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10話
「外野は黙っててくださいよ。僕がむつさんと遊んでるんですから」
うるさいハエを追い払うようにし、しっしと手を振る少年に対して西原は、ぎりっと歯を噛み締めた。
「ね、むつさん。もう少し遊びましょうよ。そこの…れいこ?はまぁまぁ強いですよ」
ぱちんっと少年が指を鳴らすと、床に座り込んでいた玲子が、ゆらっと立ち上がった。むつは少年の方を気にしつつも、玲子と向き合った。
一緒に学園生活を送り、年下だとしてもむつにとっては1番仲の良い友人である玲子に手をあげる気にはなれない。だからといって、一方的にやられっぱなしで居るわけにもいかない。
ぼんやりとした表情の玲子が、きゅっと床を蹴ってむつに遅いかかってきた。むつは上体を引いて避けたが、目の前をぶんっと空気を切るようにして玲子の拳が横切った。




