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10話
むつは、つまらなさそうに言うと少年が座っているベンチの背もたれに、尻を乗せるようにして座った。ここから、ゆっくりと男があれをどう片付けるのかを、眺めていようと決めたのだ。
男は向かってくる黒い霧を器用に避けつつ、歩いていくと行くと不意に足を止めた。ちょうど、むつと少年が居る場所と西原たちが居る場所の中間あたりだ。
膝を柔らかく曲げ、男は素早く刀を抜いた。抜く動きも早く、刀身が見えない程だった。
前後左右から、黒い霧が迫ってきても男には慌てる様子もなく確実に仕留めていっている。
「彼は…何?君もだけど」
「さぁ?何でしょうね…」
男の軽い身のこなしを見ながら、むつが何気なく独り言のように言うと、少年は少しだけ寂しげに言った。教える気がないのか、本人にも分からないのか、判断しかねるような言い方だった。




