、ほっと息をついた。
「何だ?どうした?」
「ううん…誰かと思ってちょっと…」
「あぁ、悪い怖かったか?一応メールはしたんだけどな。返事ないから寝てるんだろうなと思って、静かに入ってきたつもりだったけど」
素直に怖かったとは言えなかったむつは、唇を尖らせただけだった。
「よ、むつ。起きたか?」
冬四朗の後ろから疲れきった顔の西原も顔を見せると、むつは少し嬉しそうな笑みを浮かべた。
「おはよ…先輩何してんの?仕事、やること沢山あるんじゃないの?」
「ん、まぁ大丈夫。それより、ほら…」
部屋に入ってきた西原は、がさっとコンビニの袋を見せるとむつに渡した。




