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9話
「な、に…?」
むつが薄暗い中で、じっと見ていると玲子を引きずって移動したそれは、のっそりとむつの方を向いた。
シーツのような大きな布を身体に巻き付けた、女だった。髪は艶がなく乾燥しているのか、ばさばさで同じく水気のない茶色っぽくなり筋の浮いた手が見える。
「シスターだ」
ばたんっと戸を閉めた西原は意外と冷静に、転がった蝋燭を拾い上げてむつの隣に並んだ。
「やっぱり居たんだ…玲子をどうする気?」
血の気も水気もなく、落ち窪んだ両目が飛び出しているようにも見える。ぎょろぎょろと動く黒目は、動かすとぽろっと落ちてしまいそうな気さえした。
シスターはむつも西原の事も視界には入っていないのか、玲子にだけ視線を向けている。




