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10話
「玲子っ‼起きろ‼おいっ‼」
がくがくと首が揺れ、玲子は苦しげな表情をした。だが、目を開ける事はなかった。
「むつ」
西原よりも先に菜々が駆け寄ってきた。魔方陣を物ともしないのか、ずかずかとヒールで踏み潰している。チョークのような物で描かれていたのか、菜々に踏まれて無惨にも魔方陣は擦れ消えかかっていた。むつはそんな菜々の勇ましさを見て、すくっと笑った。
「玲子をどっか安全な所に」
「ここは安全じゃないって事?でも何も起きないって、あんた言ったじゃない」
「何も起きないけど…分かんない」
むつがそう言うと菜々は、こくりと頷いた。そして、ずるずると玲子を引きずって魔方陣の外に出した。




