686/718
11話
携帯灰皿に吸い殻を落としたむつは、携帯を確認した。迎えを頼んである、冬四朗から電話がかかってきていた。
「はーいー?」
『…疲れてるなぁ。近くまで来たけど警察も多いし、学園の前までは行けそうにないな』
「んーやっぱ?ま、仕方ないか」
『どうする?』
「テキトーに歩いてくからその辺に居て。また電話するから」
『は?歩くっておま』
冬四朗の言葉を聞かずに、むつは通話終了のボタンを押した。そんな一方的なむつを、菜々が見てくすくすと笑っていた。
「い、よっこらせぇ」
掛け声と共にむつらのっそりと立ち上がると、荷物を詰め込んだバッグを持った。服ばかりのバッグは、それでもずっしりと重たい。




