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11話
冬四朗に自宅まで送って貰い、荷物のように部屋に運びこまれたむつは、血や砂で汚れた制服のままベッドに放りこまれた。
「うっ…何から何まですまんねぇ」
目を開ける気力もないのか、むつは寝言のようにもごもごと言った。むつの様子から、かなり大変な仕事だったという事だけが分かった冬四朗は、苦笑いを浮かべ布団をかけてやった。
「終わったらまた来るから、それまで寝とけ。荷物はソファーの上だからな、携帯は枕元。良いな?」
「へい…あ、鍵だけちゃんと…」
最後まで言わずに、むつは寝息を立て始めた。
「………」
冬四朗は、溜め息をつくようにして笑いむつのつるっとした額をそっと撫でた。そして、ちゃんと鍵をかけると出ていった。
 




