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9話
ふうっと息を吐いたむつは少女の手首をしっかりと掴んでいたし、いつの間に貼ったのか少女の首に巻き付けるようにして札が見えた。
あっさりと少女を捕まえたむつは、ほっとしたような顔つきをしていた。そして、五月蝿そうに天使を追い払いながら西原の所に戻ってきた。
「やけに…簡単に捕まえたな」
「まぁね」
むつはただ、にやっと笑っただけだった。
「お前が怖かったんだろうな。考えなしに余裕こいて突っ込んでくるようで」
「それはあるかもね」
少女がむつに捕らえられたせいか、天使たちもむきになって襲ってこようとはせずに、少し距離を取ってぱたぱたと羽根を動かしながら見ているのみとなった。
「なかなか、あたしの案は良さげね」
むつは焼けただれて動かなくなり、地面に転がっている天使を見下ろして呟いた。




