631/718
10話
「そうですよね。そのまんまじゃ…少しつまらないかな?なので…こんなのどうですか?」
少年がぱちんっと指を鳴らした。何をするつもりなのかと、むつは警戒した。そんな様子を面白がるように少年はただ、ほんのりと笑みを浮かべているだけだった。
むつはじっと注意深く、辺りの様子をうかがっていたが何かに変化が起きたわけではない。天使たちでさえ、少年が何をしたのか分からないようで、きょろきょろとしていた。しーんとした静かな教会内で、緊張でやけに大きく脈打ってる心臓の音が周りに聞こえるのではないかと、むつは思いそっと胸に手を当てた。
手の下で、どっくんどっくんと心臓が鳴っている。むつはぐっと胸に指を食い込ませるようにした。何が起きるのか分からない不安からか、緊張はなかなかおさまらない。




