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9話
くしゃくしゃにされた人形に促され、玲子は迷うように視線をさ迷わせた。だが、むつの方をしっかりと見ると頷いた。むつは満足そうに笑みを深めた。
「スパルタ」
「しーっ」
西原がぼそっと呟くと、むつは笑みを浮かべたまま低い声でそう言った。優しげな笑みは、一転ひややかな笑みになっていた。口元は優しげに微笑んでいるが細められた目は、無表情だった。
2人の会話が聞こえていない玲子は、再度深呼吸をして、じっと足元に視線を向けた。肩の上の人形の冷たく、かさかさした手が頬に添えられたままだが、あまり気にもならなかった。
「力を抜いて、気になる所にだけ視線を向けてみな。よーく視なくても、分かるはずだよ」
人形に言われた通りに玲子は、何となく気になった箇所に目を向けてみた。だが、特に何かが視えたわけではなかった。そして、そのまま視線をベッドに向けた。




