606/718
10話
「お前のそばじゃダメか?」
「…ダメとかじゃなくてさ。心配なら、菜々の所に行けば良いでしょ?あたしは大丈夫ですんで」
むつが、しっしと手で払う仕草を見せると西原は真面目な顔をしているが、調子づいたようにぐいっとむつの顔に自身の顔を近付けた。
「近い、ウザい、あっち行け」
「あっち行ったら寂しいくせに」
西原に言われ、むつは微妙な顔をした。笑っているような困っているような顔だった。
「寂しくないわよ」
不貞腐れたようにむつがぼそっと言うと、西原は微笑みを浮かべた。むつも我ながら、強がりな子供みたいな言い方だと思い溜め息をついた。
「なら、あたしが菜々の所に…」
言って立ち上がったむつは、動きを止めた。
儀式の準備をしているはずのシスターが、1人でこちらにやってくるのが見えたのだ。
 




