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10話
むつはひょいっと黒い霧を避け、西原たちの方に向かって歩いていた。まだ全てが片付いてはいないからか、男がむつが歩くのに邪魔にならないように黒い霧を斬り伏せていく。目の前をきらっと光る刀身が、通ったとしてもむつは平気な顔をして、足取りも変わる事がない。だが、内心はこんな顔ぎりぎりの所で刃を振らなくてもと、ひやひやしていた。
「むつ…」
「ただいま。片付けはするってさ…あたしらはここから出ようか。玲子たちを病院に」
まだ、ぼんやりと座り込んでいる玲子の脇の下に腕を通すように入れ、立たせた。そしてむつは、遠慮なしに玲子の腹を殴った。
「ちょっ…‼」
驚いたのか、菜々が駆け寄ってこようとしたがむつは手のひらを見せて、とどまらせた。
「大丈夫だから」
ぐったりとして倒れかけた玲子の腕を取り、腰に手を回して引きずるようにしてむつは歩き出した。




