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2話
叫ぶような大声にむつは、携帯を耳から離した。少し耳が痛かった。きゃんきゃんと電話越しに菜々が喚いているのが、聞こえてるのか颯介がくすくすと笑っていた。
『ちょーっと‼聞いてる‼』
「はいはい?何でしょう?声デカすぎて、聞いてなかったよ」
『あんたねぇ‼何で電話出なかったよの‼電源も切れてたし、何なの?』
何なのって言われてもと、むつは苦笑いを浮かべた。だが、いくら幼馴染みでもむつは西原との事は言わなかった。
「ちょっと忙しくてね。ごめん、ごめん。充電するのも忘れて寝ちゃっててさ…で?電話貰ってたみたいだけど、どうしたの?」
『あら、そうなの?ごめーん。何かあったのかと思っちゃった。でさ、あんた今日の夜とかどう?空いてるなら、ちょっと付き合ってよ。段取りついたからその話もしたいし』
「今夜は大丈夫だよ。何時頃?」




