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10話
扉の前までダリィに手伝って貰い、玲子を引きずってきた菜々は、扉を開けようと押した。
「え?あれ?」
だが、いくら押しても扉はぴくりともしない。引いてみても同じ事だった。歯をくいしばって、懸命に押してみるが扉は開く気配がしなかった。
「はぁ…ダメだわ開かない」
後からやってきた西原とむつも扉を押してみたが、やはり動かない。木の扉で多少は重厚ではあるが、むつと西原の2人がかりでも動かないとなると、閉じ込められたとしか思えなかった。
「あ、無理だわ」
あっさりとむつは諦めて、扉を背にしてシスターの方を向いた。思い思いの場所で、ゆっくりと休んでいた天使たちがシスターを慰めるかのように周りに集まっていた。
「むつ、これ」
天使たちがこちらに向かってくる可能性もあるからか、西原はベルトに差していた日本刀をむつに返した。
「ありがと」
 




