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9話
引き寄せた蝋燭から、火をすくいあげるようにして、手のひらに移すとむつはそれを弄ぶように、指先に移したりしていた。そして、何を確認したのか1人頷くとゆっくり立ち上がった。
今、むつの手のひらにある炎は、いつもむつが使っている炎よりも若干、赤みを帯びているようでめらめらと燃えている。だが、むつは熱がる事もない。そして、何を思ったのか少女に向けてボールを投げるように炎を投げつけた。
投げたものの、少女に当たる事はなくぼとっと床に落ちた炎は燃え上がる事もなく、その場でめらめらと炎を揺らしているだけだった。
「…ちっ」
舌打ちしたむつは、蝋燭からまた火をすくいあげると、手のひらで弄び少女に向けて投げた。全然違う所に飛んでいったり、かすりそうになったりと、むつのコントロールはあまり宜しくない。




