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10話
「また遊んでくれますか?」
むつが西原たちの所に、戻ろうとしているのだと気付いた少年は、上目遣いにむつを見た。大きな目にふっくらとした頬は、天使を思わせるような可愛らしさがあった。
「やーよ。懲り懲りだわ」
即答したむつは、歩き出そうとして足を止めて、少年の方を向いた。
「扉、開けてくれる?ついでに玲子たちも元に戻してくれたかしら?」
「ちゃんと片付けますから、今日は」
「今日、は…ね」
呆れたようにむつが、言うと少年はくすくすと笑った。そんな少年のあどけない笑顔を見て、むつは溜め息をついた。まだ何かを言いかけて、むつは口を開いたが何も言わなかった。
「また、ね」
ひらひらと手を振ると、むつはまだ黒い霧がうねうねとしている方に向かって歩き出した。




